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茂見社長とユーザ起点のイノベーションを探る―第2回:NTTドコモ 様-3/3

ICI総合センターの共創パートナーである、株式会社トヨコーの代表取締役社長CRC 茂見様にアンカーをお願いし、ユーザを起点としてオープンイノベーションを実践されている方々のノウハウやポイントを明らかにしてしまおうとするこの企画。

第2回のゲストには、株式会社NTTドコモで5Gやオープンイノベーションを活用して建設業のDXやイノベーションを担当されている中岡様・中島様・後藤様をお迎えし、オンラインで熱い議論を行っていただきました。今回は最終回Part03をお送りいたします。

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これを使えば「人たらし」?!コミュニケーション円滑化へのアプローチとは

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私は、自分自ら作業して開発業務を行うことがあります。レーザーでの錆取は、1日の機器リース料が高いので、生産性を上げるのはコストダウン、という観点でも非常に重要なテーマです。自社でソフトウエア開発もしているので、まさに先ほど言われていたことは実際に行っています。具体的には、作業員の行動を細分化し、休憩時間の取り方、レーザーの照射時間をアプリケーションに入れることで、リアルタイムに研究所で分析し、現場に生かす開発です。
これらのプロトタイプのアプリケーションは、アジャイル開発で、実は1か月半でつくりました。ゼロからサーバーをたて、アプリケーションを作り、スマホをいれ、現場の通信環境も整えました。それでいざ、現場で使ったらネットワークの関係でうまくいかないということもありました。弊社はまだ「ドコモオープンイノベーションクラウド」の設定が終わっていないので…自社のサーバーにおくと、VPNがつながらないなどのトラブルでした。このようなトライ&エラーの中で、自社の社員ですら使ってくれないなど、開発には苦労がありました。とは言っても、生産性を上げることはコストにも直結しますし、作業やっているメンバーも過酷なので早く終わらせたいという思いはあります。現場は生産性を上げることについては、積極的にやってくれていると思います。まだ、エンゲージメント、やる気までは盛り込めていないので、非常にポイントを突いた課題に取組んでいらっしゃるのだなと感銘を受けました。
現場は決まった業務、工期があり、その中で1日伸びたら大損害という場合もあります。さらに安全が最も大切で、些細な不注意が死に直結するため、今までやっていて安心だったことを変えたくないというのは理解できます。そこをコミュニケーションでサポートするという観点で取組みを行っているということですが、ドコモはどのような工夫をしていらっしゃるのでしょうか。

後藤

現場で働く人の信頼関係に着目し、チームワークをサポートするサービスの検討も行っています。
具体的には、相互に感謝を伝えるプラットフォームの提供の検討となります。職員同士でも数十人いると担当同士でのコミュニケーションがうまく行っていないことや、担当同士の仲が悪くて仕事が円滑に進まないということも聞きます。解決には、人と人との信頼関係の構築がキーだと感じます。人間なので、褒められるとその人を好きになることも往々にしてあるので、上手に構想に含めていきたいと思っています。

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このコミュニケーションと歩掛りのスコアリングとの関係もあるのでしょうか。

後藤

そうですね。やり取りしているデータで分析することでスコアリングもしますが、現場の所長さんのキャラクターで現場の雰囲気が違うということがありました。まさに、そのような所長さんはいわゆる『人たらし』で、その『人たらし』の暗黙知を可視化して若手職員に伝承することで、現場でのコミュニケーション力の向上を図りたいと思っています。この『人たらし』になる方法を伝えることで、何がコミュニケーションの円滑化に寄与しているのか、どういう行動をすれば良いかがモデリングできると思っています。これは、発展性を含んで検討している段階です。

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これを使えば「あなたも『人たらし』」というのはいいですね!

後藤

コロナ禍以前は、仕事では厳しい方も仕事が終わったらONOFFを切り替え、作業所全員で焼肉大会を実施するなどコミュニケーションの機会をつくり関係を構築していたと聞いています。しかし、今はそれが気軽にできないため、人間関係を構築するサポートが必要だと思います。プロセスの最適化だけでなく、人間のコミュニケーション円滑化が生産性向上の一番の近道ではないかと考え、両方セットで行っています。

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生産性を上げるためのコミュニケーション改善にも、数値を用いて分析を行うドコモの在り方にICI総合センターのスタッフは感銘を受けました!

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はぁ~検討されている内容が本当に深いですね。

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建設業はマネジメント自体がやる「べき」ルールでなくやっては「いけない」ルールが数多く複雑に積み重なり続けるようになっており、元請も協力会社もそれに慣れてしまっています。よって、自ら工夫して褒められるという「べき」論の正のスパイラルが少ないため、今後、大きな改善の余地があると考えています。
例えば先ほどのトンネルの話で50分から45分に時間が短縮されても、ボルトの締め方が甘いなど品質が悪化したら元も子もない。今後は、ドコモさんのツールで、品質をデータで可視化する一方、課題を発見・共有し、円滑に改善するためのコミュニケーションまで支援してくださるというのが、本当にすばらしいと思います。今まで見えないと思い込んでいたことを数値で見せてもらうことで、人のモチベーションを向上させたり、新たな発見や興味を持つのはとても良いと思います。想像すると楽しくなりますね。

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今回の対談は、このような人と人とのコミュニケーションや信頼関係構築といった、ある意味人間臭い話しが中心になるとは思っていませんでしたが、大変興味深く拝聴させていただきました。

中島

もともと、DX定着化の観点で課題があったところに対し、今回はコミュニケーションからアプローチをすることで解決の糸口にしているという話をしたいと考えていました。先ほど、岩坂さんがおっしゃっていた話につながりますが、現場の所長が褒めると、所長が実現したい現場文化の醸成ができると考えています。データの活用や生産性向上もするけれども、人間の要素も考えていかないと定着が難しいと考えています。現在、いろいろな仕掛けを進めているところです。

