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ロシアのアフリカに対する情報戦 「Two-pronged approach to Africa pays dividends for Russia」  #DFRLab_U2nd1

これはDFRLabによるウクライナ侵攻2年目の総括のパート5です。
全体構成は
序章を参照。

●概要

ロシアは以前からアフリカへ干渉を続けており、2023年になっても、その傾向は変わらなかった。ラブロフ外相は年間を通じてアフリカ大陸の複数の国を訪問し、プーチンはサンクトペテルブルクで開催されたロシア・アフリカ・サミットでアフリカの指導者を歓迎し、ワグナー・グループは2023年8月にプリゴジンが死亡した後もアフリカとのつながりを維持した。

ロシアがアフリカで展開している虚偽のシナリオや偽情報キャンペーンを単体で理解することはできない。それらは、この1年で、ロシアのアフリカ大陸での影響力を強化すると同時に、グローバルな舞台でウクライナを弱体化させるという2つの成果をもたらしている。。
アフリカに対するロシアのアプローチは以前と2022年と同じく2つの側面から構成されている。ひとつは、貿易・投資、外交イニシアティブ、パブリック・ディプロマシー、防衛・安全保障協定、国連内での関与など公式なチャネルを特徴とする各国との関係である。もうひとつは、ハイブリッド戦術や、ワグナー・グループによる資源をめぐる武器の不正取引、偽情報キャンペーンとナラティブの流布などの非公式な秘密主義的な活動である。

サヘルや西アフリカのような国々では、ロシアは秘密主義的アプローチをとる。現地の有力者への資金提供、偽情報キャンペーン、現地の政治団体への財政支援など、非伝統的な手法が中心になる。ロシアはすでい存在している相手国の脆弱性や現地の力学を利用する。公式なアプローチと非公式の二重のアプローチにより、ロシアはアフリカ各国の具体的な状況や受容性に合わせて偽情報活動を調整し、その影響力を最大化し、地政学的な目的を達成するために戦術を適応させている。その結果、ロシアを「慈悲深い恩人」、「植民地主義に汚されていない国家」、「ロシアのメディアを『独立した』情報源として認識させる」というナラティブが浸透している。
2023年7月にサンクトペテルブルクで開催された2023年ロシア・アフリカ首脳会議は、ロシアとアフリカの関係の表向きの関係を見せることを目的としていた一方で、ロシアの秘密外交戦略の要素も含んでいた。このサミットでは、ウクライナと西側の同盟国を弱体化させるために、ロシアがアフリカで広めたナラティブを強化するためのプラットフォームとして機能した。
さらにこうしたナラティブは、ロシアが培ってきた現地のインフルエンサーやコミュニケーション・チャンネルによって増幅され、反フランス感情やサヘル諸国における広範な反植民地主義感情など、アフリカの長年の不満を利用している。
ロシアとアフリカは、西側の侵略に対抗し、アフリカが植民地主義や新植民地主義の名残から解放され、正当な地位を主張できるような多極化した世界を確立するために協力しているというシナリオに沿ったナラティブが展開されている。

ロシアのウクライナ侵攻については、2023年サミットではほとんど議論されず、代わりにアフリカの食糧、穀物、肥料の不足をウクライナと西側諸国のせいにするようなナラティブが繰り返された。
このことは、2023年を通してのワグネル・グループに関する分析と一致している。プリゴジンの反乱未遂事件後もワグナー・グループはアフリカでの活動を続けた。同グループは実際に西アフリカの沿岸諸国でその存在と偽情報作戦を拡大している。
同グループ傘下で活動する数多くのフロント企業を通じて、西側の影響力を奪い、天然資源を搾取し、制裁を回避するためにハイブリッドな手段を使い続けいる。

