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最近読んだ漫画(タコピー、チ。、藤本タツキ先生の読み切り)

今日はほぼ仕事せず、休日らしい休日を過ごした。漫画をいっぱい読んだ日だった。『タコピーの原罪』、『チ。―地球の運動について―』、あと藤本タツキ先生の読み切り作品を2つ読んだ。

なんだか、一気に読みすぎた感がある。もっとじっくりと大事に読んでもよかったなあ。

以前、友達が、休日に映画館をはしごするなどして1日に3本も映画を観たそうで、気持ちがぐっちゃぐちゃになったと言っていた。今日のわたしは、それに近いかもしれない。感じることが多すぎて、ぜんぶを受け止めきれずに細部を取りこぼしてしまっている気がする。好きな作品は、また時間を置いてゆっくり読み返そう。

「タコピー」のかんそう

『タコピーの原罪』は、作品を通して漂う重苦しい空気感や救いようのない絶望感に、ずっと前に読んだ『おやすみプンプン(浅野いにお)』を読んだときの気持ちを思い出した。

ストーリーでいうと、自分の家庭環境や、親きょうだいとの関係性、いじめに苦しむ子どもたちを笑顔にしようと、ハッピー星からやってきたタコピーがいろいろする話。ハッピーとかタコピーとか軽やかな単語ととは裏腹にダークな話で、むしろその軽々しさが子どもたちの抱えるものの重さを際立たせてる。こういう漫画を描くのはすごく精神を削られそうで、でもぼんやり生きてるとどこかへ置いたまま忘れてしまうような感情を思い出させてくれるから好きだ。

ハッピーエンドかバッドエンド、どちらがよかったとかは思わないけれど、少なくとも救いやある種のカタルシスがあったのはよかったと個人的に思った。最後の方、しずかちゃんがタコピーを泣いてわんわん泣いているところや、その後、2016年のきみたちへとして描かれていた日常の風景はグッとくるものがあった。タコピーが出してくれるハッピー道具はこの世にないけど、そうやってあれこれ手を出して余計に物事がこじれてしまうことは往々にしてある。結局、本当に必要なのは手の込んだ工夫やおせっかいじゃなくて、もっと本質的なものなんだよな。

あと登場人物がみんな完全に良い人でも完全に悪い人にも思えなくて、その描き方がすごいなと思った。虐待する親が出てくるけど、それでも自分の子どものことはちゃんとわかるんだなってシーンになんとも言えない気持ちになった。誰しも絶対悪じゃないという視点は、現実世界でも大事にしたい。

「チ。」のかんそう

15世紀頃、ヨーロッパの架空の国を舞台に、異端とされる地動説を表明しようともがき、信念を貫き通す人たちを描いた作品。単行本はまだ完結してないので、7巻まで読んだ。

「チ。」は、年月の経過とともに主人公たち、つまりその歴史の担い手たちが変わっていく斬新な構成。信念とも言える「思い」を次の誰かへと託し、受け継いでいく様に心打たれて泣ける。でもその信念も最初から確固たるものとしてあるわけじゃなく、ときに疑ったり迷ったり、悩んだ末に選びとったものだから、一人ひとりの行動や言葉に重みがある。それに加えて、どのキャラクターも丁寧に描かれている。だから感情移入せずにいられない。

自分がいま生きている世界に否定されても、さらに命を懸けてでもやらずにはいられないこと・誰かに託したいと思えることに出会った人間はとても強い。その感覚は少しわかる気もするけれど、気がするだけで、きっといまの自分は全然わかってない。できることなら、その感覚にもっと近づける人生がいい。

作品の大きなテーマは歴史にあるように読めるのだけれど、自分がいま生きている宇宙、惑星、地球が見せてくれる世界の美しさ、そして知への探究心を含む人間の営みの美しさを感じさせてくれるシーンがいくつもあって、いま自分が生きてる世界を愛したくなった。

3巻以降には言葉を文字にして残すこと、それを読むことで今の時代に囚われずに過去にも未来にもいけるんだと思える場面があって、それも好きだった。「文字は、まるで奇跡ですよ。」って名言忘れないようにしたいなぁ。書き手として、も読み手としても。

歴史や知への探求にとどまらず、感動とか愛とか信念とか、心の中に留めておきたいと思う名言や観念がいっぱいあって、読む人や読むときによっていろんなものをくれる作品だと思う。

連載の方はちょうど明日18日に完結を迎えるらしく、単行本で読めるのがいまからたのしみ。それまで「異端」として認めず排除しようとしてきた考えや知見、それを信念として持つ人たちへの視線がどう変わるのかを見届けたい気持ち。

藤本タツキ先生の読み切り「さよなら絵梨」と「ルックバック」

『チェンソーマン』の作者として知られる藤本タツキ先生の作品を初めて読んだ。きっかけは、いつもお世話になってる美容師さんが「佐久間(宣行)さんもすすめてて、面白かったですよ」と勧めてくれたこと。その新作読み切り作品は、少年ジャンプ+で無料で読めるのだという。

それは結局『さよなら絵梨』という漫画だったのだけど、少年ジャンプ+で調べたら同じく読み切りの『ルックバック』が先に出てきたので、間違えて先にこっちから読んだ。でも試し読みがおもしろかったので、電子書籍で購入。その感動冷めやらぬまま『さよなら絵梨』も読んで、圧倒された。

『ルックバック』は漫画を描くふたりの少女の話で、『さよなら絵梨』は母親にもらったスマホで映画を撮る中学生の男の子の話。

どちらの作品にも共通して、藤本先生が漫画にできることを心から信じてらっしゃるように思えて胸を打たれた。漫画が描けるもの、漫画が出来ることの先を見せてもらった気持ち。こんなところまで連れて行ってくれるのかっていう衝撃があった。大好きな漫画家さんになる予感がする。ほかの短編作品とかチェンソーマンも読んでみたい。

『さよなら絵梨』はコマ割りも作品を読み進めるときの時間の流れ方もまるで映画のようで、自分としては初めて漫画の新境地に出会えた感じ。少年ジャンプ+であと20日前後は無料で読めるようなのでぜひ。


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