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神田朋子
2022年8月16日 06:38
仕事帰り、電車を降りて改札を出た瞬間、駅前のロータリーの様子がいつもより色めき立っているのが分かった。街灯の下ではしゃぐ男子学生たち。植込みの横で話し込む浴衣姿の若い男女。父親に叱られながらも、走り回るのをやめない黄色いTシャツの女の子。その手首に吊るされたヒモの先には、透明の小さなビニール袋があった。袋を満たす水の中でキラリと光る朱色の影に、私はやっと、今日が地元の夏祭りだったことに気付く。