本田宗一郎も愛した「鰻家」
その日は、生憎のどしゃ降り。店の扉を開け傘を閉じると、雨の雫石が首筋を伝わって洋服の中まで滴り落ちた。
明るい店内は思いの外狭く、左手にカウンターテーブルと、右手に6人掛け出来る程度のボックス席がふたつあるだけ(二階席もあるようだったが)。豪雨の梅雨寒の空間から、温かい、独特のいい香りで、身体中を一気に包み込まれる感覚を味わった。
「いらっしゃいませ!!」の声は、あっただろうか?少々無愛想にも感じられる調理人のその仕草には、旨いものを作っているのだから、という職人の自信の