碇ゲンドウという「美しい少年」の物語 エヴァンゲリオンと宇多田ヒカル論
シンエヴァEDの『One Last Kiss』で歌われた尊さ
シン・エヴァンゲリオンの主題歌『One Last Kiss』。エンディングで流れてきた時に、その曲の美しさに戦慄を覚えました。
そして、この曲が何を歌った曲か、瞬時に理解しました。
この曲は大切な人に向けて、愛する気持ちを歌った曲。エヴァンゲリオンの作中では、誰が誰のことを想っていたでしょうか。そして、その中で最も深い愛を持っていた人物とは…。
そう。これはゲンドウの気持ちを歌った曲。碇ゲンドウが、彼の前からいなくなった妻、ユイに対する想いを歌った歌でしょう。
彼は物語の中で、シンジに父親としての役割を果たさず、自分勝手で大人になれないのは、むしろ彼の方ではないかと視聴者にも思われていた碇ゲンドウ。
そんな碇ゲンドウという人物の中の「尊さ」にライトを当てたのが、この曲なのです。
Beautiful Worldの主人公は碇ゲンドウ
『One Last Kiss』が碇ゲンドウについて歌った曲だとすると、新劇場版の1作目から主題歌になっていた『Beautiful Wor;ld』。この曲も彼について歌った曲であることがわかります。
このフレーズもまさに、ゲンドウのユイに対する想いを綴ったものでしょう。
私はシンエヴァ観るまで、Beautifol Worldがなぜエヴァの主題歌なのか全然わからなかったのですが、シンエヴァを観てようやく気付きました。
碇ゲンドウの美しさに気付いた宇多田ヒカル
この曲には、このようなフレーズがあります。
このフレーズの威力も凄まじいものがあると思います。
つまり宇多田ヒカルは碇ゲンドウのことを「Beautiful Boy」って言ったのです。
そして、その美しさに、彼自身はまだ気付いていないと。
これは碇ゲンドウが、自分の美しさに気付いていないと同時に、視聴者もゲンドウの美しさに気付いていないという意味にも解釈できると思います。
息子に対して父親としての役割を果たさない。自分のエゴのために周囲や世界を振り回す人物。
それが一般的な見解で、誰も碇ゲンドウが「美しい」なんてことに、気付いていなかったのではないでしょうか。しかし、宇多田ヒカルは彼のことを「美しい」と言ったのです。
慧眼です。
宇多田ヒカルは、エヴァンゲリオンという物語を、ユイという一人の女性を愛し求める男の物語として解釈し、新劇場版の主題歌を作ったのです。
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