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2022年総括Metaの脅威レポート5本 デジタル影響工作編

2022年12月15日、Metaが2022年を総括する脅威レポートを5つ公開した。ベン・ニモ獲得後のMeta、MIBORO獲得後のマイクロソフトの脅威レポートはデジタル影響工作を知る上で欠かせない重要なものとなっている……と、私は考えているのだけど、日本ではこの2つのレポートに注意を払っていない人が多いので、もしかしたら私が間違っているのかもしれない。


●Metaの5つのレポート

今回、Metaが公開した5つのレポートは、下記。また、過去のレポートの関連部分を更新している。

1.全体のまとめ Protecting People From Online Threats In 2022
2.デジタル影響工作関連(CIB) Recapping Our 2022 Coordinated Inauthentic Behavior Enforcements
3.アカウントセキュリティ関連 Designing Account Security Across Our Apps
4.Metaのバグ・バウンティ・プログラム関連 Looking Back at Our Bug Bounty Program in 2022
5.民間スパイウェア業者関連 Threat Report on the Surveillance-for-Hire Industry

私自身の優先度に従い、今回は「Recapping Our 2022 Coordinated Inauthentic Behavior Enforcements」を紹介したい。いわばデジタル影響工作編である。

●2017年から2022年のデジタル影響工作の傾向

Metaは2017年以降、200以上のCIB(協調型不正行為)をテイクダウンしてきた。そのデータと経験をもとにまとめたものが下記である。

・CIBネットワークが確認されたのは68カ国、少なくとも42の言語が用いられていた。
・多くのCIBネットワークを保有していたのはロシア(34件)、イラン(29件)、メキシコ(13件)
・もっともターゲットになっていたのは、アメリカ(34件)、ウクライナ(20件)、イギリス(16件)
・ロシアはもっとも多くのデジタル影響工作を行っている国であり、仕掛けているアクターは多様で、ひとつのプレイブックがあるわけではない
・ロシアの主たるターゲットはウクライナとアフリカ。
・Metaが200件目にテイクダウンしたロシアのCIBはウクライナやヨーロッパをねらったもので、Structura National Technology と Social Design Agencyがかかわっていた。なお、これに関する詳細は9月発行の脅威レポートにあり、更新されている。
・イランのCIBの背後のアクターは多様化している。2018年から 2020年までの期間は国営メディアと連携しイラン政府関連コンテンツを拡散するものが多かったが、2021年初頭からターゲットとする国の政治に焦点をあて、小グループと連携することが増えた。これはドメインが押収されたことなどが関係している可能性が高い。
・メキシコでは多くが国内の選挙にかかわったもので、PR会社やマーケティング会社と連携していた。洗練されておらず、ライバルを同時に支援するといった活動が見られた。
・外国からの干渉に注目が集まることが多いが、3分2は国内向けだった。地域による違いも大きく、アジア太平洋地域、サ ハラ以南のアフリカ、中南米における CIB 業務の約90%は、全体的または部分的に国内向けに重点を置いており、ヨーロッパと中東・北アフリカ(MENA)を拠点とする CIBネットワークの3分の2以上は全体的または部分的に海外を対象にしていた。

・複数のプラットフォームにまたがっての影響工作、クロスプラットフォーム化が進んでいる。
・GAN(Generative adversarial networks)のようなAI生成のプロフィール画像の利用が増加

●関連記事(これ以外にもたくさんあるので適当に見つけてください)

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『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパイウェアについて解説。

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Metaの四半期脅威レポート、プリンストン大学の情報戦統計は他ではあまりないかも。Metaは四半期毎なので数も多いです。 どちらも元は無償公開されているのでそちらを読んだ方がよいのは確かです。

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