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アメリカのセレブを利用したロシアの反ウクライナ・キャンペーン

2024年2月15日、デジタルフォレンジック・リサーチラボが、「US celebrities unwittingly recruited to undermine Moldova’s president」( https://dfrlab.org/2024/02/15/us-celebrities-unwittingly-recruited-to-undermine-moldovas-president/ )を公開した。
反ロシアのモルドバ大統領に対して、2023年後半にキャンペーンが実施されていた。

●概要

2023年9月26日、TikTokに@oleg_spb2(現在、凍結中)というアカウントからハリウッドセレブたちのモルドバ大統領に対するメッセージ動画が発信された。ハリウッドセレブはモルドバ大統領を倒すモルドバの人々を支持するという内容だった。
動画は最後にモルドバ大統領を倒そうというロシア語を繰り返して終わるが、登場した人々の発音はたどたどしくその言葉を理解していないようだった。
画面にはモルドバのテレビ局のロゴが映っていたが、これは捏造らしい。動画はディープフェイクではなく、有名人にお金を払って依頼した内容を動画を録画してもらうことができるプラットフォーム「Cameo」を利用していた。問題の動画に登場したセレブたちは全員、このサイトに登録していた。

その後、Revival of Moldova、Gagauznews - Новости Гагаузии(9,703人)、Salut Moldova(5,654人)のTelegramチャンネルで拡散していた。
この動画は、モルドバの親ロシア派Telegramチャンネル "Приднестровец"、"Гагаузская Республика"の間でも大きな反響を呼んだ。他に"Молдавский Крот"、"Молдавский Vагон"、"Блокнот Молдова"でも拡散され、合わせて85,000回以上の再生回数を記録した。
フェイスブックではПул N3(192,000ビュー)やを集めたZERGULIO(90,000ビュー)など、親ロシア派チャンネルでもこの動画を拡散していた。

●感想

ロシアが欧米の著名人をプロパガンダに使うのは、以前からあったが、RTなどロシアのプロパガンダ・メディアに出演する、トークショーのホストに招聘するといった形がほとんどだった。つまり、メディアはロシアのもの。中にはYouTubeにも投稿されたりしたこともある。
これに対して今回のキャンペーンはメディアは最初からSNSで、主体をかくして行われた。中国やインドはこの手法をよく用いるが、ロシアはそうでもなかった。と思うのだけど、記憶違いでないといいけど。

国際世論は主としてアメリカのメディアや著名人などによってアジェンダセッティングされるものなので、アメリカのセレブをSNSで利用するのはよさそうな気がする。

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