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『ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか』書評 「男らしさ」の何が問題なのか
この本は、タイトルの通り「男らしさ」について考察した本だ。大きく分けて、2つのことが書かれている。
一つは、「男らしさ」や「女らしさ」が生物学的なものや生まれながらのものではなく、社会的、文化的に作られた概念であるということ。
もう一つは、その「男らしさ」が、問題がある概念で、それによって苦しんでいる人たちが男女双方にたくさんいるということ。
その問題のある「男らしさ」という概念が、この本では「マン・ボックス」という名前で呼ばれている。
「マン・ボックス」は、教育やスポーツ、メディアを通じてどのようにして形成されていくか、この本の中では詳細に描いている。
「マン・ボックス」に因われた少年たちは、人に対して支配的・暴力的になる。同性愛者を侮蔑し、感情を表に出すことを恥と思い、他人の感情を無視して強欲になることが偉いと思う。また、女性に対してはプレイボーイであることがカッコいいと思うようになる。
このことは、多くの女性を傷つけていると同時に、男性にとっても「生きづらさ」を生み出すものになっている。
例えば、弱音を吐いてはいけないという価値観があるので、何か困難なことがあっても人に相談できない。また、人に優しくすることも「男らしさ」から外れるため、それも見下される対象になる。「男らしさ」は人を孤独に追いやり、その男らしさに見合わない少年たちの自尊心を削っていく。
この本では、そのマン・ボックスをどのように克服していくか、その一例が描かれている。
アメリカのとある教育プログラムでは、ジェンダー的な観点から子どもたちに自己表現の方法を教える。
そこでは、同性愛者を侮蔑することは差別であるし、自分の思ったことや嫌なことを表現していいし、性について語ることは恥ずかしいことではない、とされる。
そこで、子どもたちは「男らしさ」ではなく、より自分に見合ったそれぞれの「自分らしさ」を身につけていくのである。
僕自身この「男らしさ」に関しては批判的な立場を取る人間の一人だ。「toxic masculinity(有害な男性性)」という言葉もあるが、この世の中の多くの暴力や差別が、実はこの「有害な男性性」の元に起こっているのではないかと思っている。
人に対して支配的、冷笑的で侮蔑的な態度を取る人も、おそれくこの「toxic masculinity」に因われているのだろう。
この「toxic masculinity」「有害な男性性」という言葉が、もっと広がっていってほしい。
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