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シリーズ「おまえ(ニッポン)はすでに死んでいる」 5 NHK経営委員会はどうして日本郵政にそこまで忖度したのか?!

 かんぽ生命保険の不正販売問題を報じたNHKの「クローズアップ現代+」に対する経営委員会の個別番組への干渉は、明らかに放送法違反だ

 日本人は過去のことについて忘れやすいと言われているが、そのことの典型が「かんぽ生命保険の不正販売問題」だ。私がこのことにこだわっているのは、私の母親が、「保険金を先払いすれば、保険金が安くなりますよ。」というかんぽ生命の職員の口車に乗せられて、私が彼女の生活費として渡していた2000万円を私と私の家族を被保険者として、保険金を先払いしていたことがあるからだ。その契約に際しても、かんぽ生命は被保険者である私や私の家族の立ち会いをしないで済ませてきたことは2018年前後の報道でご存じの方もあるだろう。

 この問題はまだまだ続いているのだということを知って欲しいと思い、今回はこの問題を取り上げた。以下、朝日新聞の記事から引用。

NHKに全面開示求める  
かんぽ巡る議事録 要約認めず  第三者委員会  2021年2月8日 1面

 NHK経営委員会が2018年、当時NHKの会長だった上田良一氏を厳重注意した問題で、NHK自身が設置する第三者機関は前田晃伸会長に対し、議論の経緯が分かる経営委議事録を全面的に開示すべきだと指摘する答申を出した。NHKは現在、当時の議論の要約を公開している。
 上田氏への厳重注意を巡っては、「クローズアップ現代十」が2018年7月、同4月に報じたかんぽ生命保険の不正販売問題の番組の続編に向け情報提供を呼びかける動画をネットで流し、日本郵政グループがNHKに抗議、同局の最高意思決定機関である経営委にもガバナンスの検証を求めた。これを受け経営委は同10月、ガバナンス強化名目で上田氏を厳重注意した。議論の中で森下俊三委員長代行(現委員長)らが番組制作手法などを批判したとされ、放送法が禁じる経営委員の番組への干渉にあたるとの指摘もある。
 放送法は、委員長に経営委の議事録作成と公表を義務づけている。第三者機関が4日付で出した答申によると、厳重注意を巡っては、「各委員が率直な意見を述べ、突っ込んだ検討が行われている」内容の逐語的な議事録が存在。「会長に係るガバナンスの問題について、各委員がどのような意見を持ち、どのような議論が行われ、どのような結論に達しだのかについては、より強く透明性が求められる」とし、開示すべきだと結論づけた。
 また「対象となる機関自らが手を加えることは、対象文書の改ざんというそしりを受けかねない」と指摘。「速やかに開示することがNHKおよび経営委の運営に必要」とした。
 今回答申を出した第三者機関は、開示請求を巡る再検討の求めについて審議し、NHKに意見を述べる組織だ。委員長に藤原静雄・中央大学大学院教授、委員長代行に桜井龍子・元最高裁判事が就いている。NHKの情報公開制度について答申は「受信料徴収が行われ、公共放送を担うNHKの立場を踏まえて構築された独自のもの」としている。
 第三者機関は昨年5月にも議事録の開示が妥当との答申を出した。だが、開示されたのは要約だった。朝日新聞は昨年6月、当時の議論の内容が分かる資料について
情報公開請求したが、開示されたのは要約された文書などだったため、同8月に再検討を求めていた。
 NHK広報局は「(開示するかは)経営委が最終判断を検討する」、森下経営委員長は「9日の経営委で、対応の議論を始めることになるだろう」とそれぞれ取材に答えた。                 (黒田健朗)

2012年7月9日 1面
NHK番組批判 議事録に 

全面開示 経営委、干渉の疑い

 NHK経営委員会は8日、がんば生命保険の不正販売を報じた番組を巡って2018年に当時の会長を経営委員長代行だった森下俊三・現委員長が「極めて稚拙」などと番組や取材手法を批判していた内容が記されている。こうした発言は、番組への干渉を禁じた放送法に抵触する疑いがある。
 この問題は、18年4月に放送された「クローズアップ現代十」を巡り、日本郵政グループがNHKに抗議。経営委は「ガバナンス強化」名目で当時の上田良一会長を厳重注意した。
 開示されたのは、厳重注意があった18年10月23日と、その前後の計3回分。情報公開請求をしていた朝日新聞に示された。
 議事録によると、森下氏は同月9日の会議で「適切な取材のあり方というのは、経営委員会でも意見を言うべきだ」、同23日には上田会長のいる場で「取材はほとんどしていない」などと述べていた。上田氏は、経緯が表に出れば「NHKは存亡の危機に立たされる」と述べていた。
 森下氏は8日、朝日新聞の取材に、番組内容や取材手法に触れたのは「郵政側の(抗議の)手紙に書かれていたことを確認しただけ」と述べたNHK広報局は取材に「厳重注意が、放送の自主・自律や番組編集の自由に影響を与えた事実は無い」としている。            (宮田裕介)

