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共通する哲学を持つ集合の価値 -大吉祥寺.pmに寄せて-

一週間ほど前に大吉祥寺.pmに参加した。

救われた。
コミュニティ活動を続けてよかったと心から思った。

時間が経ち、当日の熱狂から覚めた頭で感じたことを残すことにする。

友愛について

アリストテレスは3つの善が人と人を繋ぐ紐帯となると説いた。善と友愛の形をざっと記載する。

  • 道徳的善 その人柄や人生哲学に惹かれる

  • 快楽的善 楽しい面白い等、快い時間を過ごせる

  • 有用的善 その人の持つ知識技術等、有用性に魅力を感じる

ITコミュニティというものは主に有用的善での繋がりだと考えていたが、そうではなく、哲学つまり生き方そのものへの共感を超えた強い結びつきがある場所かもしれないと思うようになった。

もちろん全ての要素がある。だが、アリストテレスの述べたように道徳によって繋がる友愛こそが最も尊い、この感覚を身をもって経験した。人との出会いこそが生きる醍醐味だと断言してもいいくらい、大吉祥寺.pmでの様々な人との出会いには心が動いた。
たくさんの当日の記録がある。ご興味のある方は熱のこもった文章たちに目を通して欲しい。

偏屈という生きづらさ

つくづく私は面倒な人間だと思う。偏見に満ち、極端なこだわりのせいか許せないものが多い。人嫌いだが寂しがり屋で、破滅願望が強い傍ら美しい生を目指している。

こんな人格なので友達と呼べる人間はおろか、仲良くなりたいと思える人ですら少ない。人ではなくコンピュータと会話する道を選んだのもこの性格のせいだ。

本とギター以外大した趣味もないので、仕事のために、もっと言うとシステムを介して問題解決をするために生きているようなもんだと思う。だから私にとって空いた時間を自己研鑽に使うのは自然なことであり、自身の知識を共有することも同様である。
だがそうではない人も多い。それについては良いも悪いもない。考え方や生き方は自由だ。ただ私はそうでない方々に友愛を感じることができない。だから技術者として働き出してからも孤独を感じることが多々あった。

だがあの日出会った方々は違った。
今日よりも明日を良くするために、いやそんなことも考えていないだろう、純粋に学習に面白さを見出して丸一日を費やすことができる人たちがいた。

懇親会でsongmuさんとこんな話しをした。

プログラマはプラトンのイデア論に憧れる。
アドラー自身も結局弟子に批判されている。
システム作りにおいても感情の影響は大きい。人は感情の生き物だ。

なんのこっちゃと思うだろうが。もうびっくりするくらい感動した。これほどに知的嗜好やものの考え方が似ている人がいるのかと。

彼の話を前夜祭で聞いた時に、なんて頭の良い人だろうと畏怖と尊敬の念を覚えると同時に、私に似た生き辛さを持つ人間なのかもしれないと感じていた。
生きることを捉えるために、ソクラテス、その弟子のプラトン、さらに弟子のアリストテレスの思想を辿った。人の感情についてフロイトに共感し、弟子のアドラーがリビドーを否定していることにも納得をしつつどちらもあり得るだろうなとモヤモヤした。多くを読んだわけではないし理解できたとは言えないが、それらに触れることは私にとっては必然であった。

短い時間の会話だったが、同じような人間に出会えたことに衝撃を受けた。

こういうことなんだ。真の出会いは多様性の中にある。偏見に富んだ言い方をすると、綺麗にターゲットを絞ったスーツを着て参加するようなセミナーだとこんな出会いはなかった気がしている。
小難しいことを書いたが、いやこんなやつ自分以外にいないだろうって人と出会う可能性が高い空間ってのは本当に素晴らしいものだ。

あと、高度に発達したウォーターフォールはアジャイルと見分けがつかないって記事を最近書いたって話を聞いて、あの記事読んでものすごくテンション上がったし速攻チームに共有したけど、お前だったのか…って笑った。

救われる

meiheiさんと初めてお会いした。

3年程前、私が作ったスライドをSNS上で見てフォローしてくれたことがきっかけで縁がはじまった。どこの誰かもわからなかったけど、時々いいねしたりされたりする関係が続いた。

上記スライドは岡山の勉強会で話したもので、当時は論語にのめり込んでおり、0歳児の双子の世話に明け暮れながら布教したい一心で資料を作ったのを覚えている。人との繋がりがエンジニアとして遠くまで連れていってくれるよってメッセージを込めながらも、ITの勉強会で諸子百家の思想の話をしても良いのだろうかって不安だった。

それが遠く離れた彼のもとにインターネットの波に乗って届き、影響を受けて登壇するようになったと懇親会の場で本人の口から聞いた。救われた。
彼も当日の心境をnoteに残してくれている。なんてありがたいんだろう。

