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中古(ジャンク)大正琴を手にする際に気をつけたいこと


▶ そもそも中古(楽器店以外)で楽器を買うべきではありません。少なくとも最初の一台は

いきなりちゃぶ台をひっくりかえしますが基本的に「中古(楽器店以外)で楽器を買うべきではありません。少なくとも最初の一台は」。ましてジャンクでというのは避けた方がよいでしょう。

これだと話が終わってしまいますし(あとで書くように)そうとばかりもいってられないのも確かですが、頭の片隅には置いておいた方がよい原則だとは思います。

文房具でもパソコンのキーボードでも調理器具でもなんでもそうですが、日常的に人の手が触るものには一定の「癖」がつきます。使っている最中は気にならなくとも思った以上に偏りが生まれるものです。中古を買うなら、ある程度のダメージがあるものと受け入れ、どんな癖がつくかの傾向を把握していて自分の用途でそれを消化できるか判断でき、場合によっては不具合のメンテナンスができることが必要です。

なにより「新品というまっさらの状態」を経験しておくことは自分のなかの基準を定める貴重な機会で、楽器を続けていくうえでは結構大事なことです(なによりワクワクする時間でもあります)。もし、大正琴以前になにか別の楽器である程度経験を積んでいないなら、最初から中古(ましてジャンク)に手を出すのは積極的にはお勧めできないというはそういうことです。

・大正琴はとても傷みやすい楽器です

それに大正琴がとても痛みやすい楽器というのもあります。理由は大きく三つ。まず「可動部(金属パーツ)がかなり多い楽器」であること。次に「掃除のしにくい楽器」であること。最後にこれは逆説的な意味で「とても大切にされてきた楽器」であるからです。

大正琴のつくりから「可動部が多い」というのはすぐ分かると思いますが、演奏しているうちにどうしても可動部にはダメージが貯まっていきます。そこについた癖は所有者の癖でもあり本人の演奏では問題にはならないことも多いのですが、次の奏者に渡ったときには難点として現れます。

次に「掃除のしにくい楽器である」というのは、本体(胴と指板)をキーのついた天板が覆っているためで、いってみれば掃除したい箇所が全て隠されてしまっているのが大正琴という楽器なのです。弦交換も苦労するし、また弦の状態も見極めづらい。天板裏と指板にたまった埃、胴についた手垢や汚れを拭き取るのも鍵盤が邪魔し、それらは容易に湿気を引き寄せて、カビと錆びの繁殖地になります。

ところで最後の「とても大切にされてきた楽器であるから」というのには「なぜ?」と思われるかもしれません。

大正琴にはいつのころからか木製のハードケースとセットで流通するという文化があったようです。そして特に戦後は中高年の女性を中心に普及したことから、大正琴は大切に扱われ、ていねいにケースに納められて大事にしまわれていました。中古の大正琴には達者な筆文字で以前の所有者のお名前などが書かれていることがよくあります。(もちろんこれには同じ教室では合奏前提に同じ琴を使っていることが多かったから取り違えないためにというのも理由でしょうけれども)

そしていま、大正琴を支えてこられた方々の琴が様々な事情で市場に流れているのですが、たいていの場合は弾かれなくなってから手放されるまでには一定の時間が経過しています。私の趣味とするカメラやレンズでも「ケースに入れて大事に押し入れの奥にしまって数年が経っていた」というのは機材にとっての死刑宣告です。このため市場に流出したときにはケースの中で楽器がすっかり痛んでしまっているということがままあるようで、この二ヶ月でもそういう琴をたくさん目にしました。

なお、リサイクルショップのジャンクコーナーなどでは、奥まった薄暗い場所にケースに入ったままの大正琴が詰め込まれてる光景が見られますが、そこでも日々劣化は進んでいるとみるべきです。ある程度の値段を付けた、しかしそれを付けたのはずいぶん前なのだろうという薄汚れた値札を貼られた高価な琴がケースの中で再起不能になっているのをみて、もっと早くこの店に立ち寄っていればなぁ…とため息をついたのは一度や二度ではありません。

・でも、楽器店には(基本的に)大正琴が売っていないのです

しかし、その大原則を踏まえたところで、いま大正琴に興味をもったときに大きな問題になることがひとつ。それは「楽器店には(基本的には)大正琴は売っていない」ということです。