2012年7月9日 3面
トップ2人厳重注意を主導 NHK経営委員会議事録 全面開示

上田会長反発「問題になる」

 NHK経営委員会で、放送法が禁じる番組への干渉が繰り広げられたのか。それを解き明かす議事録が2年半を経て全面開示された。詳細なやりとりから、当時委員長の石原進氏、委員長代行の森下俊三氏(現委員長)のトップ2人が会長への厳重注意を主導したことが明らかになった。
 2018年10月9日の経営委員会。この4日前に、日本郵政グループから経営委に「ガバナンス(組織統治)の検証」を求める書面が届いた。郵政側か反発したのは、かんぽ生命の不正な営業を訴えた報道番組「クローズアップ現代+」だ。森下氏は「(番組を)見てちょっと奇異だなと思った」と述べた。
 石原氏は「郵政には放送に詳しい方がいらっしゃる。(その人から)何言ってるんだよと」と説明した。日本郵政副社長だった鈴木康雄氏は放送行政を所管する総務省の元事務次官。半月前には森下氏に面会していたことが後に国会答弁などで明らかになっている。
 クロ現の制作側は続編を見据えて2本のネット動画を公開。取材結果を一部明かしつつ、情報提供も募る「オープンージャーナリズム」という手法だった。
 森下氏はこれを問題視し「ちゃんと取材になっているのか。適切な取材のあり方というのは、経営委員会でも意見を言うべきだと思う」と言及。さらに、一方的な意見だけが出てくるという番組はいかがなものか」と批判した。
 上田良一会長(当時)への異例の厳重注意は、この2週間後。上田氏も出席した10月23日にあった。
 ここでも、森下氏が「今回の番組の取材も含めて、極めて稚拙。取材はほとんどしてない」と番組批判の口火を切る。他の委員も「誤解を与えるような説明がある」 「一方的になりすぎた気がする」と同調していった。
 上田氏をいったん退室させ、12人の経営委員だけになってから、石原氏は上田氏への注意の文書を読み上げた。その後、再び入室した上田氏に厳重注意した。 
 放送法は、経営委員が個別の番組の編集に干渉してはならないと定める。議事録からは、「ガバナンス」の問題だと強調し、放送法に抵触しないように意識していたことがうかがえる。
 番組の作り方について会長の責任を問う声があがると、石原氏は「法律に触るからこういう言い方になっている。(郵政側は)そこも分かっていて、ガバナンスの問題だと」と説明。ほかからも、「本来の不満は内容にあって、内容については突けないから手続き論の小さな瑕疵(かし)攻めてきてる」などの発言があった。
 一方、番組内容への言及に懸念を示した委員もいた。上田氏も「非常に大きな問題になる」と反発した。
 この2週間後の11月6日、NHKは上田会長名で事実上の謝罪の文書を郵政側に届けた。次11月13日の経営委員会で、石原氏はこう報告していた。「(NHK放送総局長が)文書を持っていって謝った。これでもう相手は納得ということになりました」

「ガバナンス」理由に注意解 解説

 全面開示された記録をひもとくと、当時経営委員長代行だった森下俊三・現委員長の発言は放送法に抵触する疑いがぬぐえない。
 郵政側の抗議を受け、一部の経営委員は番組内容を批判したが、放送法を意識して「ガバナンス問題で会長を注意する」形にこだわったように読める。ところがその議論の中でも、森下氏は番組や取材の内容に踏み込んで厳しく非難した。
 続投の声もあった上田良一会長の退任が19年末に決まった際、任命権を持つ石原進経営委員長(当時)は会長交代の理由にかんぽ問題が「当然含まれる。私は大変な問題だったと思っている」と答えた。経緯に疑問符のつく厳重注意が、会長の人選にも影響したの
だ。結果的にがんば問題では、NHKが指摘した内容はおおむね正しかったことも明らかになっている。
 上田氏に対する厳重注意を主導したのは、国会答弁などで番組介入を否定し続けてきた現委員長の森下氏だ。放送法は、経営委員は国会の同意を得て首相が任命すると定めている。この問題が報じられ、NHKが自ら設けた第三者機関が全面開示を求めても拒み続け
ていた状況下で、2月に森下氏の委員再任を決めた菅義偉首相の判断も問われる。                   (編集委員・後藤洋平)

 明自な放送法違反    立教大・砂川浩慶教授(メディア論)の話
 放送法は、経営委員の個別番組の編集への干渉を禁じている。議事録からは、現在、経営委員長を務める森下俊三氏らが、かんぽの不正販売を報じた番組を巡り、日本郵政グループの主張に沿って番組批判をしたようにみえる。「取材はほとんど
していない」などといった発言は、明白な放送法違反だ。森下氏は「ガバナンス強化」を理由に前会長を厳重注意したと説明しているが、それを認めてしまえば、ガバナンス名目で番組に介入できることになってしまうのもおかしい。

■NHKのかんぽ報道をめぐる主な出来事
 (肩書は当時)
18年4月 「クローズアップ現代十」、がんば問題を報道
   7月 続編放送に向けてSNS動画を投稿
      郵政3社長がNHKの上田良一会長に抗議。
      動画の消去を要求
      取材交渉で番組責任者が「会長は制作に関与しない」と発言
   8月 郵政3社長が2度目の抗議文。動画削除と、番組責任者の発言  が問題だとして説明を要求
   9月 日本郵政の鈴木康雄副社長がNHK経営委の森下俊三委員長代行と面会
  10月 郵政3社長が経営委に「ガバナンスの検証」を申し入れ
      NHK経営委員会が上田会長を厳重注意
11月 NHKが「説明が不十分で誠に遺憾」との文書
20年5月 NHK情報公開・個人情報保護審議委員会が経営委の議事録を       全面開示するよう答申
21年2月 NHK個人情報保護審議委員会が再度、経営委が議事録の全面開示を決定
   7月 経営委員会が議事録の全面開示を決定

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