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ライターとは…船乗りのことである【創作大賞2024 エッセイ部門2024】
「ライターって記事を書くとき、文章とか文字が湧いてきたり降ってきたりするものなの?」
と、質問されることが多々あります。
これはライターに限らず、小説家や研究者、物書きを職業とする人全般に寄せられる疑問かもしれません。もしかすると限られた天才のみ、こうした能力を持つ人もいるのかな?という感じです。
しかし残念ながら私はごくごく平凡な能力値しか持たないため、この質問にははっきり「NO」とお答えしています。
文章も文字も、湧いてきませんし降ってもきません。なんなら自分から探しに行きます。この感覚は、昔読んだ「三浦しをん」さんの小説「舟を編む」に出てきました。
主人公「馬締光也」の独白だったと思いますが、下記のような文があります。
「海を渡るすべを持たない僕たちは、そこでただ、佇む。誰かに届けたい思いを、言葉を、胸の奥底にしまったまま。辞書とは、その海を渡る、一艘の舟だ」
主人公は辞書作りを仕事にしていおり、日々色々な物や事象を見て、それを言葉に落とし込むことをしていました。その作業のことを、小舟に乗って大海を彷徨いながら適した言葉を釣り上げる、というように表現していたのです。
※うろ覚えなので違っていたらすみません。
「ああ、まさしくこれだ」と読んだときに思いました。
たくさんの物や言葉に溢れた世の中だからこそ、表現するために相応しい単語を自ら探す。私はこの作業を文章を書くとき無意識に行っているんだと。ひとつひとつに多くの時間はかかりませんが、すいすいと言葉が出てくるときもあれば、全く釣れずボウズのときもある。
言葉を知ることも、書くことも大好きでしたが、妙にこの考えは私の心に刺さりました。
以来、文章を書くとき「釣りをしている」とか、相当長い案件であれば「航海している」と思うと、仕事ですら何だか楽しい気持ちになるようになりました。
ちょっとしたことで気持ちが楽になれれば、仕事に向き合う姿勢は格段に変わります。
躓いて悔しい思いをしているときこそ、解決しようとしてアンテナって出てるんですよね。実際、私自身もそういうときでした。
頭の中で考えたとおりの言葉が思い浮かばず、生み出すことが苦しかった時期です。想像ではもっともっとできているのに、現実は全くできておらず結果も出ないという悪循環でした。
私にとっての「気づき」は小説からでしたが、別に読書が絶対だと言いたいわけじゃありません。
きっかけは、人との出会いや映画鑑賞、旅行など無数に存在するはず。「なんか気になる」、「これ好きかも」という感覚を大切にしたいなぁと思いました。
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