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夕木春央/十戒 読んだ感想

※この記事には「十戒」ならびに「方舟」のネタバレが大いに含まれます。


殺人事件が起こった。犯人はこの中にいる。
舞台は孤島だけれど天気は良好、電波も届くし携帯もある。
それなのに、誰も通報しない。島を出ようともしない。
犯人を見つけてはならない。

この小説は果たしてミステリー小説なのだろうか?
こんな気持ちで読み始めたと思う。
ミステリーか否かとか、誰が死ぬとか、犯人は誰かとか、この小説の面白いところはそんなところには無かった……!!!!!

夕木春央さんの前作「方舟」をまだ読んでいない人は今すぐ引き返してください。
方舟を読んだ人にだけ衝撃が走るラスト2ページ。この2ページのためだけにこの小説は存在していると言っても過言ではないと思う。

当然私はこの十戒が方舟の作者が書いたものだと知って読み始めたわけだけれども、十戒が方舟の続編であることは全く知らなかった。だから、まさか方舟の登場人物が出てくるとは夢にも思っていなかった。

アホな私は読了後、ネタバレページを見て初めて気が付いたのだった。

麻衣って、あの麻衣!!!????????

方舟を読んだのが半年以上前なので許してほしい。
たしかに「さよなら」ってフレーズに聞き覚えはあったのだが、別作品の「犯人」が続投するなんてこれっぽっちも思いもしなかったんだから!!!

綾川さんが犯人だろうというのは、おそらく多くの読者が思い至ると思う。あまりにも怪しい、怪しすぎるから。
けど、読者が綾川を怪しむことまで織り込み済みで、方舟を読んでいる読者にのみラスト2ページで犯人=綾川=麻衣が明らかになるという仕組み。
まさか方舟読んでいるにも関わらず全く気付かないアホがいるとは作者様も予想外だったに違いありません……。

今回は感想というか、このただ1点のネタバレについて声を大にして叫びたかっただけなので、ストーリーの解説などはしないんですが。

綾川さんが犯人だと分かったとき、正直「こんなに強かな女がいるか」って思ったりもしたんですが、麻衣だとわかったとたんに「麻衣ならやるわ」ってなるのが面白いんですよね~方舟もそうだったのですが、読み終わった後もずっと味がする。いくらでも噛み締めてる。
夫は行方不明、ねぇ……ふ~~~~~~~~ん?ってなってます。

これってたぶん、十戒が方舟の続編だって思いながら読むと綾川=麻衣って察しが付いちゃう人は付いちゃうと思うんですよね、だからたぶん、読んだ人から続編って情報が洩れる事って無いんですよ。
表紙の雰囲気もタイトルも似てはいるけど、同じ著者の作品ならありがちですしね。
だからこそこれ、人に勧めるのが難しくないですか?「方舟と十戒読んで」って言ったとして、「方舟から読んで」って言ったら続編なのかな?ってなりそうだし。方舟だけ読んでる人に対して十戒のどこがどう面白いか伝えようとしてもどう転んでもネタバレ!!!ってなる。

いや~それにしても麻衣ちゃんがちゃんと第二の人生を歩んでいて、順調に殺人記録を延ばしていることに嬉しささえ感じますね。

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