初回のnoteにも書きましたが、平均的に考えていまや身近でもっともたくさんの大正琴に触れることができるのはリサイクルショップの中古楽器コーナー(ジャンクコーナー含む)だというのが令和です。原則は踏まえつつ、中古(ジャンク)コーナーでよくみかける大正琴やそのチェックポイントをメモしておくことはこれから大正琴に触れてみようと思い立った方の参考になることもあるのではないかと考えました。

もちろん、新品であれ中古であれ、身近に大正琴をラインナップしている楽器店があったらそれはすばらしい幸運ですから、その場合はむしろ積極的にその機会を活用してお店と縁をつないでいただければと思います。

前置きが長くなりすぎました。ようやく本題です。大正琴の各部についてご存じない方は先に以下のリンクで大まかに構造を把握しておいてください。(大正琴の各部の呼び方には様々なバリエーションがあります)

▶ 中古(ジャンク)の楽器をチェックする際のポイント

・金属パーツにサビが見えるようなら回避

ペグ周辺。メッキは痛みが見られるが、この程度は問題ない

まず、弦を巻き上げるペグ(特に弦を巻き付けるシャフト部分)のサビは要注意です。ペグがまともに動かず、弦を巻き上げられない場合があります。この機種はギア(歯車)が本体の中で見えませんが、露出している機種でギアにサビがでているのが確認できた場合は回避推奨です。

天板と目隠しの部材を固定するネジにサビが確認できる

天板に固定された目隠し用の部材を固定するネジにサビが見えますが、これくらいは問題ない(他の重要パーツに波及する可能性は低いだろう)と判断して実際に問題がありませんでした。

ただ、同じくこれくらいのサビは問題ないだろうと判断をした次の大正琴ですが、天板固定用の金具に取り付けられたネジはボロボロに劣化していて、整備のために抜こうとしたら琴本体の木材の中でぼろっと崩れて頭を抱えました。取り出すにはドリルが必要ですが、そこまでする必要があるか、今後のメンテナンスの方針は検討中です。

実用上は問題ないだろう、ぐらいのつもりでしたが実際はかなりの重体だったネジ

前述したように、大正琴のケースがハードケースという文化が長かったこともマイナスに働いています。ハードケースのなかに入れっぱなしのままだとケースの内側に触れるこの箇所がサビの餌食になりやすく、その状態の判断はなかなか難しいのです。

どんなに安くても、これらの金属部分にサビが見える個体には手を出さない方がよいでしょう。良くも悪くも個体数は多いのです。じっくり見て回ることで経験が積み重なり色々と見えるようになることはたくさんあります。

・ 鍵盤(キー)/ 指板(フレット板)周りの確認

大正琴の鍵盤(楕円型)

もし、品物にビニール等がかけられておらず、実際に鍵盤を触れられるなら全てのキーを押してみましょう(ただし、お店の売り物を扱っているという節度は忘れないでください)。ここできしみを感じたり、引っかかりを覚えたりする琴に手を出すべきではありません。

天板を裏から見たところ(高音部)の一例

これはとあるメーカーの大正琴(廃番)の高音域を天板の裏側から見たものですが、この琴は押したキーのレバーが他のキーに引っかかってしまうという症状が多発していました。これが最初からなのか、前の持ち主の演奏で歪んだのか、それとも保管中に何か不具合が起こったのかは分かりません。初手から中古(ジャンク)で楽器を買うべきではないという理由です。

触れないときはじっと観察し続けてみてください。時間をかけて複数を見る経験を積めばなんとなくその楽器の「デフォルト=標準」の状態が見えてくるはずです。例えば鍵盤の高さが極端に違う箇所がある場合、とくによく使うことになる「1(ド=C4)」周辺が他のキーより沈んでいる場合は鍵盤を支えるバネがへたっています。

また、キーが斜めに曲がっている、捻れて見える個体も手を出さない方がよいでしょう。もっとも、これはカスタム依頼を受け付けてキーを大きく曲げた配置をすることができたメーカーや、そういったカスタムを受け付けているショップがあるようなので一概に劣化とはいえないのですが、どちらにしても特定の奏者と演奏に強く寄り添ったカスタム機で、ジャンクコーナーで手を出すようなものではありません。

