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日本が財政破綻する確率は一%未満 高橋洋一氏

3 財政破綻は起きないとする見解のまとめ

 前の章では日本に財政破綻が迫っているという見解を紹介してきましたが、この章では、日本に財政破綻・ハイパーインフレの危機はないという有識者(著名な方や研究者)の見解を見ていきます。

〇 高橋洋一 嘉悦大学教授、小泉内閣、安倍内閣、菅内閣のブレーン

日本の財政が破綻する確率は一%未満

 日本は「二%インフレ目標」に達していないという現実から考えても、金融政策で物価を上げる余地がまだあるとともに、財政政策でも需要を喚起する余地がある。
 「統合政府」で見れば、政府が発行した国債を中央銀行が購入するのは、統合政府の負債としての国債と、マネタリーベース(中央銀行が供給するお金)との交換でしかない。マネタリーベースは基本的には無利息無償還である。この場合、国債発行がやり過ぎかどうかはインフレ率に出てくる。つまり、インフレ率がインフレ目標を上回れば財政赤字は過大ということなので、インフレ目標は財政規律を維持する指標として意味があるわけだ。
 インフレ目標の範囲であれば実体経済に弊害はなく、日銀の国債購入を否定する理由はない。現状の日本経済を考えれば、プライマリー赤字を過度に恐れる必要はなく、それによる成長の成果を目指したほうが、結果として経済やその一部である財政にとっても好影響になると考えられるからだ。
 財政が経済を動かすという世界観では、プライマリーバランスの均衡化が最優先になる。しかし、日本経済においても一時的なプライマリーバランス赤字は問題ではなく、経済再建のほうが優先されるべきである。
 二〇年の間、筆者は「日本の財政はまず破綻しない」と主張してきた。根拠を示そう。各国国債の信用度は、それらの関わる「保険料」(CDS〔クレジット・デフォルト・スワップ〕レート=債権などの債務不履行のリスクを対象とした金融派生商品の取引レート)から算出される。危ない国債に対する「保険料」は高くなるはずだからだ。この「保険料」がもっともらしいのは、それがネット債務比率対GDPと、かなり(逆)相関の関係を持つことだ。これはファイナンス理論と整合的な結果である。データをもとに試算をすれば、今後五年以内における日本の財政破綻の確率は「一%未満」だ。
(ファクトに基づき、普遍を見出す 世界の正しい捉え方 高橋洋一著 2020年1月31日発行より)

MMTについて 国債は無限に出せる?

(質問)MMTっていうのがよくわからないですけど、教えてもらえますか?
(回答)私もわからない。だって、当初は日本でこれを言っている人達は「財政出動いくらでもしても大丈夫です」っていうのは言いましたね。いくらでもっていうのはある人はね「5000兆円国債出しても大丈夫です。何も問題は起こりません」っていう言い方をしたの。 だからそれは違うでしょって。私なんか実はこういう理論について5000兆円国債だしたらインフレ率がどの位になるかとかそういうのは結構計算できる方なんでね。そうするともう間違いなくものすごいインフレになるからそれはまずいでしょ。って言ったら、「いや、大丈夫なんです」っていうのがMMTを最初ね言ってる人たちだった。
 私なんかは、「5000兆円国債出してインフレ率が何十%になりますよ。いくら何でも狂乱物価みたくなってひどいでしょ」って言っている。MMT言ってる人ってど文系で計算ができない人が多い。
 私が「インフレ目標の範囲で2%にいかなければ、国債出して日本銀行が買うのもありです」って言ったら、MMTの人もそれをそのまま今は言ってる。
 その中の人が自慢げに「財務省がMMTを認めてる。財務省のHPに自国通貨建ての国債を出しても大丈夫ですと書いてある。財務省も認めているんです」っていう言い方をしていて、(これは)5000兆円出しても大丈夫に近いでしょ。だって「自国通貨建ての国債で財政破綻しない」って財務省が言っていて、数字までは書いていないから。
 その人に、「その文章俺が書いた」って言ったらびっくりしてた。ただし、その文章には「先進国であれば」って書いてある。先進国っていうのはきちんとした経済政策をする国、かみ砕いて言うと、インフレ目標は守る国。だから私がさっき言った、インフレ目標までは大丈夫ですっていうのとまったく同じことを実は2000年の頭に財務省の文章で私が書いている。それなのに、先進国ではとかそういうのを省いて、「自国通貨建ての国債で破綻することはない」そこだけを取り出してMMTだって言ってる人がいる。(Youtube高橋洋一チャンネル 第17回 国債は無限に出せる? 新経済理論MMTは実は○○○だった 2020年10月24日より)
https://www.youtube.com/watch?v=G0KvTvEEQeI&list=LL&index=3

