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はじまりへの旅

どピンクのスーツに身を包む父と子供たち。
映画のポスターからは飲んだくれた父と子供たちの再生の物語を想像したが、
全く違った。

映画は雄大な自然の中で鹿が物音に気づく場面から始まる。
誰かが鹿を狙っている。鉄砲で打たれると思った途端に
鹿が刃物で仕留められる。顔を黒塗りした少年。アバターぽいビジュアル。
少年のもとに、他にも顔を黒塗りした人たちが集まってくる。

何の前情報もなくこの映画を観ると、
このシーンからいつの時代の場面だか分からなくなる。
鹿から臓器を取り出し、噛み締める少年。父と呼びかける少年。
どうやら家族のようで、鹿を仕留めるのが通過儀礼のよう。
英語を話す家族達、静かに山の中の彼らの住まいが映し出されていく。
そう、映画の舞台は現代なのだ。

トレーニングに励み、山の生き物や植物を食して、いきている。
夜には、読書の時間もあり、
読んだ内容の理解を測るための父によるテストもある。
星空の下で音楽も鳴らし、家族みんなで歌ったりもする。

全く人里離れた生活を送っている家族の話と思いきや、
定期的に山から街に行っていることがわかる。

ある日、妻が自ら命を立ってしまったと告げられる父ベンだが、
義理の父から葬式にはくるなと言われてしまう。

子供達に妻の死を告げるも葬式にはいけないと伝える。
母親に会いたいとせがむ子供達。
ベンはいつも通り、トレーニングを行うが、
スティーブの中で母親に会いにいくことを決め、
父と子供達のロードトリップが始まる。

家族はクリスマスではなく、ノームチョムスキーの誕生日を祝う。
(私の誕生日は、チョムスキーと一緒!)
レリアンが父の教育方針に反抗し始める場面では、
頭ごなしに反抗的な態度を否定するのではなく、
しっかり意見に耳を傾け、必要なら考え方を変えようとする姿勢を見せるベン。

ロードトリップの途中で姉一家の家でディナー。
一般的な現在っ子とベンの子供達が対照的。
ベンの教育のおかげか、小さい子供達の批判的な発言が笑える。
学校に通っているが、ゲームばっかりしている子供達よりも
ホームスクールのベンの子供の方が幼くても知識がある場面には
はっとさせられた。

車内で父に読んだ本の感想を求められ、興味深いInterestingといった娘に
具体的な説明を求め、自分の考えを述べさせる。
意識して読書しないと、読んだことに満足し、記憶に残らない。
興味深いは使ってはいけない言葉。
現在の私達でいうと「やばい」というところだろうか。
簡単な言葉で片付けてしまうと、どんどん語彙が貧弱になってしまう。
この場面にもはっとさせられた。

ロードトリップの風景は、美しく、
音楽もシガーロス等アイスランドの音楽が使われ、
風景と自然に同化する。

お葬式では、義理の父に追い出され、妻の望む火葬ではなく、土葬されてしまう。
そこからは、どんどん物事がうまく行かないけど、
最終的には妻の望む形でお別れをできて安心。

どうやってお金を工面しているのかが最後まで謎だったが、
何が正しいのか、自分だったらどう行動するか、考えさせられる映画だった。
自分達の力で「生きる」力を養い、考える教育は羨ましいと思った。

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