大正琴の鍵盤(キー)はもともとタイプライター的な丸型だったものが、次第に楕円や四角に、大サイズへ、様々な素材へと変化していきます。

KAWAI 紅萩 |全体に 幅広い大型のキーを採用している
SUZUKI 典雅 | 小型だがどれも厚みがあるキー
YAMAHA TH-15E  | キーの大きさを揃えつつ、シリコン素材を採用したキー

ギター等がそうであるように慣れるとどの機種でもある程度弾けてしまうものですが、しっくりくるかどうかは別。メーカー内でも違いがあったりしてどの機種のキーの感触、押し心地が気に入るかは自分にしかわからないことで、大正琴選びの醍醐味となるかもしれません。

 ・鍵盤(キー)を支えるバネ/レバー周りにサビは落ちていないか?

SUZUKI 砂丘 ソプラノ | 中央に天板からレバーを支えるバネが見える

大正琴の天板には鍵盤が固定され、鍵盤のレバーと天板はバネで接続されています。オーソドックスな構造を採用している機種だとねじりコイルバネが使われているでしょう。このバネにサビが見えるときは回避推奨です。いわゆる細いハリガネを曲げて作られたバネのため、少々の腐蝕であっさりと折れます(経験者です…)。天板裏のバネがよく見えなくても、バネの下の本体にサビが小さな山を作っていることもあります。これも回避推奨でしょう。

オーソドックスな形式の大正琴のレバーだが酷いサビが見える

上記はオーソドックスな形式の大正琴のレバーですが、酷いサビが元の金具の倍の厚さになるほどに盛り上がって天板の木製レバーガイド部分に食い込んでしまい、とても動かせない状態になっていました。取り外すためにはガイドの木材を一部割るしかありませんでした。

元の奏者はこの大正琴を手製のキルトカバーで包むほどに大切にしていらっしゃったようなのですが、いったんしまい込まれてしまったときには楽器を痛めることになってしまったのです(頻繁に使われていたときは特に問題がなかったはずで、奏者が悪いといっているわけではありません)。

この機種は鍵盤のレバーを下側からバネが支える構造でしたが、この個体ではキーキーというきしみがなかなか取れずミシンオイルで多少マシにはしたというところです。これは現行機なのでメーカーに問い合わせればメンテナンスしていただける可能性があります。本格的に使いたいという現行機に出会った場合は下手にいじるまえにメーカーに問い合わせることも検討すべきでしょう。その場合は、改めて新品を買うのももちろん選択肢となります(むしろ気に入った琴が新品で買えるということ自体が貴重な機会かもしれません)。

・テールピース(紐掛け・弦掛け)周辺

SUZUKI | 砂丘 ソプラノ

ただ、テールピース(紐掛け・弦掛け)のサビや傷はあまり気にする必要はありません。ここは弦とこすれていやおうなく傷つくところだからです。

なぜか大正琴は金メッキ風の塗装を金属パーツにほどこしていることが多く、それは高級感の演出なのかも知れませんがエレキギターあたりのそれと比べてもどうも傷みやすいように感じるのは困りものです。

もちろん、ここもあまり酷く錆びたり傷ついていたりすると弦を痛めるのでこれも回避ということになります。

・弦は交換してください。絶対に。そういう意味で多少錆びていても問題ありません。

とある機種の専用弦、フレットごとに弦がつぶされ傷が入っているのが見えるでしょうか?

大正琴はギターなどと同様の金属製フレットを採用して金属の鍵盤(レバー)との間で金属弦をロックして音の高さを決定します。複数の弦を同時に押さえるこの楽器は、このためかなり力をいれて鍵盤を押さえる必要があり、フレットを廃した一部機種を除けば演奏しているうちに弦には必ず深い傷が入っていきます。

菊八重(琴生流)に張られていた弦

上記は中古で入手した琴生流菊八重会の大正琴、菊八重に張られていた弦ですが、ミュートされたような雑音を発するばかりでまともな音は出なくなっていました。外してみるとこの通り、弦には鍵盤のレバーで刻まれた傷がハッキリと見えます。さすがにこれは演奏を考えるならもう少し早くに交換するべきだったでしょう。(この段 2024/01/30 追記)

