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前話 見る人に 物のあはれを しらすれば 月やこの世の 鏡なるらむ 「匂い袋だけではなくて…
前話 気がつくと、板張りの床の上に立っている。 油断していると飲み込まれてしまいそう…
前話 【主要な人物の紹介(二十まで)】 ・氷雨 主人公。階級は「新月」。「浮橋様」に再び会い、…
前話 「随分と派手に散らかしたね、引鶴くん……」 「……五月蠅いな」 「引鶴、散らばった…
前 「植生倉」の草木が色づき始めた頃、連翹は匂い袋を氷雨に手渡した。 きっかけは、「わ…
前話 今日の「宿主」は、細く、折れてしまいそうなほど背の高い青年だった。 暗がりで…
前話 「見て。あれが『月下蛍』。『浮橋屋敷』の灯りにのみ登用される、特別な蛍」 「おお……」 三人は目を凝らした。地上に星が住むならば、きっとああであろうと思わせるほど、その光は美しく、小さい光ながらも目を奪う魅力に満ちていた。 「普通の蛍は夏の終わりにはもういないんだけど、『月下蛍』は特別。伝え聞いた話によると、『月下蛍』は我々『月下』より古くから、『浮橋様』に仕えていたらしいの」 「『月下蛍』がおれたち『月下』の名の由来になったんですか?」 「そういう説もあ
前話 「氷雨、頬に墨がついてる」 深山がそう言って、氷雨の頬を指差した。頭上で静かには…
前話 花は根に 鳥は古巣に かへるなり 春のとまりを 知る人ぞなき 桜咲く。 夜闇を…
前話 畳の上に三人。連翹は、畳の破片を手でこねくり回しながら、ちらりと引鶴を見やった。…
前話 狩衣 袖の涙に やどる夜は 月も旅寝の 心ちこそすれ 「『橙の試し』は口頭試問。でも…
前話 瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ ぶわ、と膨れ上がる…
前話 【蝶捕りの仕組み】 ・手招き草で染めた布と、まじない粉を混ぜた薬茶によって、「宿主…
前話 連翹と名乗った少年は、首を傾けて氷雨を見た。 「君の名前は?」 「ええと、おれは氷雨。話は『染め布役』の皆さんから聞いたよ。勉強熱心だと」 連翹は反対に首を傾け、それから手に持っていた草を見た。 「そう?これの正体が、ただ気になっただけさ」 「それを勉強熱心と言うんだって」 ちょうど「手招き草」の実入りの煮物を食べ終えた氷雨は、茶をすすりながら呟く。その隣で、此花がぴっと指を伸ばした。 「連翹はね、香にすごく興味があるんだよ。いっつも、暇があればい