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情報戦に関するメモ シンガーの記事を読んだ

●概要

Foreign Affairsに「Gaza and the Future of Information Warfare」(https://www.foreignaffairs.com/israel/gaza-and-future-information-warfare)という記事が掲載された。書いたのが、P. W. Singer と Emerson T. Brookingなので読まきゃならない気になる。

記事の内容はイスラエルとハマスの戦闘について、情報戦(ライク・ウォーと書くべきか?)という視点で整理したものだ。まず、今日の戦いでは情報戦がきわめて重要な役割を果たしていると指摘する。連日、大量の情報がイスラエルとハマスから発信され、世界を駆け巡っている。パレスチナの幼児を含む一般人の犠牲を目にした世界はイスラエルに否定的に見方をするようになった。特に関心を呼びやすい子供の死は重要なポイントになっている。

一方、イスラエルはハマスとパレスチナ市民の区分をあいまいにするために、病院の地下のトンネルなどさまざまな映像を公開した。区別があいまいなら殺しちゃっても仕方がないよね、という理屈だ。またパレスチナ人の被害の数値に疑問を呈した。
さらにオフラインではネットを妨害し、ハマスやパレスチナからの発信を遮断しようと努め、ガザ地区のトラフィックを80%減少させた。しかし、イスラエルを批判しているのはガザ地区だけではない、世界中から非難の声があがっている。
イスラエルはMeta、Xなど主要SNSプラットフォームにテロを助長する可能性のある投稿として約9,500件の削除要請を送り、各プラットフォームは94%を削除した。一般的にネットでの戦いは非対称で非国家主体に有利に働くが、削除要請に関しては国家であるイスラエルからの要請の方が効果がある

そして、現在の戦争において情報戦、認知戦はきわめて重要になっており、その趨勢を左右すると結んでいる。

●感想

有名人の言うことだし、内容はいちいち納得できる。
先日、アメリカでウクライナ支援関連の法案が否決されたことが話題になったが、イスラエルとハマスの紛争が起きず、ロシアがウクライナの子供をたくさん殺していればそうはならなかったかもしれない。
すでに何度も書いたように2021年から現状変更おいて暴力が用いられることが増加し、その傾向は拡大している。
つまり、これからさらに紛争が増える。民主主義サイドを支える欧米(プラス日本、韓国)はこれらの紛争で民主主義サイドを支援しなければならない。しかし、おそらくすべてに対応することは不可能だ。支援先を選ぶ基準があいまいで感情的なものだというのはウクライナ支援の際にはっきりした。当然ながら、支援を受けられなかった国は欧米への不満と不信を持ったまま駆逐される(二度と欧米を信用しないかも)。

来年、78カ国で83の選挙が行われる。私が言うところの反主流派(https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2023/12/post-53_3.php)が勝てば権威主義化し、負ければ暴動や抗議運動が起きる。


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