見出し画像

【日記】5日目 目は口ほどにモノを言う

『小さな料理人、いざドーナツを作らん』
我が家には小さな料理人がいる。
もともと料理が好きそうなことは分かっていた。
でも、好きだからこそ熱中し過ぎて、危険に気付けなくなることが多々あり、そのヒヤッとした経験から、まだキッチンへの立ち入りは許可していなかった。

しかし、少しは大きくなって話が聞けるようになってきたし、時間に余裕もあったし、今日はお菓子作りに誘ってみた。すると、案の定目を輝かせて、「やる!」と食い気味に返答が来た。

宿題を終わらせ、翌日の準備をし、足りないモノの買い物に行った。
帰ると、「やって!」と焦り気味な声が聞こえる。何事かと顔を向けると、自分専用のエプロンとバンダナをこちらに突き出し、まるでトイレに行くのを我慢しているようなソワソワ具合。楽しみなのは分かるが、待て待て。
知ってはいたが、この子は考えていることが表情と行動に出るタイプだった。不意打ちをかまされながらも何とか笑いをこらえる。

器具を準備し、材料を計って、準備は万端だ。
いよいよ材料を混ぜ合わせていく。
まずは子供に任せてみた。口頭での説明でどのくらい理解出来るか見てみたかった。
ん〜これは器具を壊すか、材料をひっくり返しかねない怪力振りだ。
バトンタッチした。私自身、手本と言えるほど上手くはないが、やり方をやって見せてみる。
おぅおぅ、食いついている。めちゃくちゃ見ている。何か緊張してきたんですけど…。
何とか緊張に打ち勝ち、混ぜ合わせることには成功した。しかし、見るだけでは分かるまい。
初心者の女の人にニヤニヤしながらゴルフを教えるおじさんのような体勢になってしまったが、後ろから一緒に器具を持ち、持ち方や力加減、動かし方を教えてみる。
もう一度、一人でやらせてみた。
まだ危なっかしいけど、なかなか様になってきた。好きの力は凄いな。いつも言うことを全く聞かない子が素直過ぎて怖いくらいだ。

次の工程は火や油を使うから、今までなら見学だけだったが、またゴルフのteachingおじさんスタイルで、油に投入するところを数回一緒にやってみた。
以前なら、油は音と熱気が怖くて逃げていたが、今日は逃げる素振りは見えなかった。もしかして、怖くて動けないのか⁉︎と思って覗き込んでみると、
彼の目から『油の近くは危険だと分かっているけど…お鍋の中の生地の様子が気になる!』という心の声が聞こえてきた。
私も心の中で『うん、分かったよ。』と返事をしてみる。
危険は回避しつつ、見える位置を何とかキープして、作業を続けた。
味を変えて、あと2種類作るため、同じ作業をもう2回やった。1回目をやったばかりなので復習がてら一人でやらせてみた。自信なさげなところもあったが、都度確認しながら、なかなか頑張っていた。

そしてついに完成。
完成後に帰宅した妹に、
「机の上を見てごらん、美味しいものがあるよ」とまるで大人のような口振り。しかし、その一言には初めから最後まで自分が関わって作ったんだという達成感や自信が満ち溢れていたのだろう。

仲良くみんなで分け合って食べ、お皿が空になった頃、今日の感想を聞こうかと思ったが、その必要はなかった。
妹の「美味しかったよ、ありがとう」というお礼に対し、彼が満面の笑顔と弾むようなトーンの「どういたしまして」を返していたからだ。
私は「また作ろうね」とだけ、声をかけた。

ココア・チーズ・シナモンの3種類


【今日のお供】
TEEKANNE   ERDBEERE&ORANGE
(オレンジ以外、何て読むかわからないけど笑、酸味のある水出し紅茶)
PPORO CHOCOLATE  ドライアップル(ラグノオ)
音楽なし

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?