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気になった論文や記事2024年5月24日

5月18日から5月24日の間で気になった論文や記事を簡単に紹介。なお、私が先週気づいたということであって、先週公開されたとは限りません。


●ポーランドのジャーナリスト8年間の軌跡

ポピュリストや右派が渦巻くポーランド政治の中で、プロパガンダのツ=ルとして利用されることも多かった。ポーランドのメディアとジャーナリストの8年間の軌跡をコンパクトに紹介した記事。

After eight years of propaganda, can Polish journalists regain public trust?
https://www.cjr.org/world/tvp-poland-journalism-tvp-public-media.php

●ネットガバナンス標準を巡る争い

ネットガバナンス標準を巡る争いといえば、ITUの2012年のWSISが有名だ。

世界国際電気通信会議(WCIT-12) 結果報告(総括)
https://www.ituaj.jp/wp-content/uploads/2013/05/WCIT12.pdf

権威主義国と民主主義国が対立し、数で勝る権威主義国が勝ったものの、民主主義国は批准しなかった。中国が率いるG77がふたたび国家管理を強めたネットガバナンス標準を世界標準にしようと働きかけている。

Internet governance interrupted
https://dfrlab.org/2024/05/17/internet-governance-interrupted/
The internet in the balance: UN discussions and our online future
https://www.atlanticcouncil.org/event/the-internet-in-the-balance-un-discussions-and-our-online-
future/

●未来を賭けた規制当局とビッグテックの戦い

過去30年間、ほぼ無法地帯で好き勝手を許されてきたビッグテックに対して、各国の規制当局が規制を課そうとしている。その先鋒がEUのDSAだ。いまのところ、ビッグテックは表向きはDSAを尊重するUUを装いながらも、潰したり、無効化するための方法を考えている。

Big Tech to EU: "Drop Dead"
https://www.eff.org/deeplinks/2024/05/big-tech-eu-drop-dead

●ドイツの極右政党AfDが中国を擁護する

EUで存在感を増す極右だが、最近次々と問題が発覚し、批判が増す中、AfDは近年の中国批判はパラノイアだと中国を擁護する発言をしている。

AfD lead candidate in EU election attacks western ‘paranoia’ on China
https://www.ft.com/content/712a4abd-66b3-4b83-bba1-012d5cc12f02

ヨーロッパでの極右の台頭の状況と影響をまとめた記事があった。

What a Far Right Surge in European Elections Would Mean for the EU
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-05-21/germany-s-afd-among-far-right-parties-set-to-gain-seats-in-european-elections

●スロバキア首相銃撃事件を巡り、拡散するデマやナラティブ

世間の耳目を集める事件はデマやナラティブ、陰謀論拡散のよいチャンス。スロバキア首相銃撃事件はかっこうのネタになった。WHO、ウクライナなどが事件に関与しているというデマが拡散している。多くはスロバキア国内で広がっており、ターゲットになっているのは野党やメディアとなっている。

Robert Fico shooting: Slovak police charge 71-year-old poet over assassination attempt
https://www.politico.eu/article/slovakia-police-assassination-attempt-robert-fico-juraj-cintula/
Online conspiracies proliferate following the attack on Slovakian PM Robert Fico
https://dfrlab.org/2024/05/22/online-conspiracies-proliferate-following-the-attack-on-slovakian-pm-robert-fico/
Five questions (and expert answers) about the shooting of Slovak Prime Minister Robert Fico
https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/five-questions-and-expert-answers-about-the-shooting-of-slovak-prime-minister-robert-fico/

●世界の3大通信社AFPのファクトチェック体制

世界の3大通信社AFPのファクトチェック体制について、AFPとのQ&A。とはいえ、AFPの言うことを真に受けている。少なくともAFPは日本において中国のプロパガンダメディアを配信する会社に翻訳と配信を委託している。また、AFP自身も中国のCVERCの発信するナラティブを記事として流していた。世界中に150人の検証する専門家がおり、オープンソース調査ツールは126,000人が利用していることを誇っている。その体制の維持費用の多くはMetaからもたらされていることを考えると、お里が知れる。

Battling disinformation in the era of AI – Q&A with AFP’s Chief Editor of Digital Verification
https://wan-ifra.org/2024/05/battling-disinformation-in-the-era-of-ai-qa-with-afps-chief-editor-of-digital-verification/

●陰謀論右派のグッズビジネスの紹介

白人至上主義グループなど右派はポッドキャストなどのネットメディアでコンテンツを拡散しているが、そこでさまざまな商品を販売している。アメリカで唯一の保守的クリスチャン向けのパトリオット・モバイルは文字通り電波系の商品やブラックアウトコーヒーの「2nd Amendment」や「Covert Op Cold Brew」などのコーヒー豆を売るなど幅広く、関係者以外にはよくわからない商品が増えている。

Why Is Charlie Kirk Selling Me Food Rations?
https://www.theatlantic.com/technology/archive/2024/05/charlie-kirk-podcast-ads/678450/

●アフリカで反ワクチン勢力が拡大

反ワクチンはいまだに世界各地で影響力を持っており、アフリカではウガンダ大統領夫人が、ワクチンはアフリカの出生率を下げようとする陰謀と主張する「African Inter-Parliamentary Conference on Family Values and Sovereignty」を歓迎した。
反中絶や反LGBTQといったグループと結びつき、アメリカのChildren's Health Defense(反ワクチンの世界的著名人ロバート・F・ケネディ・ジュニアの組織)の支部もある。これらにくわえて、ロシアの偽情報も存在している。

African Anti-rights Groups and Anti-Vaxxers Unite in Global Campaign Against WHO
https://healthpolicy-watch.news/african-anti-rights-groups-and-anti-vaxxers-unite-in-global-
conspiracy-against-who/

●マッキンゼーが中国に政策提案を行っていた

マッキンゼーが実質的に支配しているシンクタンクUrban China Initiativeは、310ページの報告を提出しており、中国が、クラウド・コンピューティング、モノのインターネット、ビッグデータ、モバイルインターネット、ロボット工学、3D プリンティング、先端材料、自動運転車、人工知能、非在来型石油・ガス、電気自動車、エネルギー貯蔵、再生可能エネルギー、ヒトゲノム技術といった14の技術で世界をリードできる存在になるための施策を提案していた。
マッキンゼーは2018年に新疆ウイグル自治区で企業保養を行っており、そういう企業らしい。

RUBIO, HAWLEY DENOUNCE MCKINSEY’S BOOK ADVISING “MADE IN CHINA 2025”
https://www.rubio.senate.gov/rubio-hawley-denounce-mckinseys-book-advising-made-in-china-2025/
McKinsey-led think-tank advised China on policy that fed US tensions
https://www.ft.com/content/15a3e8d9-6c57-422a-8eb8-35a3c24a50e3

●今週の必読記事

緊縮財政がポピュリズムを台頭させる、という調査結果
https://note.com/ichi_twnovel/n/n27f176ed33e4

DFRLabによる中国の対台湾デジタル影響工作の実態
https://note.com/ichi_twnovel/n/n6ae2fd50f112

アルゴリズム選択の自由を巡る訴訟
https://note.com/ichi_twnovel/n/n1acf752e45f3

●気まぐれな本の紹介

第一学習社の「高等学校 現代の国語 [現国 713]」に載っている「現代の世論操作」にはケンブリッジ・アナリティカ、ボットという言葉が並んでいた。高校の教科書ってこんな生々しい話題を載せるものになっていたんだ。

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一田和樹のメモ帳
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