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めんどくさがりとりんごの話



最近、りんごを食べるようになった。

実家暮らしの時はたまに食べていたりんご、一人暮らしになってからは全く食べていない。
理由は以下のとおり。

1.包丁で皮をむくのが面倒
2.果物は高い
3.1、2の上で買うほどの好きがない


2の高いはともかくとして、1は本当に本当に面倒で、包丁で皮をむく果物は一切買ってない。食べる果物といえばもっぱらバナナと、冬の間はみかん。包丁の皮むき、やってみたこともあったけどガタガタで、食べられるところをいっぱい削ってしまった。お母さんみたいに綺麗にできなくて、見事に挫折した。




私の彼はりんごが好きで、家に持ってきたことがある。
便通にもいいんだよと教えてくれた。皮むき苦手なんだよね、とぼやいていると、俺がやるから大丈夫だよと言って、にこにこと皮をむき始めた。ずいぶん前に安くて買った包丁のセットに、ただついてきただけの果物ナイフが、ようやく日の目を浴びた瞬間である。


皮をむきながら、俺もお母さんの見よう見真似だし、あんまり奇麗じゃないんだけどねと話す彼。先っぽに行くほど切れやすくて危ないから、包丁の根本の部分を使って、こうしてさと種の部分を切る彼。
それを隣で見ながら、すごいねえ、どんどんむけていくねえ、器用だねえと言っていると、彼がますますにこにこして、じゃあこれ食べていいよと、むきたてのりんごを差し出してくれた。



くし形に切られたりんごは、皮も種も器用にとられていて、お母さんがむいてくれたりんごにそっくりだった。お母さんは皮を剥かないから、ちょっとお着換えした感じだ。



シャクシャクという食感。甘味があって、みずみずしい。少しだけある酸味も、透きとおって私に染み渡っていく。
久しぶりに食べたなあと思った。懐かしい味がした。



どうやらりんごアレルギーなのか、口腔アレルギー症候群なのか、りんごを一玉食べると、喉の奥がむずむずとかゆくなった。
せっかくむいてくれた貴重なりんごなのに、体が思うように反応してくれない。何とももどかしい。だけど、アップルパイを食べても平気なことをふと思い出す。
加熱したりんごか、もしくは少しだけならそこまで影響はなさそうだ。




まだ彼には、多く食べるとかゆくなることは伝えていない。
言ったら、すごく気を遣ってくれそうな予感がするし、きっと当たる。
だけど、これから長く付き合いたいし、軽い雰囲気で言ってみようかな。加熱したら平気だし、アップルパイなんて焼いたことないけど、少しだけ頑張って焼いてみようかなと考えている。私も彼もおいしく食べれたら、すごく嬉しいし幸せだから、頑張れる。


りんごの皮むきがこんなにも面倒で、5年以上買ってなかった。それよりも明らかに面倒なアップルパイに挑戦してみる気になっているのだから、彼がいると私も別人になれることの証だと思う。




私も一皮むけたかな、なんて。

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