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自分の不安は可愛くない



たとえば、小さな子供が「遠足の日に雨が降ったらどうしよう」と心配していたとする。

だがニュースで見た天気予報は晴れ。それも降水確率0%の稀にみる快晴だ。

それを伝えたらきっと、彼/彼女はぷくぷくとした顔をほころばせて喜んでくれるだろう。


たとえば、ショッピング中に母親が「エアコンの電源切ってきたっけ」と心配していたとする。

だが母は間違いなくリモコンのボタンを押していたし、なんならわたしも最後に確認した。それを伝えたらきっと、母は目じりにしわを寄せてほっとした表情を浮かべるだろう。


想像するだけでも、可愛らしい。



***



誰かの小さな不安は、可愛らしい。

誤解のないように正しく言えば、誰かの小さな不安が取り除かれたときの、あの心底安心した無邪気な表情。可愛らしいなぁと思う。

かくいう自分もそれなりに重度の心配性だからそんなふうに感じるのだと思う。不安の種がぽこっと芽をだしたときの、あの言いようもないもやもや感、迷子の子供のような心もとなさにはいくつもの覚えがある。

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