アフリカの数多くのメディアは、アフリカにおけるワグネル・グループや戦争におけるロシア軍の役割を賛美し、穀物危機に対する西側の対処を批判し、ロシアを人道的利害関係者や安全保障提供者として紹介するなど、さまざまな親ロシアのメッセージを発信した。いずれの場合も、こうしたメッセージは、アフリカのメディアによって増幅される前に、ロシアのメディアに登場していた。
ロシアとアフリカのメディアは2023年にいくつかの協力協定を結んでおり、RTとAfrique Media TV の協力も含まれている。Afrique Media TV は 2011 年に設立されたフランス語圏の汎アフリカ主義テレビ局で、英語のニュースサイトも運営している。2023年9月の調査で、African Digital Democracy Observatory は、Afrique Media TV がワグナーのフロント企業を含むロシア関係機関とつながっていることを暴露した。報道によれば、Afrique Media TVは、ワグナー・グループのプロキシであるAssociation for Free Research and International Cooperation(AFRIC)およびOfficers’ Union for International Security (COSI)と提携している。
Afrique Media TV が RT やスプートニクといったロシアのプロパガンダメディアから穀物取引から撤退するロシアの安全保障上の利益や、ウクライナ軍に対するロシアの軍事的成功を伝えるコンテンツを転載していた。
また、ウクライナの穀物供給をめぐるロシアのシナリオをアフリカのメディアも拡散した。国連とトルコが仲介したロシアとウクライナの協定「黒海穀物イニシアティブ」がウクライナからの穀物輸出を維持するのに役立ったにもかかわらず、供給が制限され始めたとき、ロシアはウクライナと西側に責任をなすりつけた。ロシアと同盟国によって拡散され、その後アフリカのメディアでも取り上げられた。
うした偽情報は、第2回ロシア・アフリカ首脳会議の10日前に、拡散された。

ロシアはまた、2023年にBRICSを拠点とするメディアと新たな提携を結び、メディアのリーチを拡大した。デイリー・ニュース・エジプトは2023 年 10 月、ロシア所有のテレビチャンネルTV BRICSと協力協定を結んだ。TV BRICS は他にもアフリカ通信社(ANA)や中国の新華社とも提携を結んだ。
フランスの非営利団体 OpenFactoが指摘したように、ロシアはBRICS諸国間の協力のショーケースとして運営されるウェブサイトを作成しており、これはロシアのGRUとつながりのあるオンライン・アウトレットInfoRos との関連が疑われている。

ロシアのコンテンツがアフリカのメディアに広まっていることに加え、現地の市民が自らの意思でロシアのプロパガンダを再パッケージして配信している証拠もあった。2022年の春、DFRLab は MARIGONEWS という名前を使ったコートジボワールの小規模な非正規ネットワークを調査したが、Metaの広報担当者はDFRLab に対し、親ロシア感情を持つ一個人が運営していることを確認した。
ウクライナ侵攻の後、MARIGONEWS の名前とロゴを使ったフェイスブックのネットワークは、62,000 人以上のメンバーを維持するグループとともに、Opération de Dénazification et deDémilitarisation de l'Ukraine(ウクライナを非ナチ化・非武装化する作戦)と呼ばれるTelegramチャンネルを宣伝し、その後 Marigo News-Opération ZOV と改名された。
このチャンネルにはロシア人特派員がいると主張しているが、チャンネルに投稿された内容は
ほとんどすべて、親ロシアのTelegramチャンネルやウェブサイトからコピーされ、ロシア語からフランス語に翻訳されたものだった。
このネットワークはMetaが2022年春にテイクダウンした後も、Telegramで活動を続けていたが、フォロワーを失い、数カ月間は定期的に活動を停止していた。その後、Telegramチャンネルは2023年10月、ロゴと名前を「MARIGONEWS」に変更した後、活動を再開した。

●DFRLabによるウクライナ侵攻2年目の総括

序章 https://note.com/ichi_twnovel/n/n276580f76ffc
パート1 ウクライナ国内に対するロシアの情報戦 「In Ukraine, Russia tries to discredit leaders and amplify internal divisions」 https://note.com/ichi_twnovel/n/n689b35630899
パート2 ロシア国内監視状況 プリゴジン後のネット監視 「After Prigozhin, Russia clamps down online」 https://note.com/ichi_twnovel/n/n0578afbf9637
パート3 ロシアのヨーロッパとアゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアに対する情報戦 「In Europe and the South Caucasus, the Kremlin leans on energy blackmail and scare tactics」
https://note.com/ichi_twnovel/n/nc5fc96fed79a
パート4 ロシアのラテンアメリカに対する情報戦 「In Latin America, Russia’s ambassadors and state media tailor anti-Ukraine content to the local context」https://note.com/ichi_twnovel/n/nad62ce2dfc8a
パート5 ロシアのアフリカに対する情報戦 「Two-pronged approach to Africa pays dividends for Russia」 https://note.com/ichi_twnovel/n/n9e812531321a
パート6 ロシアの中東に対する情報戦 「Complicated history helps Russian narratives about Ukraine find a foothold in the Middle East」
https://note.com/ichi_twnovel/n/ne3f0507fa308
DFRLabウクライナ侵攻2年目の総括の感想
https://note.com/ichi_twnovel/n/n4605b841d507

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