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Mythos Labsによるロシアのツイッター活動レポート6月21日公開

ロシアが繰り広げるツイッターによる世論操作 Mythos Labsの「Investigating Twitter Disinformation in Ukraine」シリーズ」(https://note.com/ichi_twnovel/n/n710a86012263?magazine_key=m6dd905e52532)新しいレポート(https://mythoslabs.org/wp-content/uploads/2022/06/Part-IV-Analyzing-Pro-Russian-DisinformationPropaganda-Related-to-Ukraine.pdf)が6月21日に公開されていた。
今回は4月1日から6月1日までの2カ月間の親ロプロパガンダツイッター活動の分析となっている。
ロシアが相手国の国内あるいは特定地域をターゲットにしていることが明確にわかる活動が目立った。『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)で分析した通りだった。

●8つのポイント

今回は8つのポイントが報告されていた。

1.3月の調査結果に比べ、使用する言語の数が増加していた。3月は平均5つの言語だったが、5月の段階で8に増加していた。これはより広い範囲でをターゲットにしているのかもしれない。

2.3月に比べてスペイン語のツイートの割合が2倍に増加した。南アメリカの反アメリカ感情を煽っていた。

3.中国のプロパガンダツイートを増幅する親ロツイッターアカウントは680%増加した。中国とロシアが連携を強化したことを示唆している。

4.ドイツ、フランス、イタリア、オランダではヨーロッパ向けのナラティブが拡散されていた。

5.トルコでは「NATOの拡大はトルコの脅威になる」といったトルコ向けナラティブを拡散していた。

6.ヨーロッパ言語以外では日本語が親ロプロパガンダツイートがもっとも多い言語だった。「日本のメディアが親ウクライナに偏っていると批判」、「アメリカの広島・長崎への原爆投下を非難」、「ウクライナ支持は日本でのナチズム台頭を招くという警告」、日本人向けのナラティブが展開されている。

7.突然ツイートを辞めたり、再会したりするアカウントの存在が確認された。操作されている可能性を示唆している。

8.ツイッター社によるアカウント凍結の増加に対応して、自発的にアカウントの活動を停止する動きが増加した。ツイッター社に発見されにくくするための措置と考えられている。

●感想 ウクライナ側(グローバルノース)と、ロシアの影響工作の違い

ウクライナ側はあくまでもグローバルノースによって形成される「国際世論」を中心に展開しており、ロシア側は各国国内あるいは特定のコミュニティを操作しようとしている。この違いについては、拙著『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)でも書いた通りである。図にすると下記になる。

今回のMythos Labsのレポートでは、それが如実に出ていて参考になった。ロシアは各国、あるいはさらに細分化されたターゲットを狙う方法を取っている。
日本もそのターゲットとなっており、まんまと利用されている人や組織も存在する可能性がある。

日本の国際社会での存在感あるいは国際世論への影響力が乏しいことを感じている方もいると思うが、この図式に当てはめるとその理由がよくわかる。
影響力を発揮するためには、上の表の国際世論を動かすか、ロシアのように対象を絞って世論を動かすかのどちらかになる。
しかし国際世論は、グローバルノース特に欧米、それもアメリカのメディアと著名人によって形成されることが多い。欧米ではない日本がそこに食い込むのはきわめて難しい。日本はグローバルノースであっても欧米ではない数少ない国なのだ。同じグループに属していても、欧米とは文化的政治的に距離がある。
現実的にはロシアのアプローチが適している。しかし、日本はアメリカを手本とし、アメリカには自国のやり方が自国のみに当てはまるものとは思っていないので、日本はアメリカの模倣をしてうまくいかない。


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