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冬の庭を眺め、部屋の中で牧野富太郎の図鑑を見る/一日一微発見361

牧野富太郎が94才の時に書いた小文「野外の雑草」にも、彼がいつも口癖のように吟んでいたー首が顔を出している。それは

「朝夕に草木を吾れの友とせば
こころ淋しき折節もなし」

である。
牧野は自らを「植物の愛人」と自称し、ただひたすらに植物が好きで、それを追って日本全国を踏破し、植物を収集・観察しただけでなく、それを図譜として描き続けて天寿(94才)をまっとうした。彼が生涯に写生した植物図は約1700点と言われている。

僕の家は鉱物業(コンクリートやフッ素などの原材料を登堀・精製する)が家業であったせいか、鉱物図鑑などの本があったが、その中にまじって北隆館が出した『牧野日本植物図鑑』があり、子どものころは飽かず毎日見ものだ。

その牧野の図鑑本は、うす緑色の装丁で、子どもにはレンガのかたまりぐらいの大きさに思えた。
中はすべてモノクロで、植物について細密に描かれた絵が収められていた。

僕は植物の葉や花を採ってきてはその本のページに挟んで、押し葉・押し花にしていたが、その習慣はその後もまるで変わらない(僕が持っている写真集にはたくさんの植物がはさまっているのである)。

その当時の僕のバイブルは小説家・龍潭寺雄の『原色サボテン図鑑』と、この牧野の『牧野日本植物図鑑』であった。

去年の3月にアトリエ兼ガーデンの「仮の家」が三ヶ日に出来てからというもの、庭の形を大いそぎで作り、庭仕事が始まった。子どもごころの復活である。

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