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なるほど。前半でのAceReal for docomoのお話で、困難を乗り越えたのは「熱量の伝播」だったというエピソードも聞かせていただきましたが、これもコミュニケーションの一環ととらえられますね。建設現場の生産性向上というとデータで縛られて、一分一秒監視されるというイメージを持つ方も多いと思いますが、その中でドコモ様は信頼関係の構築こそが生産性向上へつながる。というアプローチをされていて、目から鱗というかとてもすばらしいと思いました。

中島

合っているかわかりませんけどね(笑)。

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いや合っていると思いますよ!話は変わりますが、建設業の古くて新しいテーマに『多能工化』があります。現場全体の業務負担を均一にするには、協力会社の皆さんに技能を増やしてもらい(多能工化)忙しいところを柔軟にご担当いただければ工期短縮につながる、というやつですね。先ほど後藤様からもお話があった「手待ち」の解消のためにも『多能工化』は重要なキーワードだと考えています。5Gで多能工化へのチャレンジもあると思いますが、ドコモ様はどうお考えでしょうか。

中岡

5Gという技術について、各方面で講演する中でもお話していますが、5Gの特徴とは高速、大容量・低遅延・多数接続であり、これらにより『時空を超える体験』ができることがポイントです。高画質なマルチビューイングや、遠隔ロボット操作により、自分自身がどこにいても、あたかもその現場にいるかのような体験を得る事ができます。無線通信とロボットで、どこのロケーションにいてもすぐに現場に入ることができることが革新的で、今までの時代が大きく変わると確信しています。この技術を利用することで、例えばハンディキャップを持った方々も、より多くの職種にて業務が行えるようになり、多くの業種業態で社会実装される事でより社会全体が皆に優しく、多様性が広がっていくことでしょう。AceReal for docomoにおいても、支援者PC側の情報をより低遅延にARスマートグラスに伝送することができます。しかも作業者は、支援者の表情を見ながら支援を得る事ができるため、コミュニケーションをより豊かにするツールにもなっております。

With/afterコロナの時代も本質は以前のまま。ただ「デジタル密」という新しいキーワードをプラス!

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次のテーマはAfterコロナの時代におけるイノベーション、行動変革、社会変革があると思います。このテーマの中で、直接会わなくてもどう進めるか、いわゆる生の接点がない中でどのように物事を進めるかについて、5Gの活用という視点も含めつつお話していただきたいと思います。ドコモ様のお話の中で『本質を変えずにプロセスを変える』というキーワードがでてきていますが、こればイノベーションを考える上での本質だと思います。このあたりも補足をお願いいたします。

中岡

弊社は日本国における主要な通信事業者として、日本の技術力を生かし、また各パートナー様と共に本取組みを力強く前に進めていく事により、お客様およびパートナー様のビジネスがより発展し、日本および世界の方々にとってより豊かな社会となるようにサービスを創造していくという使命があります。現在は、モバイル通信の大きな変革期であり、新型コロナウイルスによる生活や仕事の改革期でもあります。弊社は各パートナー様と共に、5Gソリューションサービスを介して、お客様にとってベストな方法を提案し、皆でこの苦境を克服していきたいと考えております。
コロナ禍でも現場業務は無くなりません。人も、人々のコミュニケーションも無くなりません。対面でリアルな状況でコミュニケーションできないのは非常に悲しい事だとは思います。ただ、その中でモバイル通信とテクノロジーを活かし、今までと変わらないコミュニケーションや、人と人との繋がり、仕事の質も変えないという仕組みをつくるために、皆様のお役に立てるように今後とも鋭意努力を重ねていきたいと思います。

中島

建設業についてお話すると、現場では、あえて時間的・空間的なずらしを発生させる工夫をしているなど多くの特徴があると思います。デジタルの活用はあたりまえとしつつ、希薄化するコミュニケーションを補完することに寄与できればいいと思っています。社内で使って全く流行っていませんが、Afterコロナにおいては『デジタル密』になろう!と思っています。

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良いですね!『デジタル密』。流行らせましょう(笑)。

後藤

コロナ禍になり、良くも悪くもニューノーマルな働き方の推進が進められています。私はこの状況を、人間がリアルにこだわらないチャンスがきたと考えています。このチャンスを生かし、本質を変えずに生産性効率につながる価値のあるソリューションをつくり、現場の人の働きやすさをアシストしたいです。

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皆様ありがとうございました。総括させていただくと、『デジタル密』で、以前よりコミュニケーションを円滑化するということが、お三方共通の意見ととらえました。

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ドコモ様らしくコミュニケーションでまとめられており、素晴らしかったですね。
かつて、トンネル現場にPHSを導入した際、デメリットとして「昼礼など事前打合せの密度と精度が落ちた」と現場の課長に言われたのを思い出しました。お三方のお話を聞いて、人間の本質という観点で、コミュニケーションのあり方を考えなければならなかったと、反省した次第です。

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弊社は双方と取組みをさせていただいていますが、今後ドコモ様と前田建設様の間でも何か生まれるといいなと思っています。今回は本当にありがとうございました。

(終わり)

3日間に渡って、お送りいたしました「茂見社長とユーザ起点のイノベーションを探る」シリーズ第2回は如何でしたでしょうか。

今回は5Gソリューションサービスの開発の展望や、業界に入り込んだソリューションへの試行錯誤を通して、改めてコミュニケーションのあり方について考えさせられる対談でした!

今後も「茂見社長とユーザ起点のイノベーションを探る」は、noteにて連載を計画しております!次回もぜひご期待ください。