二 浮橋様に献上せられしもの
前話
「二人ともお疲れ様」
そう言って、山辻は温かい茶椀が乗った盆を卓の上に置いた。
「宿主」をお見送りし、部屋の片づけをした後。氷雨と深山は決まって、同じ場所に行く。
「宿主」が出入りする館である「宿主座敷」から時計回りに進んだ先に建つ「役事所」、その一室を占める厨房だ。そして厨房の一角には、「浮橋屋敷」で仕事に従事する者たちが、軽食を取るための場所が用意されている。実際、厨房の中には、紅や橙、白の着物がちらほらと見えた。
「蝶の捕る役」は主に夜活動するため、朝餉とい