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月刊 撚り糸

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毎月7日にテーマに沿った小説を公開します。また同テーマにて創作を募集し、一緒に楽しめたらと思っています。3月のテーマは『その角を曲がったところに』です。
運営しているクリエイター

#掌編

お先にどうぞ  #月刊撚り糸 第804話・4.7

「お先にどうぞ」「ああ、これはどうも」  今日も私は、先に急ごうという人を先に譲った。私…

その角を曲がったところに #月刊撚り糸 第773話・3.7

「その角を曲がったところに」ここで電話が切れた。「その角を曲がったところにって何なんだ?…

窓は開けたままにしておいて  #月刊撚り糸 第745話・2.7

「窓は開けたままにしておいて」と、隣の席からの強めの声が聞こえた。列車に乗り、窓際の座席…

お元気ですか #月刊撚り糸 第714話・1.07

「お元気ですか?」と、夜遅くに笑顔で俺の家にやってきたのは、大学生の甥っ子だ。「ああ、誠…

ずっと前から知っていました (#月刊撚り糸 & #2021クリスマスアドベントカレンダ…

「ずっと前から知っていました。今日ははっきり言います。大輔君、あなたがサンタクロースだっ…

もしも夢が叶わないなら? #月刊撚り糸   第654話・11.7

「そうか今日は立冬か、だからこんなに暗くなるのが早いのね」園代は頭の中でつぶやきながら町…

明後日は雨だって #月刊撚り糸 第623話・10.7

「明後日は雨だって」窓を見ながらつぶやく妻の声を聞いた夫は、思わずベッドから起き上がった。 「それは本当か? 明後日が雨と言うのは」妻は小さくうなづく。「ええ、先ほど天気予報で確認しました。明日までは晴れるそうだけど、明後日は......」  妻の声のトーンが低くなる。夫は窓から空を見つめながらつぶやく。「信じられん、こんなに雲ひとつないというのに。本当に48時間以内に雨が降ると言うのか!」対照的に夫の声は大きくなった。  夫が見つめる窓の外、雲ひとつない青空が広がっている

見たことも聞いたこともないよ #月刊撚り糸  第593話・9.7

「見たことも聞いたこともないよ。白露(はくろ)なんて」  外では秋の虫が鳴き始めた夜のひ…

ちょっとコンビニ行ってくる #月刊撚り糸 第562話・8.7

「ちょっとコンビニ行ってくる」「あ、洋平、私も行く」 コンビニに向かおうとする酒田洋平に…

知り合いが言ってたんだけどさ #月刊撚り糸 第531話・7.7

 「知り合いが言ってたんだけどさ、七夕の今日にぴったりなもの注文しておいたの」「素敵なも…

花を買って帰ろう

「あ、花を売っているわ。買って帰ろうかしら」黒の上下のウォーキングウェア着用し、日課とな…

夜分遅くにすみません #月刊撚り糸

「伯父さん、夜分遅くにすみません」黒縁眼鏡姿の試水輝夢が、暖簾のかからない閉店中の店のド…

それがあなたの本音なら  #月刊撚り糸

「ちがうんだよ愛桜。そういう言うつもりではなくてさ」 「それが桜雅君の本音なら仕方がない…

気にしないのが一番だから #月刊撚り糸

「やっぱりここまで来てよかった」美鈴は日が昇ったばかりの海岸で、波打ち際まで来て、静かに遠くを眺めている。  そしてここ数年のことを頭の中で振り返っていた。 ーーーー  5年前、ちょうど大学生だった私が就職活動中のこと。就職先が決まらずに悩んでいた日々。夏の暑いときだったから、途中で太陽の日差しに勝てなくて、目の前のカフェに立ち寄って少し休憩。そのときに私を呼ぶ声がした。「久しぶり。み、美鈴ちゃんね」私が振り返ると涼子先輩がそこにいる。先輩は高校の写真部での2年先輩。 「