見出し画像

フランスのVIGINUMが暴いた親ロシア・ネットワーク「ポータル・コンバット」

2024年2月12日、フランス首相府国防国家安全保障事務総局(SGDSN:Secrétariat Général de la Défense et de la Sécurité Nationale)のVIGINUMは、親ロシアのプロパガンダを拡散するネットワーク「ポータル・コンバット」に関するレポート「Portal Kombat: A structured and coordinated pro-Russian propaganda network」(https://policycommons.net/artifacts/11331813/20240212_np_sgdsn_viginum_portal-kombat-network_eng_vf/12220740/)を公開した。VIGINUMは2021年7月13日に設立された海外からのデジタル影響工作に対処する部門だ。

●概要

親ロシアネットワークは193のサイトから構成され、独自のコンテンツを制作することはなく、主として3種類の情報源からコンテンツを流用している。

・ロシアあるいは親ロシア派のアカウント
・ロシアの通信社、メディア
・情報を発信する現地機関あるいは現地アクターの公式サイト(都市や地域に特化したコンテンツのため)

主たる目的は反ウクライナ、親ロシアの言説を広めることにある。
ネットワークはさらに3つのエコシステムに分かれている。

「Portal Kombat: A structured and coordinated pro-Russian propaganda network」(https://policycommons.net/artifacts/11331813/20240212_np_sgdsn_viginum_portal-kombat-network_eng_vf/12220740/)

1."pravda"エコシステム 5サイト(2023年〜)

ウクライナを支援する主な西側諸国をターゲットにしたサイトで構成されたネットワークで、フランス版、ドイツ・オーストリア・スイス版、ポーランド版、スペイン版、イギリス・アメリカ版の5つある。すべてロシア内の同じホストで運用されており、コードも類似している。
20のロシアの国営メディアのTelegramチャンネルから多くを転載している。内容は、主にウクライナ紛争に関わるものでロシアの侵攻を西側諸国の人々に肯定的に紹介し、他方でウクライナとその指導者たちを「腐敗」「ナチス」「無能」な どと誹謗中傷する記事を転載している。また、フランス語圏の陰謀論を掲載することもある。

2."-news.ru"エコシステム 41サイト(2022年〜)

ウクライナのロシア話者を主なターゲットしたサイトで構成されたネットワーク。主要な都市ごとにサイトがあり、サイト名の「」にはウクライナの都市名が入る。ケルソンやマウリポリなど重要な地域ごとに作られている。"pravda"エコシステムと同じインフラを共有している。
3種類の中でもっとも過激なネットワークであり、サイトはロシア語話者がいる地域にサイトが作られており、ウクライナ当局への怒りを煽るように作られている。

「Portal Kombat: A structured and coordinated pro-Russian propaganda network」(https://policycommons.net/artifacts/11331813/20240212_np_sgdsn_viginum_portal-kombat-network_eng_vf/12220740/)

3."historical"エコシステム 147サイト(2013年〜)

ロシア人とウクライナ人をターゲットにしたサイト。サイトは2013年から2023年までの間に作られており、ドメイン名にはロシアあるいはウクライナの地名が用いられている。
コンテンツは、比較的無政治的であり、ターゲットとする場所によってはスポーツイベント、フェスティバルといったイベントに関連する情報を報道している。比較的穏健な情報が多い。

これらのサイトには検索エンジン対策が施されていたが、多くのアクセスを得ているわけではなかった。
異常に多くのコンテンツを公開しており、サイトによっては1日に1,687件の記事を掲載したこともある。これは自動的な転載&翻訳システムによるものでおり、この自動投稿システムはロシアのVKでも運用されていいる。ただし、翻訳の精度など品質は高くない。

全体像は下記。

「Portal Kombat: A structured and coordinated pro-Russian propaganda network」(https://policycommons.net/artifacts/11331813/20240212_np_sgdsn_viginum_portal-kombat-network_eng_vf/12220740/)


好評発売中!
ネット世論操作とデジタル影響工作:「見えざる手」を可視化する
『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)
『フェイクニュース 戦略的戦争兵器』(角川新書)
『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパイウェアについて解説。

本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。