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THE FIRST SLAM DUNKの感想(ネタバレあり)

観てきました。年末の12月30日のレイトショー。ガラガラかと思ったら、めちゃくちゃ人いました。以下ネタバレあり。


主人公

上映開始の時間になり、劇場の入り口でチケットを見せると、映画館のお兄さんが入場特典をくれた。それは宮城リョータのイラストが書かれたカードだった。これをもらったときに「湘北の5人の中からランダムで1人もらえるのかー」と思っていたくらい、ぼくは情報をシャットアウトしていた。しかしながら映画が始まって数分でぼくは思い知った。これは宮城リョータの物語だった。

2つの時間軸

この映画は2つの時間軸で物語が進んでいく。1つは山王工業との試合を描いた"現在"であり、そしてもう1つは湘北のPG宮城リョータの"過去"の物語だ。この2つのストーリーで言えば、山王工業戦は漫画本編でも出てくる既出のストーリーに対し、宮城リョータの過去はこの映画で初めて知る新要素だった。本来であれば、漫画原作の映画化において、"初めて明かされる新要素"にこそ映画の価値がある。しかし、この「宮城の過去」というオリジナルストーリーも感動的な話ではあったものの、ぼくが本質的に感動を覚えたのは、知っていたはずの山王工業戦のほうだった

とんでもないものを目撃している

映画が始まって数分、宮城の少年時代のストーリーから暗転すると、舞台はいきなり湘北対山王工業戦の試合途中に切り替わる。そして描かれるバスケットボールの攻防。時間にしてそれも数分だったと思うが、観ている最中でぼくはこう感じていた。「これはとんでもないものを目撃している」。

スラムダンクの山王工業戦と言えば、物語のクライマックス。漫画を手元にもっていないぼくでも、この試合だけは人生で5回以上は読み返しているほどの名勝負だ。よって、ある程度試合の内容は把握しているし、これから何が起こるかもだいたい覚えていたのだが、目の前で上映されているのは、文字通りバスケットボールの映像化。なによりもぼくが知っている「アイツらが動いている」という部分に強く感動させられた。だからこそ、これから起こることを知っている、あの終盤までの数々のシーンのことを想像し、ぼくは映画序盤で胸の高鳴りを抑えることができなかった。

絵が動くということ

この映画を観て、変な話だが「漫画は絵だったんだな」と思ってしまった。漫画は複数の絵を順番に見ることで、読者がその間の動きを想像して補完している。そんなことを今まで感じたことはなかったが、今回の映画は原作の井上雄彦が相当にこだわって、アニメーションの作成に注文をつけたと聞く。その「動きの再現性」をまざまざと見せつけられたことにより、つまりはその「絵と絵の間」をこれでもかと現実的に描写させられたことにより、絵と絵の間にあったはずの「描かれていない部分」を改めて意識させられてしまった。この映画は、「漫画を拡張させる」のではなく、「漫画で描ききれない部分を補完」するという方向に全ての力が注がれている。それにより、ぼくが「知っていたはずのあの試合」を今まで以上に感動するものへと変えてしまった。ぼくは思った。これが「絵が動くということ」なんだなと。

まとめ

改めて、これは凄まじい映画だった。同時期にはアバターの最新作が上映されているが、このTHE FIRST SLAM DUNKも「映像美」という意味では引けをとっていないと思う(アバター観てないけど)。それはあのぼくらが知っているスラムダンクに対して、「スラムダンクを動かす」ということを完全に成功させており、もっと言えば、俳優は桜木花道を演じられても桜木花道にはなれないことを考えれば、「実写より実写だった」と言えると思う。

個人的にはミッチーが3Pを決めるシーンで嗚咽が出るくらい泣いてしまった。今回の映画からすれば物語の中心人物ではないミッチーだが、やはりそれもあの日読んでいたスラムダンクを、アニメにより補完して再現したことが大きな感動につながったと感じる。漫画全巻欲しくなった。

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