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メモ 昨今の情勢と、日本における認知戦、情報戦対策の現状

*これはあくまで個人的な思いつきのメモですので、あまりまにうけないでください。推測や憶測も含まれています。間違いあったら直すので教えてください。この記事読んで怒る人いるかなあ? 怒られたら消します。


●予想通り増加した中国からの干渉

昨年、ペロシが訪台した時、中国は軍事演習などレッドラインの押し上げを始めた。その時、いくつかの記事に書いたように台湾周辺国、特に日本で認知戦、情報戦、デジタル影響工作が増加してきた。
中国が台湾を併合する際、日本は無関係ではいられない。軍事侵攻を含む場合は、高い確率で巻き込まれるし、そうでない場合でも緊張した状況になる。日本国内の世論を制御するのは難しいにしても、アメリカや日本政府の意向がそのまま世論に反映されないように対立を煽り分断を広げて混沌とした状況を作っておく方が得策だ。
本題とは少しはずれるが、日本国内のインフラや通信および政府機関などにすでにマルウェアがデプロイされている可能性は高い。日本へのサイバー攻撃や過去の他の国への攻撃を見ればひそかに事前にデプロイされていると考える方が妥当だ。
被害を出す前に発見・駆除されたという報告がないのは公表されていないのか、それとも発見・駆除されていないのかわからない。後者だったらかなり深刻だ。サイバー攻撃も認知戦も相手がなにをしているのかわかっていないことになる。
中国の動きに対して日本政府はどこまで対処しているのだろうか?

●各種資料などから見えてくる各省庁の対応

下表は公開資料を中心にカバーしている範囲(予定含む)を表にしたものである。中にはオフェンシブなもの、違法性のあるものも含まれている。
こういう表あると便利そうと思って作ったので修正すべき点多々ありそう。指摘もらったら直します。
わかりにくそうな項目について簡単に説明しておく。

・根本対策

たとえば犯罪に対して一義的には警察が事後対応するが、中長期的には法整備、経済環境、福祉、教育で抑止することが重要である。情報戦のターゲットはすでに存在している国内問題なので、格差是正やリテラシー向上、時代に合った民主主義および価値感の提唱が必要だ。なお、私はリテラシーはデジタル影響工作に効果がないと考えている立場だが、一般的な説明を紹介するため便宜上このように書いた。

・基盤整備

カウンターナラティブの流布やファクトチェックの効果的な告知などのためには、国民にリーチするための方法=メディアが必要となる。
格差是正のためには具体的な社会保障などの制度が不可欠となる。
戦略コミュニケーション。複数の目的やアプローチが混在して用いられているような気がする。とりあえず、この言葉を使っている省庁に○をした。
マルチステークホルダーアプローチ。関係者を一同に集めて協力して対処しようというアプローチ。関係者のうち、SNSプラットフォーム企業のほとんどが国外にある日本で、このアプローチがどのように有効に働くのか理解できないが、国際的に認められているアプローチなのでこれをあげている省庁に○をつけた。
プロキシサイト。正体を隠してナラティブなどを流布するサイト。攻撃側がよく使う。NPOや民間の研究所などを装うことが多い。防御側のレピュテーション・マネジメント企業もよく使う。

・対症療法

逆SEOは敵対者の発言が検索結果の下位に来るようにする。よくあるのはプロキシやCIBを用いて同じテーマや組織について異なる話を広めるなど。レピュテーション・マネジメント企業は著名な大学のサイトをハッキングしてリンクを貼る等も行う。
クレームによる削除は、敵対的発言がアップされたSNSプラットフォームやウェブサイト、ホスティング会社に著作権違反などのクレームを送りつけてコンテンツを削除させること。レピュテーション・マネジメント企業の手口。たいていはクレーム内容はでっちあげ。Metaは自分のサービスでコンテンツ削除する以外に他のプラットフォームと情報共有しているので、Metaから連絡を受けて対処するケースもあり得るので○にしている。
敵サイト潰し、テイクダウン。なんらかの方法でサイトを運営不能にしたり、アカウントをバンさせる。Metaについては前項と同じ。
敵組織や関係者個人をハッキングして情報を盗み出して、さらしたり、脅したりすることも行われる。
マイクロ・ターゲティング、対抗ナラティブファクトチェック、資金源を断つは説明不要かな。

レピュテーション・マネジメント企業に対策を依頼したことがわかっている場合は、レピュテーション・マネジメント企業が通常行うと想定されるカバー範囲を含めた(背景青の箇所)。そのため内閣官房と外務省のカバー範囲が広く見えている。2つの省の委託先が全てやっているとは限らない。