そもそも中古(ジャンク)の琴は前回張り替えてから長い間が経過しているのが確実で、古くなった弦は見た目はきれいでもチューニングが揃わない、そもそもちゃんと音が出ないなど様々な不具合が出ます。

「弦にサビがある」ということを明記して値引きされている場合がありますが、そもそも弦は消耗品です。ナマモノです。とくにピックの当たる辺りはいわば弾くたびにごく細いハリガネを硬いプラスチックの板で殴りつけ続けているようなものですから細かい傷だらけです。指の油脂等もベッタリつきます。いったん弾かなくなればあっという間にそこから錆びます。

このため、大正琴を買ってきて最初にやるべきことの一つは弦の交換です。きもちよい音で楽しむためにも楽器のポテンシャルを引き出すためにも必ずして欲しいことです。

ところでどうしたことか大正琴の中古には「最初の購入時から着いてきた」とおぼしき交換用の弦が入っていることがよくありますが、これもどれだけ時間が経過しているのか分からない代物です。それを試して四苦八苦する時間を考えれば、最初から「弦は新しい物を買う」と決めておいたほうがいわゆるタイパがよいと思います。

弦は交換するものだ、と決めてしまえば楽器を見て回る際に弦の多少のサビは気にする必要がなくなります。もちろん弦全体が真っ茶色になって太さが変わって見えるほどサビている場合は恐らく他の場所にも不具合があります。

なお、大正琴の弦は各社から出ていますが、大正琴自体の生産は終えているもののゼンオン(全音)の弦が入手性からも価格からもお勧めです(noteでの表示の関係でAmazonのリンクを貼っていますがヨドバシなどもっと安いネットショップはありますので探してみてください)。

ただ、一部の大正琴は弦をかけるコマが固定されていないことには注意が必要です。それは一部のギターやウクレレでもそうであるように微妙なオクターブチューニングをできるようにするなどいくつか理由があるのですが、そのような琴では一本ずつ弦を交換するようにしないとコマが脱落します。コマを置く場所に印が刻まれていたり、何らかのはめ込む突起などがあって位置決めが容易にできる機種はよいのですが、そうでないときは位置の確定に苦労することになります(それはそれで勉強にはなりますが)。

・指板(フレット板)/ボディ

ここはリサイクルショップなどでは確認が難しいところですので軽く触れるのみに止めますけれども、ギター等含めて弦楽器というものはある意味で薄い木材で作られた空洞の箱の一方に複数の弦(場合によっては太い金属弦)が張られて、それがものすごく強い力でギリギリと両端を中心に向けて引っ張り続けている訳で、生半可な材や補強不足の構造だとあっという間に歪みます。

しっかりした木材であっても長い時間のなかではだんだん弱ってくることもあり、ギターなどではその対策が重要なポイントになります。

この機種はある流派の大正琴で響きはとてもよかったのですが、開放弦で一弦がビビるという症状が出ていました。フレットを削るなどした結果、天板を外した状態ではきちんと鳴るようにできましたが、天板を組みつけると再度ビビりが発生するのを解消しきれませんでした。本体に歪みが出ているように思われます。

中古にはこういったことも(よく)ありジャンク無保証なら自分でなんとかするしかない、という例として紹介しておきます。

・緩衝材としてのフェルト/ラバー(ゴム・樹脂)素材部分

オーソドックスなフェルトによる緩衝材

鍵盤のレバーを受ける天板側には緩衝材としてフェルトやラバー素材が貼られていてそのカラーリングで見た目のアクセントにしてしている機種もあります。

このレバーが当たる部分のフェルトが極端に薄くなっている場合があり、バネの強さとの兼ね合いによっては弾いたときの感触が悪くなっています。また、このフェルト部分の接着剤が劣化して剥がれかけ鍵盤のレバーに干渉している場合がありますのでよく確認したほうがよいでしょう。

また、2000年代前後の機種でここの緩衝材にラバー素材(ゴム・樹脂)素材を採用している機種が見受けられるのですが、保管状態のせいか加水分解(ラバー素材がベタベタになったりカチカチになってしまうアレです)して鍵盤のレバーが張り付くようになってしまっているものをいくつか確認しています。将来的に使い続けるにはフェルトや代替のラバー素材への張り替えが必要になるでしょう。

