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角幸治「玉造温泉の奇跡 観光ブランディング入門」

・本書は、5年間で11回の転職とリストラを経て、拾われるように玉造温泉の老舗旅館に就職→温泉街の再生に会社の活路を求め、松江観光協会玉造温泉支部の職員→姫ラボや願い石・叶い石事業を成功させ、現在は年商3億円を超える事業家として活躍するほか、講演やコンサルティング活動を行う著者が、島根県の田舎にある玉造温泉が全国温泉総選挙2016で初代グランプリになるまでの奇跡と軌跡を描いた1冊。

・2005年、著者が働いていた旅館を含む玉造温泉にある15の旅館のほとんどの売上は、右肩下がりで落ち続けており、街にあった土産店はほぼ廃業し、残ったお店は居酒屋やスナックなど夜のお店ばかりで、人が出歩かず、空き店舗だらけの寂れた雰囲気はゴーストタウンのようであったが、その後、オープンしたお店が絶好調となり、赤字の原因だった商品も人気商品へと変わる、訪れる観光客の数は2013年からは100万人を超え、玉造温泉はまちづくりの成功例として国から紹介されるほどになった。
すると、温泉街再生の裏側やノウハウを求めて日本全国から議員、行政職員、観光協会、商工会、企業、メディアなど年間80組もの方々が、視察や取材に来られるようになった。

・このような奇跡が起きた理由は、街の人々の考えが「ないものねだり」から「あるもの磨き」に変わったから。「あるもの磨き」とは、街がすでに持っている魅力に目を向ける考え方であり、玉造温泉は、街のみんなで「あるもの磨き」をしたからこそ、ゴーストタウンのようだった寂れた街を再生することができたと著者は考えている。

・本書では、著者である角幸治氏がガイド役となり、実際に起きた玉造温泉が温泉総選挙初代グランプリを獲得するまでのヒストリーを物語形式で紹介した内容となっている。第1章の「覚悟を決めた人たち」では、2005年当時、まちづくりに対し、街の人々が本気になっていった経緯について語られ、第2章「まちデコ、倒産の危機」では、著者が大失敗したことがきっかけで、あるもの磨きの考えが変わり、ある人気観光スポットを生み出した裏話が紹介されている。その他にも、「スクラップ&ビルド」では予算がない中で新しい取り組みをはじめた観光協会が紹介され、「姫ラボ誕生」と「姫ラボ躍進」という章では美肌の総合ショップである「姫ラボ」の誕生秘話とその後が書かれている。「稼ぐ観光協会」という章では、観光協会がどのようにして自主財源を稼ぎ出すようひなったのか、営利企業とは異なる手法が紹介され、「遊び心のPR」ではまちづくりにおいても、企業経営においても欠かせないPRのお話が掲載されている。最後の章である「住民一体のまちづくり」では、地域住民も一体となった温泉街の活性化に自主的にボランティアとして関わった現場のストーリーが書かれている。

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