防衛省と自衛隊については組織の性格上、公開資料からはおおざっぱな計画がわかるだけなので「?」が多くなっている。経産省については経済安保の関連で言及されている程度だったようだ。

参考にMetaがやっている範囲とアメリカ国務省GECがやっている範囲も付してみた。どちらも記憶を頼りに○をつけたのであくまで参考程度です。

●防衛省・自衛隊、内閣官房のカバー範囲は広く、公開情報の範囲では総務省が先行

外務省はアメリカ国務省と協力するなどいろいろやっているようだし、中露を念頭においた予算もたくさん用意しているみたいだけど、なにをやっているのかはよくわからない。AIを使うとかいろいろあるのだけど、具体的な話はよくわからない
気になるのは日本に関する国際世論をコントロールすることと、いわゆる認知戦、情報戦は異なる領域の話になるし、異なる対策が必要となるので、そのへんはどう区別しているのかよくわからない。外務省がレピュテーション・マネジメント企業を日本の国際世論をよくするために利用した場合、そのオペレーションの内容(ハッキングや過激な逆SEO、プロキシ、偽アカウントの利用など)によってはばれた時に大スキャンダルになる。

総務省は先行しているものの、その中心はリテラシーとファクトチェックで、さらに安全保障には立ち入られないことになっているらしい。防衛省と警察庁(国内テロなど)組み合わさるとちょうどよいのだろうけど、そのためには両者が協働で問題の全体像と対策を共有しなければならないけど、難しいというかそういう発想はないだろう。基本方針は独自に決めて、その後必要に応じて情報交換する程度に留まりそうだ。

●もとが国内問題である以上、対症療法だけでは悪化するだけ

根底にはあるのは、気候変動、パンデミック、資源・食糧・水不足、移民問題、格差拡大などとそれによって引き起こされた国内外の社会の不安定化だ。情報戦、認知戦と言えば聞こえがいいが、くすぶっている不満や批判に火をつけているだけだ。発火を加速するSNSプラットフォームがある以上、海外からの干渉がなくても自然発火する。なので海外からの干渉に対して対症療法を施しても効果はきわめて限定的だ。

ことさら認知戦や情報戦の脅威を煽るのは、ほんとうの問題を隠したいためではないかと勘ぐりたくなる。国内の問題になればその責任は政治家にある。ヘタに触って政治責任を問われるよりは海外からの干渉のせいにしておいた方が安全だし、対症療法的な成果はすぐに出るし、目に見える。
幸いなことに、気候変動、パンデミック、資源・食糧・水不足、移民問題、格差拡大などの問題の影響をもろに受ける地域と格差下位の人々はメディアに取り上げられる頻度も少なく、社会的影響力を持った有権者などから共感を得にくい不可視化された存在だった。このへんの共感格差についてはこちら(https://shioshio3.hatenablog.com/entry/2022/09/03/191426)にくわしい分析があり、参考になる。
そこにしわ寄せがいっている間は安泰……だったが、やりすぎた。不可視化された層の不満は募り、自らが社会において決して少数ではないことに気づきだしている。彼らを取り込んだポピュリストが台頭し、アメリカでは白人至上主義グループの脅威が拡大、ウクライナ侵攻では欧米とそれ以外の国々の温度差がはっきりした。来年世界で行われる78カ国で83の選挙で、いまの世界をまざまざと見ることになるだろう。そして、欧米や日本の認知戦、情報戦対策が過去の世界を前提にしたものだということがはっきりしそうな気がする。

出典など

各省庁の動きについては日本語で検索するとだいたい出てくるので割愛。ふつうに検索しても見つからないものと過去のnoteの紹介記事を書いておく。どちらにもあてはまらないものの情報の出所は秘密。

●レピュテーション・マネジメント企業の業務内容がわかる記事
20カ国33の選挙に介入していたイスラエルのTeam Jorgehttps://note.com/ichi_twnovel/n/n466b4650c1ff

メモ レピュテーション・マネジメント企業が増加しているらしい(スペインのEliminaliaなど紹介)https://note.com/ichi_twnovel/n/n3dff5e327217

●日本政府がレピュテーション・マネジメント企業に委託していたという記事
Japan turns to Israel's 9500 Group to counter Chinese Fukushima disinformationhttps://www.intelligenceonline.com/corporate-intelligence/2023/09/12/japan-turns-to-israel-s-9500-group-to-counter-chinese-fukushima-disinformation,110042325-art

'Israel' helping Japan counter Chinese Fukushima claimshttps://english.almayadeen.net/news/politics/israel-helping-japan-counter-chinese-fukushima-claims

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