埼玉大学の国際シンポジウム「パンデミック時代における科学技術と想像力」備忘録

3月27日、28日に埼玉大学の国際シンポジウム「パンデミック時代における科学技術と想像力」に参加しました。
http://www.saitama-u.ac.jp/seminar_archives/2021-0222-1527-9.html
要約したプレゼン資料はこちら
https://note.com/ichi_twnovel/n/nf71c13da5efe
非常に刺激的で新しい発見に満ちた楽しいシンポジウムでした。忘れないうちに感想というか気になったことを書き留めておきます。新作のアイデアになるものも含まれておりますが、見た方がそれを利用して自作を書くのは自由です。

すべての発表と議論を取りあげたいのですが、特に心に残ったものを書き留めます。

1.長谷敏司先生「巨大リスクと生活の想像力」と、井上智洋先生「人工知能と雇用の未来」
長谷敏司先生が提示した貧困と取り残された世代の問題については、問題設定の方法なども含めて、井上智洋先生の脱労働社会の研究が直接の回答になると考えました。ただ、それぞれ立脚する専門分野が異なるために議論に少しずれがあったような気がします。
井上先生の「民間銀行の持っている貨幣発行益を国民に配当する」ことと、ベーシックインカムによって生活が変わることが長谷先生の問題への直接的な回答だと私は思ったんですが、シンポジウムでは、おそらく時間の問題で「民間銀行の持っている貨幣発行益を国民に配当する」の解説がなかったのは残念です。

2.立原透耶先生「中国SFと文明、教育」
中国のSF教育にはただひたすらびっくりでした。まさか入試にSFが出題され、小中高までSF教育しているとは思いませんでした。政府はそこから科学技術に進む学生が増えることを期待しているようですが、SF関係者は書き手と読み手が増えることを期待しているそうです。
SFプロトタイピングも普及していて、SF作家の多くは企業と協業していて、企業の支援を得るためのプレゼン大会もあるそうです。

3.暦本純一先生「Augmented Society: 人間拡張がつくる未来社会」
新しいVR、ARのお話を聞けて、とにかく刺激になりました。
たとえば……

・「知覚検閲」「表現検閲」と社会信用システム
人間にチップを埋め込んで感覚を制御できるので、「知覚検閲」や「表現検閲」ができそう。言ってはいけない言葉や聞いたり、見たりしてはいけない言葉やものを遮断する。発話はダイレクトに制限できそうだけど、書いたりするのは自分で書いたものを一度知覚からフィードバックして検閲するのかな。このチップを埋め込んだ者は社会信用スコアが上昇。スコアが上昇すると、ある程度検閲も緩くなるとか。

・アメリカ人の知覚と表現が中国人に乗っ取られる
ZOOMが中国に検閲されたことやClubHouseにもその危険があったことが明らかになっている。同じパターンで、「アメリカの顔をした中国企業https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2021/02/zoom.php)」が製造したチップあるいアプリがアメリカで販売され、それをインストールしたアメリカ人の知覚と表現が乗っ取られるあるいは、知覚から情報を盗まれる。

・「知覚通報」
埋め込んだチップが検閲対象の言葉やものを遮断した後、自動的に共産党に通報するオプション。通報件数が多いほど社会信用スコアが上昇。本人も知らないうちに通報できて、スコアも上昇。

・ニューラルリンク検閲
検閲官はニューラル・リンクでチップを埋め込んだ者たちとリンクされ、リアルタイムで知覚通報を受け取り、処理。地域的な偏りが大きい場合は、現場に部隊を向かわせる。<ほとんどアニメ「サイコパス」の世界。でも、おそらく現在の技術で実現可能。

・遠隔存在のハッキング、改竄
遠隔地のデバイスや遠隔存在用ロボットをハッキングあるいは、その知覚を改竄。
知人あるいは家族だと思って安心していたデバイスやロボットが実は他国のスパイに乗っ取られていたとか、一部の知覚がダダ漏れで漏洩したとか。

・ニューラルリンク・シティ
都市そのものと人間がリンクして、監視カメラや交通網が人間の五感と直結するようになりそう。都市と人間の知覚が一体化し、AIによる監視と連携して都市運営そのものを表現手段とする芸術が成立したりとか。統治権を持った人は全ての知覚と表現手段を統べることができる。
遠隔統治も可能なので月や火星にも街を作れそう。遠隔存在と遠隔統治による惑星移住!?
同時に、ハッキングされた時の危険性は増大。


4.村上祐子先生「誰も取り残さない社会に備える情報教育」
教育に関する発表だったんですが、実はシンポジウムの後でうかがったコミュニケーションについてのお話が興味深かったです。
そこでちょっとお話しした内容を別途まとめました。
https://note.com/ichi_twnovel/n/nfcfbe63656ec




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