設計の見直しでここに緩衝材を貼っていない機種もあるようです。機会があったら弾いたときの感触の違いを試してみてください。

・ピックアップ等の電装パーツについて

大正琴で一般的な後付けピックアップ(ゼンオン製)

エレキ大正琴といった場合、以前書いたように多くはギターやウクレレでいうところのエレアコを指しますが、このゼンオンのピックアップ(KP-1)と同種のものを装着している機種はかなり多いようです。(それはある意味では大正琴のOEM関係を示しているのかもしれません)

余談になりますが他社製の大正琴でも、このピックアップと同種のものを後付けしてエレアコ化したと思われるものをジャンクコーナーで見かけることがあります。パーツ単体の相場を考えると構造の学習用としても割の良い出費になるかも知れません。

ただ、ピックアップの動作確認については試奏用のアンプ等が準備してある店舗でないと難しいでしょう。これは携帯型のヘッドフォン用アンプを持ち歩くという手もあります(一台持っていると色々便利なものです)が、お店で使えるかどうかは事前に確認が必要です。この点、お店側が動作確認の結果を値札あたりに書き込んでくれていることも多いようで、そういうお店ならジャンクコーナーのものでも一定の期待ができます(もちろんあくまでジャンク相当ということを踏まえての話ですが)。

・カタログやマニュアル類がついているとめっけものです

ある程度慣れてくるとかえって見落としがちですが、こういった現状では情報の少ない楽器を探す際に諸元(仕様のデータ)や説明書・マニュアル類が公式で公開されているかどうかは中古で楽器を購入する際に結構大事なポイントです。新品のときがどういう状態であったかを探り、また今後のメンテナンスの参考にもなります

▶ (参考資料)大正琴メーカー・販売サイトのリスト(中古でよく見かけるところ中心に)

とはいえ、大正琴について過去の機種のデータを公開しているメーカー(流派)は少なく、大正琴カテゴリの製品がすべて「生産完了品、在庫のみの販売」になってしまっているメーカーも増えて、いま公開されているデータがいつまでそのままであるかは危惧するところです。

かえって大正琴の販売に力を入れていたと思われる楽器店のサイトにデータが残っていることがありますが、これもいつまで残っているのかは不安です。そのとき所有している琴でなくともいずれ誰かの役に立つ可能性はあるのでこまめに記録しておくことをお勧めします。

以下に参考になりそうなメーカー・販売店のサイトを掲載しておきます。大正琴関係のメーカーや流派(またはそのサイト)についてはいずれ別にまとめたいと思いますので、今回は中古(ジャンク)でよく見かけるメーカーにとどめておきます。また、琴伝流を除き、流派との関係は省略しています。

大正琴メーカー

  • SUZUKI | 大正琴

  • 現行機種・周辺機器を始め、2000年前後からの機種のデータをそれぞれのカテゴリで「生産完了商品を表示」をクリックすることで見ることができます。また、サイト内にあってもリンクが張られていないページやカタログPDFが散見され、それらは検索窓から該当の機種名を入れることで見ることができます。

  • YAMAHA |大正琴

  • YAMAHA |ヴィオリラ

  •  YAMAHA | 楽器解体全書 大正琴&ヴィオリラ

  • 2000年ごろから弓での演奏に対応したソリッド大正琴ヴィオリラなど特徴的な大正琴を送り出してきたヤマハですが、現在全ての機種が生産完了品かあるいは在庫僅少品となっています。一部公式サイトには情報が載っていない機種もあるようです。

  • 全音(ゼンオン) | 大正琴top

  • 数多くの大正琴を送り出してきたゼンオンですが、現在ラインナップに残っているのは「アンサンブル大正琴 エレキ・バス」のみでこれも「在庫限りにて販売終了」となっています。関連用品はまだ豊富にラインナップされており、これを維持していただきたいところなのですが。過去の機種の情報は削除される方針のようで、掲載はありません。

  • 琴伝流(㈲日本バイオリン研究所 大正琴全国普及会)

  • 流派(会派/教室)の大正琴は非常に追いにくいのですが、琴伝流はカタログを公開しており、またWebショップも整備されています。

  • ナルダン楽器

  • 大正琴専業メーカーで、ウェブサイトの作りが古く管理し切れていないと思わる(実際リンク切れのページも多い)のですが、かえって古い情報が残っていたりします。また、澄音会という大正琴教室を運営していてそちらの頁からアクセスできるカタログやコンテンツもあります。