そして書ききれないくらいたくさんの人と話した。また、幾らかの人に影響を与え、行動変容のきっかけになれたことを実感した。

とても嬉しかった。アイコンだけは知っているが初めましての人にたくさん挨拶できた。会場にいたけど挨拶できなかった人もたくさんいることは心残りだ。いつか直接話したい。それまで彼[女]らの姿格好はアイコンのままにとどめておこう。

共通する哲学を持つ集合の価値

人は一人では生きていけない。
少なくとも私は一人では生きたくない。だが、誰でもいいわけではない。やはり人生において大切にしているものを互いに理解し合える人と仲良くしたい。

重要なのは哲学だ。思想や趣向はバラバラで良い。きっと、さほど重要ではない。
現に私はナイトパーティには馴染めなかった。あまりにどう振舞えばわからなかったのでことみんさんに「知らない曲ばかりでどうしたらいいのかわからない」と相談したところ「リズムに合わせて適当に手とかこう、なんか動けばいい」とのアドバイスをもらったがまるでわからなかった。私はダンスフロアの王にはなれそうにない。
何が言いたいのかというと思想や趣向は重要ではない。もっと根本の、道徳的善による繋がりこそが大切であり、そこに共感できる集合はとても稀有なものだ。

あの日、武蔵野公会堂には共通の哲学を持つ人々が集まっていた。知ることで自身を高め、活動を通して自身と他者の生活を良くしようと皆が思っていたはずだ。このような場は非常に価値がある。この集合は大きな力を生み出す。きっと誰もが友人になり得るような空間だった。

普段島根の西端にいるため直接エンジニアと交流する機会自体がない。だから気軽に共通の哲学をもつ人間と酒を酌み交わせるような、首都圏に住むエンジニアが心底羨ましい。

大吉祥寺.pmはかなり特異な場であったと思う。

年齢層、スキル、興味の方向性、様々な人がいるにもかかわらず、技術によって世界を良くできることを皆が信じているように感じた。
利他の精神にも溢れていたように思う。自身の持つ知識や技術を見返りなく分け与える様子が至る所で垣間見ることができた。
この共同体で他者に貢献し続けることで、さらに外の世界へと影響を及ぼすことで、きっとたくさんの人が幸せになれる。

この場を作り上げたmagnoliaさんおよびスタッフの皆様に改めて感謝する。

おまけ 登壇について

光栄なことにお話をさせていただいた。

あたたかな雰囲気で皆が聞いてくれたので、緊張することなく、この数年で一番うまく話せたと思う。聞いてくださった皆様、本当にありがとうございます。

専門教育を受けたわけではなくただ趣味で哲学書を読んでいるだけなので、資料作りのほとんどの時間が読書に費やされた。安易に賢人の言葉を引用したことを後悔した。

森見登美彦さんが言ったように、人も本も多くの人や本と繋がっている。

父上が昔、僕に言ったよ。こうして一冊の本を引き上げると、古本市がまるで大きな城のように宙に浮かぶだろうと。本はみんなつながっている

森見登美彦 夜は短し歩けよ乙女

例えばアリストテレスを取り上げるには、ソクラテス、プラトンに触れる必要があり、形而上学でのイデア論批判とその後カントによる純粋理性批判での倫理学の考え方を念頭において話さないと。。。
アドラーの場合、師匠であるフロイトの夢判断、そして軍医として働いた第一次世界大戦時の。。。とか考えてたら、二週間を切った頃に子どもたちが熱を出すわ妻が肺炎になるわで時間自体がなくなり、

あー無理となった。登壇前の二週間で2キロ痩せた。

なんでまあ、間違ってたら謝ろうと、自分の理解できる範囲で解釈して、自分の言葉で話をしようと妥協することにした。完璧を追い求めていたら登壇できる人間なんていなくなってしまう。きっと自分の経験したことや考えたことしか話せない。大きく見せようとしても苦しいだけだ。

個人的には常松さんの話(組織のスケーリングと持続性)が私がやっていることの完全に上位互換で、感動すると同時にこれはかなわないわと結構落ち込んだ。他の方の話もどれも面白く専門性に富み、ずっとこの後話すのか、うげぇとか思っていた。

こんな話でいいのかなーとずっと不安だったが、話し終えた後に色んな方が声をかけてくれたのでとても嬉しかった。登壇者として参加できてよかった。

私はコミュニティの価値と力を信じている。
これからもたくさんの人に足を運んで欲しいし、私自身も時々出掛けていって様々な方とお会いしたい。

時間をおいて頭を冷やしたつもりだが結局良くわからない文章を書いてしまった。上手く言えないことがもどかしいんだけど、なんというか大きな繋がりみたいなものを感じて、とても感動したんだ。納得がいくように言語化できないのが悔しい。かといって安直によかったとも言いたくないし。うーん。まあいいや。またどこかで会いましょう。

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