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【二次創作小説】 あの子との距離④ 〜学祭準備(前編)

こちらは「太陽よりも眩しい星」の二次創作小説です。

原作ストーリーを神城目線で書いております。
ネタバレ&妄想たっぷりですのでご注意ください。

過去のお話はこちら。
①研修旅行→
②英フェス→
③牽制→


夏休みが終わった8月下旬。
9月の学祭に向けて、クラスで実行委員を選ぶことになった。

担任のコバセンは何でも岩田に押し付けようとする。
しかも仲いい男子ってことで鮎川まで指名しようとした。
俺は思わず口を出す。

「先生、岩田になんでも頼むのやめなよ」
「岩田部活してるんだし。井沢はいいと思うけど」

最終的にクラス実行委員は井沢と香川に決まった。
岩田の負担を減らせてよかった。
鮎川との距離が縮まるのも避けられたと思う。

全校集会で学祭の説明があった。
学校中が学祭に向けて動き出してる感じ。

実行委員長は従姉の昴ちゃんだった。
外面のよさで盛り上げてる。
人前に立つのは向いてるんだろうな。
ほんとは意地悪だけど。

ロングホームルームのあと、岩田が鮎川にパンをあげようとしてるのに気づいた。

「え?なに?鮎川 腹すいてんの?」
「俺 ゼリー飲料あるけどいる?」

岩田食べるのすきだし、俺のやつあげたほうがいいよね。

「………パンがいいかな」
鮎川は空気を読まずパンを選ぶ。

「こっち?こっち?」
「こっち、もらっていい?」
ふたりでわちゃわちゃやってる。

「鮎川はパン派かー、ゼリーぬるいしな…」
頭をかいていたら岩田と目が合った。

…??
何だかやけに顔が赤いような…。
……まさか、鮎川と話してるから?

そのとき、部活に行こうとした岩田が机にぶつかって、鮎川の机の上に倒れ込むように転ぶ。

机の上にあった鮎川の手が岩田の顔やからだに触れたのを見て、スッと頭の芯が冷えた。
岩田と鮎川の0距離。

「大丈夫?」
「大丈夫、ごめん、ごめんなさい」

岩田は真っ赤になって、そのまま部活へ急ぐ。

鮎川はあんなことがあっても平然としてる。
顔や耳も赤くならない。

俺は地下鉄で思いがけず岩田と接近して、顔を真っ赤にした時のことを思い出していた。

「鮎川、寮なんだって?」
「岩田に聞いた。だからかな、鮎川なんか大人だよね」

鮎川といる時の岩田はよくしゃべる。
いつも鮎川がリードしているように見える。

「寮入って変わったとかないけど」
「あ、そうなんだ。もともとかー」

鮎川が大人で頼れるから?
俺といる時は?

