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公用車広告⑪~もしかして献金?

 複数の市民から苦情が出ても、なぜ船橋市は不祥事を起こした企業(L・C社、LG社)の広告掲載をやめないのだろう。特に公用車広告に関するK課長のかたくなさは異常だった。

 しかし私には「もしかしたら」という思いがあった。献金(寄付)である。市もしくはK課長は、L・C社から献金を受けているから、広告掲載をやめないのではないかと。
 
 実は2020年9月に公用車広告について調べ始めた時、L・C社についても調べた。すると脱税で退き、現在は会長になっている前社長が、生まれ故郷の町に、少なくともネット記事で確認した限りでは2回、各100万円を献金していることがわかった。
 
 あくまでも善意で、記事には町長の感謝の言葉と、前社長と町長が満面の笑顔で握手する写真が載っていた(現在ネット記事は削除されている)。
 町を旅立った若者が船橋で財を成し、お世話になった故郷にお礼をした格好だ。
 
 しかしその美談の裏には、きれいごとだけではない企業としての戦略があったと私は見る。L・C社は不動産業だけでなく、ホテル業、ソーラー事業など、いくつもの事業を展開しているが、地元の新聞記者によれば、その中のソ-ラー部門が同町にある国有地の取得に動いたというのだ。ソーラーパネルを並べるための事業用地である。
 
 ご存じの方がいらっしゃるかもしれないが、国有地は民間企業に直接売却されることはない。そこでいったん町が国から国有地を取得し、それをL・C社に払い下げたのだという。
「当時の町長に話を聞けば、詳しいことがわかるんじゃないですか」
 と記者に言われたが、そこまでする気はない。
 
 ただ、L・C社が事業の地ならしのために、献金という手段を使うことがわかっただけで充分だった。

献金で市政功労表彰を受けたL・C社

 2021年1月6日、公用車に広告を出している8社の献金状況を調べようと、法務課のUさんに連絡を取った。情報公開請求をしたいと言うと、
「市はそういう文書を作っていないので、存在しない文書を請求することはできません。もし必要であれば全部署に8社からの献金状況を問い合わせますが」
 とのこと。
 
 ご好意をありがたく頂戴し、約半月後にUさんがまとめた献金リストが送られてきた。期間は平成31年4月1日から令和2年3月31日までの2年間。現金だけでなく物品のリストもふくまれていた。
 
 全部で35件。うちL・C社とLG社が34件というダントツぶりだった。このうちコロナ絡みの寄付と、「ごみ収集ステーション」「下水道施設一式」「条例に基づく公園造成のための資金(市に造成を代行してもらうための資金)」という仕事上の寄付を除くと…。
 
 やはりあった。L・C社による100万円の献金が(2020年4月)。 

 しかも同社はそれで、2020年秋に市政功労表彰を受けていた。
 なぜ? 事業の地ならしのための献金かもしれないのに? 実際に同社は市に表彰されたことをホームページでPRし、商売に利用していた。
 
 でもこれは決しておかしなことではないと今仲議員は言う。市の規定では、毎年50万円以上献金した人や法人は、自動的に表彰されるからだそうだ。それに表彰されたことを商売に利用する企業は、他にいくらでもある。
 
 そう思えば、コロナで疲弊している会社が多いなか、現金のほかにマスクや防護服なども寄付する姿勢は、素直に評価するべきだろうと思った。

「献金に左右されるなど、あってはならないことです」

 結局一覧表から怪しい点は見つからなかった。献金の窓口が財産管理課なら、献金を知ったK課長がL・C社に忖度して広告掲載を許した可能性があるが、実際の窓口は政策企画課だったからだ。
 
 しかしこの献金の名目を政策企画課に問い合わせて仰天した。電話に出た女性は、
「あ、それは財産管理課から来た話なので…。電話、回しましょうか?」
 と言ったのだ。えーーーー!
「いえ、それならけっこうです」
 慌てて電話を切ったが、胸がドキドキした。財産管理課から来た話? 
 
 さらに今仲議員の話を聞いて確信した。K課長は献金のことを知っていると。
 今仲議員がK課長に「L・C社はずいぶん献金しているみたいですね」と言うと、「そうなんですよ」とうれしそうに答えたというのである。これで私の気持ちは一気に忖度説に傾いた。
 
 数日後、L・C社の献金の領収証の写しをもらうために(情報公開請求)、政策企画課の係長と男性職員と面談した。
 
「K課長は献金のことを知っているから、不祥事を起こした企業でも広告掲載を続けているのではないですか?」
(2人で顔を見合わせ)
係長「それはないと思います。ふつうどこの会社がいくら献金したか、職員は知りませんから」
「でもK課長は知っていましたよ」
 えっという表情の後、
「証拠は?!」
 職員が厳しい口調で切り返した。
「今仲議員がK課長から聞きました」
 2人の体から力が抜けたように見えた。しかし、ややあって係長がきっぱりと言った。
「献金に左右されるなど、あってはならないことです」
 
 思わず強くうなずいた。良かった、ちゃんとした感覚の人がいて。

職員が驚いたL・C社の献金マナー

 しかし2人と話すうちに、この献金の普通でないところが色々と浮かび上がってきた。
 
 通常献金は電話または書面で申し出てもらい、振り込んでもらうという。会社の場合は法人登記の確認もするそうだ。
 
 しかしL・C社の若社長は、ある日突然政策企画課に現れ、いきなりポケットから100万円を取り出すと、「献金したい」と言ったというのだ。びっくりする職員の顔が目に浮かぶ。
 
 ちなみに社長は脱税した前社長の息子で、以前うちの町内と同社がもめた時、専務が「酒ばっか飲んで遊び歩いて、ちっとも仕事をしない」と愚痴っていた人である。
 
「ふつう、いきなり大金を持ってくるなんてことはしませんよね。もしやるなら、事前に誰かに話を通しているんじゃないですか?」
係長「そうですね…」
 
 この献金は誰の紹介によるものだったのか。
「やっぱり財産管理課ですか?」
職員「いや、秘書課って聞いていますけど」
 
 秘書課? てことは市長経由? まさか。3人は黙りこんだ。
 それでは秘書課を呼ぼうとなって、立ち会っていた法務課のUさんが電話をしてくれたが、結局誰がその話を受けたのかわからないということで、話を聞くことはできなかった。

問われる市の姿勢

 帰宅してからもずっとモヤモヤしていた。L・C社は市長とつながっているのだろうか。また市長は特別な配慮を広告掲載審査委員長であるK課長に指示したのだろうか。そんな危険な橋を渡る必要が市長にあるのだろうか。
 
 市長の政治資金収支報告書を調べたが、驚くほどきれいに企業からの献金は記載されていなかった。
「政治家は、献金の出所なんてわからないようにするもんだよ」
 と元市議会議員に言われたが、もしそうなら、一市民がこれ以上踏み込むのは難しい。それに秘書課に連絡したのは、もしかするとL・C社の単なる献金パフォーマンスに過ぎなかったかもしれない。
 
 熟慮の末、この調査はやめることにした。問わねばならないのは、献金に対する市の姿勢である。
 
「献金に左右されるなど、あってはならないことです」
 
 その言葉を胸に背筋をシャンと伸ばし、陳情書が不採択になった3月、住民監査請求の準備に入った。


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