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DFRLabによる中国の対台湾デジタル影響工作の実態

DFRLabが中国による台湾に対するデジタル影響工作をまとめたレポート「Targeting Taiwan: China’s influence efforts on the island」https://dfrlab.org/2024/05/06/targeting-taiwan-chinas-influence-efforts-on-the-island/ )が5月6日に公開された。

●概要

台湾では1994年以降、中国との統一を望む声は減少しており、現状のままを望む声が大きくなっている(独立ではなく)。自分を台湾人と自認する割合は1992年の17.6%から2023年の62.8%へと大幅に増加した。台湾に対する中国の干渉は以前から続いており、台湾当局は警戒を強めている。

以前から8つのラジオ放送が中国のプロパガンダに利用されてきた。CMG、 the PLA、 Fujian Media Group、 Jiangsu Broadcasting Corporation、 Shanghai Media Group、 China Huayi Broadcasting Corporation (PLA-managed)、 Fuzhou Broadcast and Television、 Xiamen Media Groupだ。これらの局は2015年末から2016年半ばにかけてフェイスブックに進出し始めた。独立派の蔡英文が総統選で勝利した時期と重なる。フェイスブックでのリーチを伸ばすため、広告費を支払ってメッセージを拡散しようと試みている。
フェイスブックのチャンネルはYouTubeチャンネルも持っているが視聴回数は1万以下である。
こうしたメディアは、中国寄りの意見を持つ国民党を公に支持することはせず、親中派に好意的に見られそうな国民党に関するニュースを取り上げるようにしている。
2023年7月には中国のプロパガンダメディアは、米国の命令で台湾に高レベルのバイオラボが建設され、生物兵器が製造されているという偽情報を流し、拡散した。

共通のアイデンティティ意識を刺激する手段として、台湾人と中国人の間で祖先が共有されていることを強調している。主として中国福建省の沿岸地域に根ざした閩南の言語と文化を通じて行われている。

台湾では中国系SNSのDouyin/TikTok、Weibo、WeChatも利用されているが、フェイスブックやインスタグラムに比べるとかなり少ない。

全体的に中国が台湾に対して行っている影響工作そのものよりも、台湾国内の親中派による発信の方が拡散され、影響力もあると考えられている。台湾の新聞やテレビ番組の親中のコメンテーター、SNSで活動している親中派アカウントなどがある。

●感想

コンパクトに概況がまとめられていて参考になった。中国が台湾に対して行っていることの情報では台湾発の情報が時おり誇張されていることもあり、くわしい状況がわからないこともある。今回のDFRLabの記事は新しい情報はあまりないものの現時点でわかっていて、確認がとれていることをまとめられているのが便利だ。

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