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#フィクション

短編小説/そんな日

短編小説/そんな日

 メレに憧れていた。なぜならメレは認めない…たとえばメレが駅のホームで鼻血を垂らしていたとして、それでもメレはこころのねじくれを認めない。悲しまない。その感情は認めたくない。受け入れたくない。彼氏に実は四股されていたと知った夜も、メレはひとりで踊る。もちろん泥酔、床に転がるウイスキーボトルを踏んで転げて、メレは忌々しいそのウイスキーボトルにエンドオブザワールドディライト(ヴォネガットの猫のゆりかご

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空席(短編小説)

 電車に乗る。歩き疲れているから座りたい。
 空いている席——ある。ひとつだけ。でもそこには幽霊が座っているかもしれないと考える。
 昔、聞いたことがある。
「どこにでも、時々ぽっかりとひとつだけ席が空いていることがあるでしょう? そこにはね、幽霊が座っているんだよ。だから誰も近寄らないの」
 とアキちゃんがだれかに言っていた。
 今もそんなことを言ったりするのかなあ?と、電車の中でぽっかり空いた

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