モヤモヤ考えていたら鮎川が訊いてきた。
「神城」
「神城と岩田さんは友達なんだよね」

突然の切り込みに、頭ん中にアラートが鳴り響く。
冷静に。
自分に言い聞かせながら、静かに戦闘モードに入る。

「そうだよ」
鮎川の様子を見ながら、ゆっくり、はっきりと言う。

「わかった、じゃあ、俺が岩田さんをこの前みたく将棋にさそっても別にいいんだよね」

いいわけなくない?
と言いたいところをぐっとこらえる。

「もし俺が誘うなって言ったら誘わないの?」

ぜったいに気合い負けしないつもりで目に力を込める。

「え、誘うけど。関係ないし」

さらっと言われて俺は拍子抜けした。
「なんだよそれ」

あとから考えたら、たぶん鮎川はこう言いたかったんだ。
つきあってるなら遠慮する。
でもそうじゃないなら遠慮しない。

ふと、自分の顔が強張っていることに気づいた。
人狼なら笑顔でさばけたけど、今回はムリだったな。


学祭準備が始まった日の放課後。
優心が実行委員の仕事を放り出してチャリで逃亡した。
小野寺が後夜祭を断ったらしい。

「後夜祭ってなんなの?なんかあんの?」
「グラウンドで音楽かけて花火見るんだって!! それが告白イベントみたくなってるんだって!!」

「はー……へー……」
全然しらなかった。
そういや昴ちゃんもステージでリクエスト曲募集とか言ってたかも。

告白かぁ…。
でももうちょい男として見てもらえるようになってからだよな……。

「井沢を探してきてほしい、私までここを離れるわけにはいかないから」
香川の声に怒りがにじんでる。

「あ、私行ってくるよ」
岩田がいつものように手を挙げる。

すると鮎川が反対した。
「岩田さん行かないほうがいいんじゃない?」
「今度は岩田さんを好きになりそう」

さすが鮎川、優心のことよくわかってる。
確かに。

「俺行くわ。チャリで回って探してくる!」

「もし戻ってきたら連絡するわ」と鮎川。
「河川敷とかにいそう、ムードが好きそう」と香川。

「オッケー!」
俺は急いで河川敷へ向かった。

驚くことに、優心はほんとに河川敷にいた。
香川すげー。

「さ。戻ろうぜ」
「戻りたくねーよ!」

ちょっとめんどくさそうだ。
鮎川に電話して、優心を見つけたこと、少し話してから連れ帰ることを知らせる。

「帰ろうぜ。お前代表なんだからいないと困るだろ」

「お前はいいよな、イケメンだから悩みなんかどーせねーだろ!! フラレてもかっこいいし!?」
「いや…」

何言ってんだコイツ?

「翠ちゃんだって誘ったのがお前ならOKだったんじゃね!?」
「いやお前…」
「所詮顔と金なんだよ 世の中!!」

本気で言ってんのか?

「お前さぁ…」
「俺だっていろいろあんだよ!人をなんも考えてないみたいに言うな!!」

俺はコンプレックスだらけで、
フラれるのが怖いからなかなか告えなくて、
でも誰にもとられたくなくて。
なんとか成長したくて毎日必死でもがいてる。
悩みしかねぇわ!

突然「キャー、虫!!」と声がした。
近くの橋の影に岩田と小野寺がいる。

「え……」
聞かれた?何を?どこまで?
俺やばいこと言ってないよな??

