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ウクライナ国防相辞任の裏にロシアの大規模な影響工作

ウクライナの国防相が2023年9月に汚職疑惑で辞任した。その背景にロシアによる大規模なネット世論操作の影響があった可能性をデジタルフォレンジックリサーチラボとBBCが共同調査「Massive Russian influence operation targeted former Ukrainian defense minister on TikTok」(https://dfrlab.org/2023/12/14/massive-russian-influence-operation-targeted-former-ukrainian-defense-minister-on-tiktok/)で明らかにした。

●概要

影響工作キャンペーンの中心となったのはTik Tokで、7言語で動画を公開し、国防相が豪邸や車を購入していることや、ウクライナ政府関係者が戦争で私腹を肥やしていることをほのめかした。
まず、2023年7月7日に匿名アカウント(@andreamiller421 )がAI生成の音声ナレーションで国防相が汚職で得た金で別荘を購入したとする動画が公開され、3万回近く再生された。同日、@alfredboulanger1は似たような動画を公開し、こちらは40万以上の再生となった。5日後に@vladyslavyashchenko1が公開した動画は170万回再生された。さらに7月13日に、@marynadzyubaが投稿した動画は150万回再生となった。その後、元ソ連情報将校のYouTuberや政治家などによって汚職疑惑が他のプラットフォームにも拡散されていった。XやBitChute、RedditといったSNS、EurAsiaDailyやInfoWars主宰者のニューズレター、ロシアのプロキシNewsFront、TelegramチャンネルInfoDefenseEnglishなどに広がった。

2023年7月下旬にはX上にTik Tokの動画にリンクする投稿が行われた。1アカウントにつき、1つの動画を投稿していた。
Tik Tokはこのキャンペーンに関与していた12,800以上のアカウントを削除した。Tik Tokによると過去最大規模のキャンペーンだったという。

国防相が汚職に関与していた疑いを持たれ、それが原因で辞職したのは事実だが、汚職に関与した事実はいまのところ確認されていない。疑惑が出た時点で大量の動画が投稿されたことで立場が悪くなった可能性は高い。

ウクライナでは汚職は当たり前に行われていて、過去にもロシアはそれを狙ったキャンペーンを行っている。

●感想

不思議なことにウクライナ前国防相の辞任のニュースは日本で報道されているのだけど、この件はまったく見かけなかったので備忘録として残しておく。ウクライナでは汚職はよくある話だが、現在ウクライナ国内の報道機関はウクライナ政府にネガティブなニュースを自主規制している。戦争前にはウクライナ国内の報道機関が報道していたのだが、現在は市民はニュースでそれを知ることはない。こうした背景を踏まえると、SNSプラットフォームでのキャンペーンの効果がありそうに思えてくる。
ただ、過去にも同様のキャンペーンは行われていた。今回効果があったとすると、戦争勃発後、対ロシアでまとまっていた国内世論に亀裂が入ってきた可能性を示唆している。

ウクライナ国内メディアの自主規制については過去に記事にした。
Kyiv Independent紙が告発 ウクライナのメディアの自己検閲(https://note.com/ichi_twnovel/n/n44e1b7e9829a)

影響工作において相手国のメディア事情を把握しておくことは重要だけど、ニュースではそんなことしないみたいですね。

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