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車窓から~冒頭3行続き~

ここはどこだろう?
初めて見る車窓の景色に見とれていたが
身体を預けていたはずの肩がない

★★ここから続きです★★

彼とはもう2年の付き合いになる。
付かず離れずの心地よい距離感で
居心地のいい人だけど頻繁に会うわけでなく
お互いの気持ちが掴めないまま
月日だけ経っていった。

そんなある日
「ダム見に行かない?」とメールが入った
「いつ?どこに?」簡単な返信は入れたが
しばらく経っても、そのあとが来ない。
いつもの気紛れと放置していたら

「来週の土曜日、場所はこっちで決める」
わたしは気楽な一人暮らしだし、
「了解」とだけ返信すると「泊まりでもいいよね」って…どうしよう…そんなの初めてだ。

旅行なんて何年も行っていない
旅先で足りない!と慌てなくて済むようにと
あれこれ詰めているうちに
こんなに荷物持って家出?とか張り切りすぎと笑われそうで、バッグに出したり入れたりしながらほとんど眠れずに出発の朝を迎えた。

新幹線は冷房がよく効いて寒い、羽織る物を取ろうとしていたら
寒いの?と彼が聞く
うん、ちょっとね。バッグにカーディガン入ってるからと言うと
ふいに肩を抱かれて
暖めようか?といたずらっ子のように笑う
その笑顔、好きだわと口には出さずに
もたれかかるとホッとしてそのまま眠ったようだ。

さて彼はどこに行って、
ここはどこなんだ?
もしかしてこれまでの事は夢?
一向に席に戻らない彼を気にしていると
メール受信の画面に
「お寝坊さん、ターミナル駅で待ってるからUターンしておいで」

うそ!なんで起こしてくれなかったのよと
恨み言のひとつも言いたいけど、間もなく次の駅に到着するというアナウンス
棚から荷物下ろさなきゃとあたふたしていると荷物がない…。
二度目のパニックだ
「怒って帰ろうとしてもむだ。荷物は僕の手にある」
こっちの考えを見透かすようにメールが入っていた。
元より彼の荷物はリュックだけ、わたしのボストンバッグを持っていても不審に思う人もいない、観念してUターンすると
にこにこして彼が待っていた。

ここからは車で行こうと当初の予定を変更してレンタカーのハンドルを握る彼

ごめんね、すっかり意気消沈したわたしに
旅を英語でtravelって言うでしょ、語源はtroubleらしいよ、こんなのちょっとしたアクシデント。それに車だから好きに回れるし
今日は笑って過ごそうや、なんて明るく笑っていつもとは違う顔を見せてくる。

軽めの昼食を済ませて
ガイドブックとナビを頼りに
足湯に並んで浸かり、パフェを食べ
ちょっとだけわたしも運転しながら
旅館に到着。

新鮮な魚介に地元のお酒
よく食べて飲んでおしゃべりして
乗り過ごしたこともすっかり忘れて
初めて過ごす長い時間を楽しんでいた。

部屋から眺める夜空は青く澄んで
星の輝きも住んでる街と全く異なって見える
いつもの彼の顔が違って見えるように

明日も早いから先に寝るわ
わかった、こっちはもう一杯飲んだら寝る

スッピンを見られたくないわたしは
早々にベッドに潜り込んだ。
ツインベッドで良かった、壁際に顔を向けたわたしはいつの間にやら熟睡していたらしい

喉の渇きで目を覚ますと
彼はまだ起きていた

眠れないの?
うん、ガラにもなくね

じゃあしばらく星でも見よっか
隣に座っていい?
並んで座っているうちに
彼の体温をじかに感じて無口になる

星、きれいね
素顔もね
あ…
そして自然に、ごく自然に
わたしたちは夜に溶けていった

ねぇ、朝寝過ごしても置いてきぼりは嫌よ
大丈夫、一緒に寝坊するから
そう言うとすっぽりと腕の中に包みこまれた

初めて会ったとき、
この人とは長くなりそうと感じたが
この人となら
楽しい夢が見られそうだと
意外に長い睫の横顔を見ながら呟いた

明日も晴れますように

おしまい🤭
冒頭3行ではたくさんのスキありがとうございました😃
そこそこの年齢のふたりの
ほぼ妄想のストーリーでした。
お楽しみいただけたら幸いです。






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