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日本の美術をアップデートする⑨棟方志功リターンズ/一日一微発見413

竹橋の東京国立近代美術館は予想をこえて、たくさんの人々でごったがえしていた。
平日である。僕が美術館についたのは開館して30分ほどの頃だったがすでに会場は満員で、僕と同時に入った海外から来たらしいカップルは、「クレイジー」と驚きの声でつぶやいていた。

棟方志功の生誕120年を記して、TVの特番やドラマでもあったのだろうか。僕はなにせTVも見ないし新聞もとらないから、その理由がわからない。
ただはっきりしているのは、来館者の90%以上は平均60才をこえた老人たちということだ。マチスやホックニーの展覧会とはあきらかに異なる人々が、棟方展に続々と集まってくるのを見ているのは奇妙な気持ちだった。

展覧会は「メイキング・ムナカタ・シコウ」と名うたれているが、彼の出自から始まり、人生を追うように構成された、極めてオーソドックスなもの。以前、同じ東近美で見た「熊谷守一」展の方が、「再解釈」の視点が打ち出されていた。今回は、それもあまり感じられない、ごく穏当なキュレーションである。

棟方志功は1975年に72才の年齢で死んだ。
晩年においてもエネルギッシュにふるまっていた姿からすれば、案外早い死であったのだなとの印象をもつ。

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