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国際政治学者イアン・ブレマー2024年最大の脅威はアメリカ国内の分断

イアン・ブレマーが率いるユーラシアグループは毎年世界のトップ10を発表している。

「2024 年 10 大リスク」、https://www.eurasiagroup.net/services/japan

「2024 年 10 大リスク」、https://www.eurasiagroup.net/services/japan

今年のトップはアメリカの分極化だった。昨年は8位だったものが、一気にトップに躍り出た。それだけではなく、「リスク No.6 回復しない中国」や「リスク No.10 分断化が進む米国でビジネス展開する企業のリスク」と日本にとってはうれしくないものが並んでいる。

私の関心は主としてトップのアメリカの分極化にある。アメリカ国家情報会議でも取り上げられていたし、深刻な課題になっているのは間違いない。本レポートではトランプ再選を中心に語られており、トランプを中心に語らなければならないという時点でアメリカのダメさがうよくわかる。分極化がきわまってあげくに、トランプが当選しても落選しても国内に大きな混乱を招くことになる。アメリカ大統領選は中露伊にとっては必ず勝てるゲームになってしまった。

いままでさんざん国内対策が重要と言ってきた私からすると、「国内対策を怠ったよい事例」ができたと思う反面、なぜここまで放置してきたのだろう? という気持ちもある。
私がデジタル影響工作の一環として国内対策の重要性を語ると、それはデジタル影響工作の範疇ではないといった意見など範囲外だという見方をされることが多い。では、どこが対策を行っているかというと、そんなことをやっている組織はアメリカや日本のように民主主義を標榜している国にはないのがふつうだ。言論の自由との兼ね合いが非常に難しい。
言葉を換えると社会の大きなリスクになることはわかっていながら、民主主義国においての議論や言論のあり方を考えてこなかったツケが回ってきた。きっと研究者はやっていたと思うが、これは国民的議論や法制化が必要なものだ。そういうレベルでの議論はなかったし、これからもなさそうだ。ということは、この問題は避けることができず、他の民主主義国でも同様のことが起きる。その結果、なし崩しに権威主義化が進む可能性は高い。日本もなんとなく、ずるずるとそうなってゆきそうな2024年新年である。

そういえば英語版と日本語版で内容に違いはないけど、デザインやレイアウトは全然違う。そもそも日本語版は全く図版がない。

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