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グーグルの広告ビジネスが世界を不安定にする

ProPublicaが『How Google’s Ad Business Funds Disinformation Around the World』(2022年10月29日、https://www.propublica.org/article/google-alphabet-ads-fund-disinformation-covid-elections)と題する記事を掲載した。
拙著『ウクライナ侵攻と情報戦』でも触れたが、グーグルは反ワクチンや陰謀論など問題あるサイトに広告を掲載し、多額の広告料金を支払い続けている。その資金によって、こうしたサイトは増加、拡大を続けている。

グーグルが広告料金で支援する陰謀論や差別主義者サイトとアメリカのメディアエコシステム

今回のProPublicaの記事は非英語圏を中心にグーグルが、ワクチン、気候変動、選挙などについての誤った主張を掲載しているサイトに資金を提供している実態を暴いている。すでに問題あるサイトとして指摘されているサイトの多くにグーグルは広告を掲載していた。
グーグルのチェックは英語圏に偏っており、今回の記事で取り上げられたフランス語、ドイツ語、スペイン語など他の言語への対応は遅れている。また地域によっても偏っていた

グーグルは広告配信によって3,100億ドル(日本円でおよそ4,500億円)の収益をあげている。こうした問題あるサイトにグーグルが合計でどれだけの資金を提供しているかは不明だが、今回の記事で紹介されている数値や過去の他の資料から考えて(かなりばらつきがあるが)、日本円にして数百億円に達している可能性が高い

記事では、ブラジル、スペイン、トルコ、ドイツ語圏(ドイツ、オーストリア、スイス)、アフリカのフランス語圏、バルカン半島(セルビア、クロアチア、ボスニア)などにおける実態を紹介している。

ロシアの国営メディアからコピーした親ロのプロパガンダ、アメリカの選挙の陰謀論、反LGBTQのコンテンツを転載しているセルビアの個人サイトは、月間5千ドルから7千ドルの広告収入をグーグルから得ていると語っていた。日本円にすると、7千ドルは現在のレートだと100万円を超える。大手サイトになれば日本円で年間億単位の収入も可能だ。やる人間が後を絶たないのも当然だ。

当然、こうしたサイトの増加は社会を不安定にし、民主主義を毀損する。記事ではさまざまな識者がグーグルによって選挙や民主主義が壊される危惧を訴えていた。また反ワクチンは文字通り致命的で、バルカン半島でワクチン接種率が低いのはこうしたサイトからの反ワクチン情報の影響が指摘されている。

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