国債の利払いは問題ない

(質問)日銀が国債を買い取れば、政府の借金は消えるとはどういう事でしょうか?
(回答)正確に言うと、日銀が買い取っても借金が消えるってことではない。借金は残っているけど、借金は利払いするから大変なんだけど、その利払いが事実上無くなる。
どういうことかと言うと、政府か借金するよね。国債を出すっていうことだけど、国債を持っている人に利払いをしなきゃいけない。これは間違いない。
 それ(国債)を日本銀行が持ってたらどうなるか。日本銀行に政府は利払いをするんですよ。ただし日本銀行は政府の子会社なんで、日本銀行の収益はどのように発生するかって言うと、日本銀行はお札を刷ってその刷ったお金で国債を買っている。お札はタダで刷れるから、持った国債は利子が入ってくるんだけど、それが丸々日本銀行の収益になるんですよ。日本銀行の収益は100%政府が取れる。それが政府の子会社っていう意味。そういうのが制度として日銀納付金として法律できちんと定まっている。その意味で日本銀行が持っている国債については全く利払いする必要がない。そういうこと。
 国の借金全体として1000兆円ありますという言い方をするから、大きく見えるんだけど、そのうち大体500兆円は日本銀行が持っている。だから利払いをしなくてもいい国債が500兆円ある。全然たいした話じゃない。(残りの)500兆円は民間に借金しているのは事実だけど、一方で政府は600兆円ほど金融資産を持っている。貸借対照表を見たらもろ出ちゃうからすぐわかる。金融資産の方が多くて収益もあるから差額を考えるとちょっと儲かっている。だから何が問題?(っていう話)
(質問)国債を日銀が引き受け続けると日銀が保有する割合が増え続け、いずれ日本国債市場が消滅してしまうと思います。そうすると国際的な信用がなくなって、円や日本株式が暴落してしまうと思うのですが?
(回答)これは昔バーナンキFRB 議長が言っていたんだけど、日本銀行が金融機関からどんどん買い増していけば最後は1000兆円になるんじゃないの。って言われたわけね。それは理論的にはあり得る。そうなったら実は財政再建って(必要が)なくなっちゃう。利払いしても全部戻ってくるから財政問題はなくなる。財政問題がなくなるから国際的な信用が高まるっていうことなんだよ。
(質問)これぶっ飛んだ意見なんですけど、もの凄く国債の発行を増やして税金をもの凄く減らして、実質無税国家することは理論的に可能なんですか?
(回答)頭の中では可能かもしれないけど、実際に計算をすると税金の分だけ国債を発行すると、もの凄くインフレ率が高くなる。だからそういう美味しい話はほぼ起こり得ない。
 今回のコロナみたいな時には、消費がほとんどなくなる。その時には物価が下がるからできるけど、ノーマルな状況になったらできない。インフレ率が2%じゃなくて、5%とか10%になる。一般的に言われているのは精々耐えられる4%位まで。だから案外そういう美味しい話はできない。
(Youtube髙橋洋一チャンネル 第95回 実は黒字!?国債の仕組みをわかりやすく解説 2021年02月05日より)
https://www.youtube.com/watch?v=aTOUGm7vzSc

 高橋洋一さんの話は、わかりやすいものでした。財政危機派の人とも「国債発行額には限界があってインフレ率が高くなるといけない」ということは共通しています。
 違いは、①国債の発行額はまだ余裕があるかどうか。②インフレ率を2%前後でコントロールできるかどうか。ということのようですね。



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