優心は小野寺を見て「まさか俺のこと、心配して探しに来てくれたの?」とポジティブ全開だ。

「え?」と言う小野寺は明らかに迷惑そうだが、わかってない。
単純でうらやましい。

ま、帰ってくれそうだからいいか!
話が落ち着いたところで、少し離れたところに停めたチャリを取りに行く。

すると遠目に優心が岩田に近づくのが見えた。
何やら話しかけている。

いやな予感がして必死でチャリを漕いだら、岩田はいつもの天使みたいな笑顔で優心を慰めてる。

「え?動いたのすごいよ井沢くん」
「勇気出したのえらいと思う」

「岩ちゃん…」と感激した優心が岩田に近づこうとしたので、チャリを乗り捨てて全力で走ってブロックした。

「だからだめだってそういうの!!」

必死でガードした左腕の肘がゴツッと音を立てた。
優心の顔に入ったか?
まあいいや。

「ダメなんだって!! 弱ってるとこ優しくしたら!!」「え…そうなの?」
「そうなの!!」

岩田はにぶいし、ちっとも自分の可愛さをわかってない。
もうやめてくれ。
これ以上ライバルが増えたら俺の胃に穴が開く。


学祭準備がはじまった。
岩田はさっそくクラスの女子たちに荷物をたくさん持たされてた。

重そうなダンボール箱を2個持って、頭や肩にも変なの乗っけられてる。

「ちょ、持つって。男子呼んでよ」
言いながらダンボール箱をもらう。

やっぱり岩田はこういうとき頼られがちなんだよな。

岩田のがんばりを否定したくはないので
「こういう時、力ある人っていいよね!!」
と言ってみた。

でも、もう持たせないけどね。
岩田の荷物はぜんぶ先回りして俺が持つ。

とにかく忙しそうなところへ顔を出そう。
岩田に負担がかからないように。

ふと手が空いた時、岩田がひとりで大きな黒い紙に向かって作業しているのに気づいた。

「俺もやりたい」と声をかける。
岩田から返事はないけど隣に座る。

「スパッタリング?だっけ?美術でやったね中学で」
「へー蓄光塗料星みたくすんの?」
「きれいに光るといいね」

岩田を真似て歯ブラシでスパッタリングしようとしたら、蓄光塗料がビシャッとTシャツにハネた。

「あ」

「大丈夫?すぐ洗えば落ちるよ?」
ほんとに岩田は優しい。
でももう小学生みたいにお世話されるのは困る。

「いーよTシャツ白いから気にしないよ」

ごしごしこすってごまかしてるところへ撮影担当してる小野寺がやってきた。

「神城ー、岩ちゃん!写真撮るからこっち見てー!」

卒業式ぶりのツーショチャンス!
岩田が嫌がらなさそうな距離まで近づいてピースする。

小野寺は次の被写体を見つけてすぐいなくなり、またふたりになった。

「香川代表がんばってるよなー」
岩田とは世間話もたのしい。

と、別の作業に呼ばれてしまった。

「ごめん、全然手伝えんかった」
岩田に謝って次へ向かう。

ふと、香川がひとりでいるのが見えたので声をかける。

「力仕事とかは俺がやるから岩田に言う前に俺に言って」
「岩田、こういう時頼まれがちだから。小学校の時からそうだから」

香川は俺をじっと見て「…わかった」と言ってくれて、そのあときっちりこき使われた。

うう、いそがしい。
でも岩田のためだと思うと充実感がある。


学祭は本格的に準備期間に入った。
俺は毎日バタバタしてる。

クラスでじゃんけん大会があった。
実行委員会で暗幕を借りるために、じゃんけんを勝ち抜く必要があるからだ。

俺は決勝で鮎川と当たった。
この闘い、ぜったいに負けられない。

気合いを入れてチョキを出したけど、あっさり負けた。
「あーーーーーー!つっよ!」

頭よくてじゃんけんまで強いのかよ!!!

しかしイジけてる暇はない。
仕事はどんどんやってくる。

焼却炉にごみを運んでたら、岩田に声をかけられた。

「神城!」
「……手伝う」

脇腹を抑えてなんだか苦しそうにしてる。
めっちゃ疲れてるじゃん。

「いやいいよ手伝わなくて!俺一人で大丈夫だよ!」

「あの…神城、忙しそうで……ずっと………あんまり話せなかったから学祭せっかく同じクラスなったし…!手伝いながら話せるかなって…」

「え?俺、岩田の負担減らそーとしてがんばってんだけど!? 岩田がこーゆーの頼まれがちだし、せっかく同じクラスなったし…」
「もう俺もダンボールとか岩田より持てるし」

岩田は少しはっとしたみたいだ。
手応えをかんじる。
俺の成長に気づいてくれたかもしれない。

…もういいかな。
告ってもいいかな。
少なくとも今回の学祭では岩田を助けられてると思う。

「神城ー!」
どこかで俺を呼ぶ声がする。

どうしてこのタイミングで!
もう少し岩田と話したい。

「神城ー!」「神城、神城」「神ッ城ー!」

「…呼んでる」
「…うん」

俺は勇気を出して言った。

「受付するじゃん学祭、入り口のとこで30分交代で」
「香川に頼んだら一緒にしてくれないかな…」

「頼んでみる!! 一緒にやりたい、私も」


後夜祭BGMのリクエストボックスにさっとリクエスト用紙をすべりこませる。
書いたのは「打上花火」。
俺も岩田も好きな曲。

手を伸ばせば触れたあったかい未来は
ひそかにふたりを見ていた

そんな結末が待ってたらいい。

(続く)



こちら、19話公開直前に9割書き上げていたものです。

19話フィーバーで脳内お祭り騒ぎ(わっしょい!わっしょい!)になっていて、しばらく創作物の客観視もできなくなってたのですが、少しだけ冷静になってきたので公開してみました。

どこもかしこも拙いですが、笑って読んでいただけたら幸いです。

そしてまたしても続きます。
長々とすみません。

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