パクチーくんとシナモンちゃん ep7

ようやく帰り道。私はもう、精神的にも体力的にも疲れ果てていた。

外はもう暗い。19時ごろになっていた。これから2時間の帰り道。

私は生きと違って後部座席に座っていたこともあり、もう話を回さなくてもいい!省エネモードで行こう!と決断した。
スマホの充電でいうと、もう20%を切ったくらい。早く帰って一人になって充電したい。

行きでは私がシナモンちゃんに話を回したり、パクチーくんの話を主に聞いていたから、私が静かになったとき、この2人は何を話すのだろうとちょっと様子をみていた。
帰り道で疲れているのか、一時無言の時間もあったが、やがて会話が始まった。

まず、日本の女性アイドルの話に。私はあんまり坂道系のアイドルに詳しくないので、2人が話すのを聞いていた。どのグループが好きか、誰が好きか、、、、、

(私の心の声:ふーん、そういう名前のメンバーがいるんだあ。そういう番組があるんだあ。全然知らないなあ。曲は聞いたことあるんだけどなあ。)


………..。
………………..。
……………………..。

えっ。全然、というか一言も話しかけられないんですけど。

後部座席で死んだと思われてる????????

ごめんなさい言葉が乱暴になりました、まあ、寝てると思われてるのかな?

店を出た時は普通に話してたけど?
2人とも私の方を振り返って(もしくはミラーで)見てる様子もないけど、寝たと思われてるのかな?

私はあくまで、2人の間で会話が始まってしかも、少し盛り上がりそうだったので、私が口を挟まない方がいいかな、そうするとどうなるのかな、と思って相槌も大して打たずに聞いていた。(行きにシナモンちゃんがしていたのと同じ態度である)

その結果、これ。わーお。

二人はある程度アイドルについて知っている様子(まあ要するにファン)だが、私は全然詳しくないので、口をはさめずにいた。しかも二人は、坂道系のアイドルグループがMCをしている番組という、どちらかというとコアな話題に及んでいたのである。

私は音楽番組に出ていれば見るけれど、そこまでは知らない。ぬーん。何を話しているのか8割がた分からんぞ。

え、でもさ、3人で来てるんだし、せめて私に「坂道系知ってる?好き?」とか聞いてもよくない?ジャブだけはしてみるっていうかさ。

2人の会話が全速力で走りだして、私は置いてけぼりになった気分である。

あー、はいはい、そういうスタンスね。(諦め)

私も知らないことはあんまり話せないし、2人はコアな話題で盛り上がりたいようだし、きっと私に内容を詳しく、もしくは分かりやすく説明する気もないだろう。

スマホをいじるのも感じが悪いかなと思い(あと私は暗闇でスマホを使うのは目が疲れるので好きではない)、その後、私は外をぼーっと見ていた。

夜道、しかも田舎道なので暗かったが、疲れていてこれ以上イライラしたくもないので、意識をどこかに飛ばそうとしていた。

すると、しばらく経ってから、パクチーくんに私の名前を呼ばれた。

私が返事をすると、「寝てる?」との質問。

「寝てないよ?」とだけ返した。

また何か聞かれるかな?と思ったら、それで会話終了。

この間シナモンちゃんは無言である。

そして二人はまた二人の世界へ。

その後も話題は変わった気がするが、こちらが混ざろうとしない限り、彼らは私には話しかけない。

というか、私も一旦黙ってしまったので、また話し出す踏ん切りがつかなくなってしまった。

ああどつぼ。

シナモンちゃんがもしかして会話を回してくれるかも?なんて淡い期待は打ち砕かれた。

だってこの人たちと会話成立させるの、めちゃくちゃエネルギーを使うんだよ。もうその分の充電は私には残ってないよ。


ここでも二人の常識と、私の常識はかけ離れていることが分かった。

出会って3週間でこちらのことを理解してくれとは思わないが、私の無言は怒りである。たいてい。というか、あきれ果ててものが言えないか、コミュニケーションをとることを諦めている時の態度だ。
私の場合、疲れても愛想よくするのがデフォルトなので。疲れても、全く言葉を発しないという状態にはならない。充電1%で帰ることになっても、相手の気分を害したくないので気を遣う。15%を残して、無言になるということは性格上難しい。

今まで元気にしゃべっていた人が無言になったら、少しは心配するか、気分を害したのかと気にかけたりするが、彼らには表情や態度と言った非言語コミュニケーションは通じない。

ま、自分の機嫌は自分でとるのが大人だっていうし。「察して」と期待するのは私もかまってちゃんみたいで嫌だ。

そう思ってしまうのが私のプライドの高いところなのかもしれない。「ちょっと二人とも、私も話に混ぜてよ~」と軽く言える人だったら良かったのに。そもそもこの人たちと会話したいと、もう思えなくなっていた。

黙ったのはちょっとした実験のつもりだった。今までも、2人が「3人で会話をしよう」としてくれたことがないように感じたから。

結果ブーメランが自分に返ってきたわけである。この人たちは自分のしたい会話しかしない。相手を理解するためのコミュニケーションはしない。


2人の会話をよーく聞いていると、趣味で自分と重なり合う部分があるか探っているだけで、やっぱりどちらも、その実お互い自身(どういう性格や価値観の人なのかという部分)には興味がないのだ。

自分中心(パクチーくん)×自分中心(シナモンちゃん)×他人中心(私)。

私が振り回される構図である。心身ともに疲弊する。少なくとも、この1日だけでも相性最悪であることは証明された。

自分にメリットがなければ動かない人間。他人のため、という動機はない。(その後の関わりでも証明された。)

こういう違いがあるときに、私も自分中心でいこう!とは思うがもともとの気質に引っ張られる。和を大事にしたいのだ。

2人は手をつなぐ、どころか手を伸ばす気もないようだが。(じゃあなんで旅行に行こうと言い出した?と思ってしまう私)

学生時代にもこういう人はいた。でも、合わないだろうと思って距離をとれた。

自分一人で引っ越してきた、地元から離れた町。同年代の知り合いはこの二人だけ。

考えうる限り最悪のスタート。

あとはいつでもネタにしている1エピソードだけ残して、このシリーズは終わりそうである。最後は笑いで締めたいところだ。

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