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31日後に新刊を出す植本一子(2024/10/31)

朝一で池袋に『CURE』を観に行こうかと思っていたけれど、一緒に行こうとしていた玉ちゃん寝過ごし&こんな天気の良い日にあの映画か……と思い、予定を変えて一人で清澄白河へ。東京都現代美術館で高橋龍太郎コレクション展。7月にO JUNさんと焼肉に行った際にチケットをもらったのだ。O JUNさんが石田さんの本からインスパイアされて描いた絵『美しき天然』が飾られていて、こうやって展覧会で観るのは3回目だけど、とにかくでかくて毎回驚く。一応、石田さんのお母さんがモデルということになっているので、生身では会ったことがないお母さんに、見上げながらご挨拶、という気分。絵の中のお母さんは朗らかに歩いている、ように見える。不穏なシーンではあるのだけど(ECD著『他人の始まり 因果の終わり』参照。絶版なので見つけたら買い、もしくは図書館へ)不思議と明るい。知り合いの作品もいくつかあり、キャプションも丁寧でかなり見応えのある展覧会。中でも、初めて知った千葉和成さんという方の作品が凄まじく、魂を抜かれるような気概を感じた。千葉ダンテさんのバイオグラフィーを読むと、もう一度作品が見たくなってくる。
千葉和成「ダンテ『神曲』現代解釈集」

高橋龍太郎といえばテレフォン人生相談の回答者という印象が強い(私だけではないはず)のだけど、年表に「ここまでの美術収集に使った金額が3億」みたいなことが何歳かの時点で書いてあり、アーティストや美術シーンを支えようとする姿勢と、精神科医としての人生相談の回答の柔らかな物腰が重なって、一礼、という気持ちに。

ランチが終わるくらいの時間に入ったフォーの店はガラガラで、友達でライターの綿貫くんがおすすめしていたバインミーとフォーのセットを食べる。食べているうちに隣のテーブルにもお客さんが座り、観光で日本に来ているらしい若いカップル。どこの国の言葉だろう、と聞き耳を立てながら牛肉のフォーをすすっていると、男性が椅子からお尻を軽く半分あげて、ブッ!と思いっきりおならをした。そして二人は何事もなかったかのようにフォーを黙々と食べている。一瞬、ここは彼の家か(もしくはわたしのことが見えていないのか)と錯覚したけれど、これがカルチャーショックか、と清々しくさえあった。

綿貫くんはデザートも食べたと言っていたけれど、おならの混乱でそんな気分になれず、店を出てまっすぐ駅に向かう。途中、スーパーの前で焼き芋が売られているのに気づいて、吸い込まれるようにそちらへ歩いていき、何も考えずに一本手に取り買って帰る。電車に乗っている時に、おならアルゴリズムが自分の中に発動していることに気づいてしまう。

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植本一子
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