妻がHSPだと気づいた日の話
HSP(Highly Sensitive Person)というのは、すごく簡単に言えば感受性が強く、さまざまな刺激を人並み以上に感じられる人です。
これは特別な病気ではなく、気質の問題です。
5人に1人はHSP気質の人がいると言われているので、周りの職場や学校にも結構HSPの人がいるのではないでしょうか?
さて、そんなHSPですが、前回もお話しした通り私の妻もHSPです。
日常のちょっとした音や光、痛みなどにはとても敏感で、特に匂いに関しては犬並みの嗅覚を持っています(大げさ)。
人の感情にも敏感で、「○○さんが悲しんでる」となるとその人と同じくらい悲しんで、心配でたまらなくなります。
逆に誰かが怒っている時は、自分は無関係であっても息が詰まってしまって頭が痛くなったりします。
そのぶん誰かの幸せは自分のことのように一緒になって喜んでいるので、いいことも困ったこともありますね。
このように妻の性格や日常を考えれば考えるほど典型的なHSPだなあと思うのですが、反対に妻自身は自分のことをHSPだと思っていません。
なので正確に言うと、妻がHSPだと思っているのは僕だけです。
なんなら妻は自分のような人が普通だと思っているようです。
(何が普通かとかは人によるし、HSPだから何だってことはないですが、それでも自分のことを理解する助けにはなるとは思います。)
ではなぜ僕が妻のことをHSPだと思ったのか。
なぜ妻はHSPだと思っていないのか。
今日はそんなお話。
学生時代
話は僕たちが大学4回生の頃に遡ります。
僕たちは同じ大学の同じ学部で、心理学を勉強していました。
当時は付き合ってまだ1年もたっていない頃で、HSPのことなんか存在すら知らずに2人とも真面目に心理学の実験をしたり文献を読んだりしていました。
その時期は大学生らしく卒論を書いていた時期だったので、それなりに忙しく、それなりに楽しい、今振り返れば最高に充実した時期だったなあと思います。
僕たちはそれぞれ違うテーマに興味があったので、彼女の研究内容はさっぱりわかりませんでしたが。。
そんなある日、彼女が大学の授業終わりにうちに遊びに来てくれました。
他愛のない話をしていつも通りの日常だったのですが、その日は1つだけ、特別な出来事がありました。
それは、彼女が「授業の中でHSPという概念を勉強した」と話してくれたことです。
彼女が受けた授業は僕にとってはあまり興味がない内容だったのですが、僕はその「HSP」とかいう単語は初めて聞いた言葉だったので、詳しく彼女に話を聞いてみました。
すると大体以下のような内容の説明をしてくれました。
・世の中にはHSPという気質を持った人がいる
・心理学の世界でも(当時は)まだ新しい概念
・些細な刺激をとても強く感じ取ってしまう
・人の感情にも敏感
・常に人に気を遣ってしまうので気疲れしやすい
僕はこの説明を聞いて、思わず「似てるどころじゃないって!まさに一緒やん!」と彼女に興奮気味にまくし立てた記憶があります笑
でも本当にそうで、聞けば聞くほど彼女の性格とHSPの話は噛み合っていって、むしろHSPじゃない理由を探す方が難しいほどでした。
それはまるで地球が青いことを覆すことができないような、そのくらい明らかなことでした。
しかもよくよく話を聞いてみると、授業では実際のHSPのチェック項目を見せてくれ、試しに自分も回答してみたというではありませんか!
すると見事にほとんどの項目にチェックが入ったとのこと。
これでもう確定です。
彼女がHSPだとすれば今まで正直よくわからなかった彼女の考え方が、全て腑に落ちてとてもスッキリします!
、、、でも。
そんな僕の大興奮とは裏腹に、彼女はどこか困ったような、戸惑ったような顔をしています。
なぜそんな顔なのか、正直意味がわかりませんでした。
なので「なにが納得いかんの?めっちゃ当てはまってるやん」と聞いてみると、彼女は
「だって私みたいな人って普通じゃん。
質問項目も、誰にでも当てはまるものだと思うよ。」
、、、、いやいやいや、そんなことないやん。
君みたいな人が「普通じゃない」とは言わんけど、少なくとも質問項目は僕には全く当てはまらんて。
てか当てはまらん方がむしろ普通なんちゃう?
正直、僕はそう思いましたし、確か実際そう言ったと思います。
もしHSPのチェックリストを見たことがないという方は一度↓のサイトなどで見てみてもいいと思います。
これを見てみて、「自分はHSPかも」と思う人もいれば「全然違う」と思う人もいるでしょう。
でも少なくとも僕からしたらこれは彼女の言う「誰にでも当てはまる質問」ではないと思います。
結局第三者がいないこの議論は「HSPやん!」「いや違う!」の水掛け論で終始し、彼女がHSPかどうかについての結論は出ず。
後日僕は密かにHSPについて調べてみて、彼女がHSPだという確信を勝手に強めていくだけに終わりました。
現在
そんなHSPとの出会いから時は流れ現在。
妻は今でも自分はHSPであると確信してはいません。
表現は難しいですが、妻は
「自分はとてもHSP的な要素があるけど、確信はしていない。
それに仮に自分がHSPだとしてもそれが何だと言うこともない」
って感じに思ってるんじゃないでしょうか?
妻とHSPについて話すと、大抵そんな返事をします。
HSPかもしれないしHSPじゃないかもしれない。
自分がHSPだからといって何か変わるわけじゃなく、妻にとって大事なのは毎日受けるいろんな刺激から離れて、落ち着ける場所や時間を穏やかに満喫すること。
彼女からはそんな雰囲気を感じます(妻よ、間違ってたらごめん)。
まあでも、世の中そんなもんなのかな〜と思います。
学生時代は鬱病の症状について勉強したこともありますが、通常鬱病の人って自分では鬱だと気づかないんです。
いつの間にか鬱になり、鬱な自分が普通の自分なんだと信じ込んでしまってさらに症状が重くなっていく。
HSPも同じなのかもしれません。
HSPの人たちは多分生まれてからずっとある種の「生きづらさ」を抱えながら生きていることも多いですが、それが当たり前の世界しか見てきていないから、それ以外の世界があるなんてわからないのかもしれない。
それは僕も同じで、僕は僕が見ている世界が当たり前だと思って生きてきたけど、実際には妻のような世界の見え方だってある。
けどその世界は僕には理解はできても共感はできない。
そう考えたら妻の言う通り、HSPかどうかなんていう分け方も意味をなさないような気がしてきました。
だってHSPなんか関係なく、誰であっても他人の世界観を完全に共有することはできないですからね。
でも、でも。
僕は妻がHSPだと分かってからいろんな本やHPを読んで妻を理解しようとしたし、出会ってから何年も経った今は妻の気持ちがとてもよく理解できるようになりました。
妻の言う通り本当はHSPではないのかもしれないけど、HSPについて勉強した時間は無意味じゃなかったと思います。
それに「自分はHSPなんだ」とわかることで自分を受け入れられるようになる人は多いです。
繊細なパートナーに「HSPっていう概念があってさ」とか紹介してみると、意外と自分のことを理解して楽になってくれるかもしれません。
人によってはHSP気質がとても強く、それによって「生きづらさ」が「苦しみ」になり、時には鬱につながることがあります。
そうならないように、少しでも穏やかに過ごしてもらえるように準備しておく必要はあると思います。
HSPのパートナーにとって世界で一番落ち着ける場所は、あなたの隣なんですから。
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