自分らしく
「パイドン」という名の本があります。
著者はプラトンです。
プラトンと言えば、ソクラテスの一番弟子の様な方です。
パイドンという本は、ソクラテスの死刑が執行されるまでの間に、牢獄で語り合った方々の代表者のお名前です。
ソクラテスの死刑は有名ですが、何故死刑になったのかは、私には良くわかりません。
丁度、ホリエモンやリクルートの江副さんが逮捕されたのと同じで、良くわからないというのが本当なのです。
ソクラテスの死刑理由はざっくりと表現すれば、ソクラテスを嫌いな、権力者や有名人が多かったという事になると思います。
遠慮なく、まっすぐに正論を言うところが、知識人からすれば邪魔な存在であり、相当嫌われていた様です。
時期も悪く、国もスパルタとの戦争に負けてしまい、国全体の雰囲気も最悪で、戦争中にスパルタに寝返った人物が、プラトンの弟子だった事もありと、社会情勢も裁判に影響したとも言われています。
知識人や政治家から、嫌われる条件が備わっていたのも、ソクラテスの一面です。
裁判での弁明では、相手のソフィストと呼ばれる知識人に対して、正論で真正面から論破するところから、弁明内容では圧倒的に優勢でしたが、多くの陪審員が空気を読みあい、死刑を認めてしまったそうです。
裁判は二回行われていますが、二回目も同じ事の繰り返しでした。
多くの裁判関係者がソクラテスに、とりあえず謝れば何とかするから謝罪を求められても、総てを断り、裁判を大切にするという、自分の正義を貫かれたようです。
死刑が確定した後も、死刑の執行までの間には、多くの仲間達が裁判が無茶苦茶なんだからと脱獄をお願いしても、脱獄が違法だから、「善く生きる姿」では無いと断っています。
頑固で偏屈なソクラテスと、その彼の魅力に魅かれた多くの知識人が牢獄に集い、一緒に死刑が執行されるまでの時間を惜しみながら、命などについて真剣に討論を重ねる内容の本です。
この本を読んで感じる事は、死後の世界についての考え方や、魂という存在についての捉え方や考え方などが、今の日本人と同じ様な感覚を持っていた事に驚いています。
翻訳者が日本人だからでしょうか。
それだけでは無いと思います。
人は見える物と見えない物を、分別したがる生き物なのかもしれません。
色即是空で考えれば、分けないという考え方も有りだと思いますが、意外と難しいのだと思います。
見えている物は見えますから。
ただ、見えていない物は空気の様にたくさんありますが、見えているモノを包んでくれています。
無理に分けるよりも、色即是空の様に全体を一つとして見る眼も、大切だと思います。
ソクラテスは肉体と魂と分離して、今の延長線上でそれぞれを語られていますが、私は死後の世界は今の延長線ではなく、総てが新しい未知のお楽しみでも良いと思います。
「私は、何も知らない」ソクラテスの言葉です。
どこまでも知らない世界が無限に広がっている事を知り、自分の小ささを楽しんだのもソクラテスです。
そして答えを欲しがり、答えを追い求めながら命を終わらせたのも、ソクラテスだと思います。
頑固でまっすぐな偏屈者がソクラテスだとすれば、他人から「変」とか、「おかしい」とか言われても、気にせず生きて良い様な気がします。
ソクラテス等、多くの先人が教えてくれたのは、個性的でも問題ないという、生きる姿勢かもしれません。
合掌
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