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旅と文のこと。『坂本図書』にみちびかれて石川淳へ/一日一微発見433

坂本龍一さんの『坂本図書』は、不思議な導きがある本で、まとめて読んだあとも、ふと気になってひろい読みしてしまう。それは「書評集」とか、目的があって書かれた(語られた)のではなくて、日々の坂本さんの「精神の運動」が、本や映画の話を通して記述されたフラグメントだからである。
一本づつの原稿のならびは、偶発的なものであり、断続的で、ワープがある。

今日もひろい読みのために本を開けた。
最初から二番目に収録されているエッセイがジャック・デリダの『法の力』だ。これは2018年のトランプの選挙選ののタイミングでデリダを再読していて、その伏線にはベンヤミンの『暴力批判論』をどう読むかということもあった。
暴力と法の関係を坂本さんは考えようとしたのである。

そして2024年、トランプが法の裁きを無視して大統領選に向かって「再演」が行なわれようとしている現在において、坂本さんが生きていたら、デリダを当然、再考しただろうと思う。

「ジャック・デリダの"脱構築”は、要するに"革命”のことだと、僕は思う」と、坂本さんの文章が、ジャンプして突然終わっているのは、ひどく印象的だ。

法に対する革命とは何だろうか? 
暴力に対する革命とは何だろうか?

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2,024字

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