いちこ

最近〝140字の小説〟に興味を持ちました。実は小説自体にはあまり興味がなく、好んで読む…

いちこ

最近〝140字の小説〟に興味を持ちました。実は小説自体にはあまり興味がなく、好んで読む事はないのですが、書く事が大好きなので、たった140文字の中に起承転結を入れられるのか…?とチャレンジ精神が湧いてきた訳です。とりあえず、書きたいように書いてみて後の事は後で考える事にしました。

最近の記事

ありがとう

「ありがとう」が口癖の人がいた 久しぶりに見かけて声をかけたら 声をかけてくれて「ありがとう」 当然の気づかいを言葉にしても 「ありがとう」 偶然会えたのはご縁が切れてないのかなと言えば そう思ってくれて「ありがとう」 それ、いらない たくさんの〝ありがとう〟より 目覚めた時の〝おはよう〟を返して

    • 片付ける

      部屋を片付けようと思った 収納がやたらと多いワンルーム 収納が多いのがありがたいと思い決めたのが間違い 何の気なしに放り込んで 物が溜まっていく一方 珈琲を入れ 部屋のまん中に座り 手順を考えてみる ベッドサイドの物をあっちへ あっちの物をこの棚へ この棚を空けるにはこれを出して 出した物を… …無理だ

      • 甘いミルクティー

        紅茶がすき いつもストレートで飲みすぎて 胃が痛くなるから ミルクと砂糖がしっかり入ったミルクティーを 時々飲む さっき 小さなボトルに温かいミルクティーを入れた ボトルの口が狭いので香りが ぷわーんと一気に鼻を通り抜けた ん? 嗅ぎ覚えのある匂い あ、 愛犬・銀のにおいだ …………いいんだか悪いんだか…

        • 思い出すこと 忘れたいこと

          困ったような表情が好き 目があっち行ってこっち行って 笑ったらキラキラ光って こんな出だしの詩を高校生の時に書いた その先が思い出せないけど ここまでは鮮明に覚えてる いつもカバンに入れていた小さなクロッキー帳に コロコロした丸文字で書いてた そのキラキラの思い出の結末は忘れた ただただ愛しかった

        ありがとう

          ことり

          あかいとり ことり なぜなぜあかい あかいみをたべた この歌を母と手を繋ぎ歌いながら歩いた 今、目の前を歩く母子が歌いながら歩く姿が 遠い記憶と重なる ふいに歌声が途絶えて こどもが母の手を振り払い走り出す 「パパ!」 大きな胸に飛び込むこども 受け止める父 見守る母 ただそれだけの事 たったそれだけの事

          寄り道

          いつも授業開始時間より早めに出てカフェに寄る 「いいな、そういうの」と後輩男子が言う 「寄り道する人、かっこいい」 ある日いつも通り寄り道の店に入る 窓際の席に後輩男子がいた 顔を上げ目を丸くして 「寄り道の店、ここだったんですか?」と 「そう。だけど違う」 「寄り道じゃなくなるかも。また来て」

          ありがちな話

          深夜の居酒屋で文庫本読みながら突っ伏して寝てる こんな奴初めて見た 店長が自分ちのカギを渡してた 店長の女? 嫁さんは産後で実家に帰ってるはず ありがちなシチュエーション いきなり起きて顔を上げた女と目が合ってしまった 手招きされて恐る恐る行った俺に「可愛いね」 しどろもどろになる俺 ありがちか…

          ありがちな話

          寝落ち

          140文字の小説って難しい。 今夜も銀との散歩の時に浮かんだネタを、 布団に入ってから書いてみる。 いつの間にか寝落ち… 夢の中でスラスラと書き始める。 気持ちがポッと温かくなるお話。 でもいつの間にか寝落ち… その眠りの中でも書き始める。 スラスラ スラスラ… ハッと目覚めた目の前には白紙の画面

          失せ物

          「よく探したのか?」 車の下を覗きながら彼が言う 彼からもらった指輪を失くしてしまった 高価な物ではなかったけど気に入っていた ご縁のない人からの贈物は失くしたりする …なんて聞いた事があるけど そんな事は信じたくなかった でもそれから数ヶ月後 彼がサングラスを失くした 私が選んで贈った物 いやだ…

          高齢犬

          首を項垂れのっしのっしとやって来る高齢犬 「今朝も会えたね」 大型のももちゃんに小型の銀が必死にじゃれる ももちゃんを連れているのは高齢の女性と娘さん いつも仲良く談笑しながらゆっくりと歩いている …ある朝 のっしのっしももちゃんと娘さん 「お母様はお休みですか?」 「ももに先に行ってるねって」

          階段

          子供の頃よく同じ夢をみていた 階段を降りて行く私 長い長い階段で 降りる速さがどんどん速くなっていく 右足、左足、右足、左足 右、左、右、左… 足も気持ちもついていけないぐらいに どんどん速くなっていく あ、あ、あーーーー!!!と落ちていき目が覚める …あの時 階段の踊り場で私の背中を押したのは誰?

          夜の踏切

          仕事帰りの雨は最悪な気分になる 窓の外が見えにくくなったバスに揺られる 路面電車の遮断機が降りる 停まったバスの曇ったガラス窓に にじんで浮かぶ赤いランプ その射るような赤い光に心ごと持っていかれる 言ってはいけない 行ってはいけない あなただけが悪い訳じゃない 逝ってはいけない 死では何も償えない

          夜の踏切

          横恋慕

          ゼミが一緒の友の旦那と寝た 学生結婚をしたふたり 機会や誘惑だらけの学生時代に一緒になるなんて ばか… 学校近く 人混みの中から彼がズームアップされる 近づいて来る彼 やんわりと気がついたみたい 彼しか見えなくなって歩を緩める 口元の笑みが見えるくらいになった時 傍らの彼女が軽く手を振ってきた …ばか

          銀と散歩していると スーパーの裏手からお惣菜を揚げる匂いがした 私のお弁当を作る母の後ろ姿と キッチンの匂いを思い出す 学生カバンとお弁当を持って家を出る私 後ろでなんやかやと声をかける母 もうとっくにあの頃の母の歳を越えた 立ち止まった私を小首を傾げ見上げる銀が ワン!と吠える 行くよ……行こう