  • コムニクス

  • 特徴的な機種を多く送り出したコムニクスの機種もみかけます。ソリッドボディのエレキ大正琴を複数送り出し、また合成音を奏でる電子大正琴をラインナップしたのはスズキとコムニクスぐらいなので、全国的に需要があったし、いまも根強くあるのでしょう。

販売店

中古(ジャンク)に並ぶ楽器や機材には機種・グレードに偏りがあるため、よく見るメーカーのものでも改めてこれらのサイトを網羅的に眺めていると気づきが多いと思います。

なお、Amazonにも多数の大正琴関連の出品がありますが、マーケットプレイスでの中古の出品や海外からの作りの怪しい機種の出品が入り交じるなど(大正琴に限らず)かなり混乱した闇市に近い状況に陥りつつあるため、データとしては参照しづらいのです。

▶ メンテナンスについてはいずれまた…(力尽きました

大正琴について、というより専門店以外の場所で弦楽器を探す際のチェックポイントといった内容になったかも知れません。ギター等の経験があられるなら、何を今更という話が大半だったと思います。

長くなり過ぎましたので、このnoteが続くなら掃除についてはいずれまた、と思いますが、取り急ぎは柔らかい布や綿棒などでたまった埃を払い、固く絞った布で全体を拭いて汚れを落とし、柔らかい布で全体を磨くぐらいでよいかと思います。

もしその琴がハードケースに入っていたのなら、しばらくはケースから出したまま、薄い手ぬぐいのような布をかけて直射日光のあたらない涼しい場所に置いておくのがよいでしょう。ハードケースもしばらく蓋を開けたまま風を当てておくとよいです。そもそもケースは「運搬用」と心がけ、もし一定期間ケースにしまうなら弦楽器用の除湿剤を入れることを忘れないでください(ハードオフの楽器コーナーあたりでも売っています。目安は半年での交換です)。

掃除の際に天板を外すのをテクニックとして紹介している楽器店もあるのですが(確かに私もやっていますが)、組み付けの段階でパーツごとの差を調整している琴も見受けられるので楽器の扱いに多少なりとも経験があるのでなければお勧めできません。

繰り返しになりますが、掃除をする際にはついでに弦も変えてください。コマが固定されていない機種の場合は弦は一本ずつの交換が無難です。

大正琴に限らず、私は中古で買ってきた機材を掃除している時間が大好きです。状態を確認しながら掃除を進める間にボロボロのジャンクが輝きを取り戻し、少しずつ自分の楽器になっていくのを感じます。(とはいえこの作業の間に機材にトドメを刺す看取ることになることもままあるのです…)

軽く掃除をして弦を張り替えた楽器は輝きを取り戻して、そのときには既に愛着が湧き始めていることでしょう。

先に紹介しておくとギター(エレキ・アコースティック含め)のメンテナンスの解説が役立つことが多いでしょう。ウェブ上にもたくさんの情報がありますし、書籍も多数あります。

思えば大正琴はスティールギターの仲間のような構造といえます。現在の大正琴の姿にたどり着くまでの進化の過程では、戦後の一時期にギター職人の方々が流入した影響が多いにあると伺っていますので、一応大正琴はツィター(チター)属の楽器に分類されると思いますが、広い意味では親戚関係といってもいいでしょう。

大正琴に限定すると直接の情報は少ないですが、もう少し広く似たような楽器でという視野で捉えると、色々と役に立つ情報が目に入りやすくなるかも知れません。

次回予告

この項は随時加筆修正していきたいと思いますのでお気づきの点があられましたらコメントなどでご意見を頂ければ幸いです。

こんな長い記事はもうないと思います。というかこんな記事ばかり書いていたら大正琴を弾く時間が無くなります。次は軽く、なにか大正琴を一つ紹介したいと思います。ええ、できるだけ短めに。(2023/12/19 追記)と、思っていましたが、YAMAHAの大正琴についてその種類と型番の意味を整理してみます。

2023/12/18 第1版 公開
2023/12/19 次回予告を修正
2024/01/30 痛んだ弦について、菊八重の例を追加

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