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お客様が入店しやすい店づくり


僕の店では、2回目に来店してくれたお客様は必ず常連様とみなし、「前も来てくれましたね、ありがとうございます。」と伝え、注文とは別にサービス料理を提供している。「覚えていますよ、あなたのこと知っていますよ」をアピールしているのだ。

お客様の顔は、なんとなくの特長をつかみ意地で覚えてきた。そうした日々を繰り返すうち、サービスを出す回数が増えていき、お客様の数が増えてきたことが実感できた。

また、街で常連さんを見かけると、向こうが覚えていなくても挨拶をする。「焼鳥一力です。また店で会いましょー」てな感じで。向こうはいい迷惑かもしれないが、邪魔になりそうではなかったら必ず行くようにしている。それをすることによってお客様は、「店側から挨拶してくれるということは、次行った時も絶対覚えているはず」と思い、来店しやすくなる。

常連様に出すサービスは一度出したら一生続ける。週に3回の来店でも、1年に1回の来店でも、絶対にサービスは出すという覚悟の上で提供している。常連さんが数人仲間を連れて来店してくれた時には、「いつもありがとうございます」と言って、グループ全員にサービスを出している。そうすると、常連さんは仲間から感謝され、鼻高々。

飲食店でスタッフとお客様が仲良くなることは、ありそうであまりない。こちらから心を開き、「覚えていますよアピール」をすることは、お客様が気まずい思いをしないで入店出来る要因のひとつなのだ。その空間づくりと、入店する際の気まずさの排除は、サービスの基本である。

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スタッフと経営者のギャップ

オープンから1年間は深夜3時まで営業をしていた。それはお金もなく、知り合いも全くいない中で、少しでも多くの人に店を知ってもらうために自分に課したルールであったが、体力的にはとても辛かった。

こんなことをずっと繰り返していたら体が持たないし、もし病気になって店を休みことになってしまったら元も子もないと気づき、その頃からこのシステムから早めに脱却していかないとその先の未来はないなと考えていた。

そんな矢先、やっとフルタイム勤務希望のスタッフが来てくれた。元々は週に一度は来店してくれていた常連のお客様。あちらから「この店で働けませんか」と声をかけてくれた。

聞けば居酒屋で焼鳥を焼いているという。喉から手が出るほどフルで働いてくれるスタッフが欲しかったため、面接もなく即採用した。

彼の前職の居酒屋は、僕の店の3倍の席数でそこの焼鳥は一人で焼き店を回していると聞いていたため、これはなかなかの実力があるのではないかと思っていたのだが…。うちの店では、焼くことすらまともにできていなかった。そして入店してわずか一週間後に辞めたいと言って泣き出してしまった。

勤務時間が長いため、体力的にも精神的にもきつく僕が求めるレベルも高すぎていたことが理由だろうと思う。辞めたいと言われた時に初めて、店に人生をかけているオーナーと、雇われの身である一従業員との間にモチベーションの差がとても大きいことに気付き、「職人とはこうあるべきもの」を強要しすぎていたと反省した。

自分の今後の焼鳥職人として生きて行くスタイルと、スタッフに対する接し方の両方を考える時期が来たと感じ、開業1年以上を経過したこの時にやっとブラック企業(笑)からの脱却を決意した。

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