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浮世黒蝶みをつくし(長編小説)

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和風ファンタジーの連載小説です。 人の悪夢が「黒き蝶」の姿を取る世界。 その蝶を喰らう「浮橋様」という存在。 そして、「浮橋様」に仕える者たち。
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2024年5月の記事一覧

八 染め布の香を思い染む

前話 「役事所」の一角に、染め布工房はある。 「役事所」の一階は厨房と染め布工房が占めて…

市枝蒔次
2か月前
1

七 火中に芳香は無し

前話  燃えさかる激しい赤の向こうに、黒い影が見える。  それは大木のようにそびえ立って…

市枝蒔次
2か月前
1

六 羽化したる日の事

前話  ゆっくりと顔を上げた「浮橋様」は、髪に隠れていない方の目で、見下ろすように氷雨を…

市枝蒔次
2か月前
5

五 御簾の彼方には黒

前話  秘密は猛き毒なり。  蜜の如く甘く美しけれど、体をぞ蝕まめ。  秘密は悪しき夢なり…

市枝蒔次
2か月前

四 逢魔が時に魔が差す

前話  うたたねは 荻ふく風に おどろけど 永き夢路ぞ さむる時なき 「くわきり」の実を干し…

市枝蒔次
2か月前
1

三 くわきりの実の色を知る

前話  ある日、夕餉を食べた後、厨房の片隅で氷雨がぼんやりと茶を飲んでいると、その近くに…

市枝蒔次
2か月前
3

二 浮橋様に献上せられしもの

前話 「二人ともお疲れ様」  そう言って、山辻は温かい茶椀が乗った盆を卓の上に置いた。 「宿主」をお見送りし、部屋の片づけをした後。氷雨と深山は決まって、同じ場所に行く。 「宿主」が出入りする館である「宿主座敷」から時計回りに進んだ先に建つ「役事所」、その一室を占める厨房だ。そして厨房の一角には、「浮橋屋敷」で仕事に従事する者たちが、軽食を取るための場所が用意されている。実際、厨房の中には、紅や橙、白の着物がちらほらと見えた。 「蝶の捕る役」は主に夜活動するため、朝餉とい

一 蝶の捕り役を務むる者

前話  床板がきしむ音がした。部屋の戸の前で控えた氷雨は顔を伏せ、片膝を立てている。「宿…

市枝蒔次
2か月前
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序 黒蝶の夜へと手を招く

●あらすじ(ネタバレを回避したい方は飛ばしてください) 人の悪夢が「黒蝶」の姿を取る世界。…

市枝蒔次
2か月前
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