見出し画像

解雇をしやすくして人材の流動性を高める。ただしセーフティネットをしっかり準備

4 財政破綻を回避するための処方箋

② 既得権益を排し大胆な規制改革を行うことによって、経済の停滞から成長に

提言2 解雇規制を緩和して人材の流動性を高める。その際にはセーフティネットをしっかり準備する

 提言1では、「労働生産性の低い中小企業の統廃合を促す」と書きましたが、世界でも解雇が難しいと言われている日本では、時の経過によって余剰となった社員や能力が仕事に合わなくなった社員を整理できず、そのことが生産性の低下につながっている面もあります。
 中小企業に限らずベンチャー企業や大企業でも、できるだけその時点で必要なスキルを持った人を適正な人数雇用することが、生産性の向上、ひいては経済成長に繋がります。
 働く側からしても、今は終身雇用が前提の時代からの移行段階ですが、もっと転職が当たり前になり人材の流動化が進めば、合わない仕事に仕事にしがみついて貴重な人生を無駄にすることなく、いくつかの仕事を経験して、自分にあった仕事を見つけられるメリットがあります。
 その時に必要になるのが、失業してもある程度不安のない生活するのに必要なお金(失業手当)とスキルアップのための教育です。

 日本は、解雇が難しいと言われていますが、海外とはどう違うのでしょうか。

日本の解雇規制、海外と比べて本当に「厳しい」のか?
 ヨーロッパ各国の解雇に関する規定と比較しても、日本が殊更に厳しいわけではないが、日本の場合、雇用契約の多くに職務(ジョブ)の限定がないことが特徴だという。
 経営難による整理解雇については、ジョブを限定していないことが多い日本の場合、配置転換の可能性などがあれば認められにくくなるが、ヨーロッパでは比較的認められやすい。
ーー日本の解雇規制の背景には、どのような考え方があるのでしょうか?
星野弁護士:欧米では、労働者としても「この仕事をやる」という意識で入社しているので、その仕事がなくなる以上は、労働者としても「しょうがない、この会社にはいられない」と考えます。これがジョブ中心で考えるということです。
 一方で、日本の場合、「この会社の一員になるんだ」という気持ちで入社するのが一般的であるため、自分が今やっているジョブがなくなったとしても、そのことを理由に追い出されるのはおかしい、という考え方が社会常識・共通認識になっています。
向井弁護士:欧米では、仕事がなくなった以上は、去ってもらうしかないという点では大体共通しています。金銭解決制度などを活用して、お金で解決することもあります。
弁護士ドットコムニュース 2021年05月29日より)

 これは公的な資料ではありませんが、弁護士さんの「欧米は「職務(ジョブ)」で雇用、日本は「会社」で雇用していていて、その点では解雇は難しくなる」という見解は納得できます。

 セーフティネットについては、少し古い資料ですが厚生労働省の失業保険制度についての比較資料がありましたので、抜粋しました。アメリカは自己責任が重視される国で格差も拡がって問題になっているので、北欧以外のヨーロッパを参考にしました。
 ドイツ・フランスは、失業保険の給付期間が最大2~3年と日本の1年よりも長く、失業保険の支給が終わった後も月4~5万円程の支給が続くようです。
(イギリスは失業保険期間が短く金額も月4万円弱と貧弱すぎるので、他にも保障がないのか別途調べてみたいと思います。)

4.2欧米における失業保険制度

厚生労働省 欧米における失業時の生活保障制度及び就労促進に関わる助成制度等 -「2009~2010 年海外情勢報告」特集部分のポイント- より)

 日本の社会は、会社に個人がずっと所属することが前提でできているため、解雇が難しい反面、サービス残業やパワハラがなくならず、中小企業の存続を脅かすことに繋がる最低賃金の引き上げもできない、閉塞的な社会となっています。
 他の先進国は、解雇のリスクは日本よりも高いですが、その分人材の流動性も上がり、自分の適性にあった職に移ったり、悪い待遇なら他へ変わったりことができます。生活の保障は仕事がない間の給付金や教育制度(一旦会社に入った後に大学や職業訓練校の学校に入れ、そこで取った資格や学位が就職に優位になる)により、国は企業ではなく個人をケアしています。

 古くからの日本の慣習や既得権益を守るのではなく、ヨーロッパ等の制度を参考に取り入れることによって、一人ひとりが幸せを追求できて、経済的にも発展する社会になるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?