パクチーくんとシナモンちゃん ep8
さあ、もうすぐ家に着こうという時、3人で会話をしていた。
私もずっとだんまりを決め込まず、話せそうな話題になった時に話に混ざったのである。彼らに話しかけられた覚えはやはり、ない。
すると、行きと似たパターンになってしまった。
パクチーが話題を振る→私とシナモンちゃんがそれぞれ答える→パクチー君の自分語りが始まる、というパターンである。
ふと、シナモンちゃんが眼鏡をかけていたので、視力が悪いのかとパクチーが彼女に聞いた。シナモンちゃんが自分のことを話し終わると、パクチー君が私にも視力はいくつかと聞いてきた。
視力の話って、私からすると、わりとどうでもいいので、シナモンちゃんの話で会話が終わるかと思っていた。
めずらしい。彼が話を回している。
私の視力は、1.0か1.5か、そのあたりだと思うが正直覚えていない。
急激に下がったら心配だが、今のところそんな兆候もないので、健康診断でAと診断されれば、あー良かった下がっていなかった、と思うくらいである。最後に眼科に行ったのも記憶にない。
まあ、細かく言うとこうなるが、この会話で必要なのは、眼鏡もコンタクトもしていないということくらいだろう。私も、視力が悪くて困ったことはないということだけ言いたかった。
そして、「数値は分かんないけど、ずっとAではあるかな」と答えた。
すると運転席にいるパクチーくんと、ミラー越しに目が合った。(私は運転席の後ろ、一番安全な席に座っていた)
急に目が合い戸惑う。彼は目を合わせて会話をするタイプではない。
すると、彼は唐突に、目の横で左手を横向きにしてピースをした。
( ゚Д゚)エッナニ?ナニゴト???
「め組の女」の「めっ!」のポーズである。
細かいようだが、TikTokで流行した可愛めのピースというより、本家のマーチン(鈴木雅之さん)に近いピースだ。でもあんな風にかっこよくはない。
私はそのピースを見て、田舎にいるおじいさんたちを思い出した。人差し指と中指の間があまり開いていない、不器用なピースを見たことがないだろうか。
写真でよくみる、おじいちゃんたちの不器用で可愛いピース。
しかし若者がやるとダサピース。指と指のあいだがそんなに開かないのか?大丈夫?関節炎?
相変わらず何を考えているのか分からない「無」の表情。
そして彼は言った。
「俺2.0」
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\(^o^)/ \(^o^)/ \(^o^)/
( ゚Д゚) ( ゚Д゚) ( ゚Д゚)
(*_*) (*_*) (*_*)
私は固まってしまった。
その0.5秒ほどあとに、キイイイイィィィィと薬缶が沸騰しているような感覚を脳天に覚えた。
思わず叫びそうになった。
「なんで勝手に私が土俵に上がらせられて勝負させられてんの?????
マサイ族と対決してこいよ????????余裕でオマエの負けだから。」
それだけを言うために、後部座席の私とわざわざ目を合わせてダサピース。
何で張り合いたいんだ、オマエハ。勝手にエントリーさすな、ボケ。
私も、もう少し疲れていなかったら、あと、もう少し物事をはっきり言える人間だったら、もしくは彼がもう少し愛想か可愛げのある人間だったら、「え、視力勝負~?負けた~」とか、「え、なんでピースしてんのwwwwww」とか言えたかもしれない。
でも、もう朝9時からこいつらと一緒にいて、もうすぐ半日経とうとしている。
その間も、疲れる会話回し、彼の自分語りと自慢、無表情な彼女との温泉、性差別主義者のおっさんとの出会い、帰りの車では会話から外れ、、、
そのあとだったので、呆れてものも言えなかった。
ドッと疲れが増しただけであった。
はああああああ~~~~~~~~。
ウッザ。
2.0の視力なんて、なんの自慢にもならねえよ。視力6.0とかになってから自慢しろよ。
もちろん、自分が憎からず思っている相手や幼い子供には、私も「すごーい」とか「視力いいんだね~」と言えると思う。興味のないやつの視力なんか、1か月後の天気予報より興味ないし、役にも立たない。
しかもそれで勝手に勝負を挑まれても、、、、
勝ったという顔をされても、、、、、、、、、、
マジで、勝手にしやがれ。
ジュリー(沢田研二)でも大声で歌えばよかった。
まさに、「♪寝たふりしてる間に~~~出て行ってくれ~~~」である。
あああ、あああ、嗚呼、、、
ちなみに、シナモンちゃんはここでも無表情だったので何を思ったかは謎である。
シナモンちゃんは温泉で目がばちこん合った時から、得体の知れない人間観が増し増しであった。
この視力自慢が旅のラストを飾った。
12時間の旅は苦痛に満ちていたが、1年以上たった今振り返っても、これとあんこのくだりが、この旅で記憶に強く残っている。
たった1日でエピソードを9個(番外編も合わせれば10個!)書かせてしまう2人。
ネタがまだまだあるのだが、、、
とりあえず旅行のくだりを書き切れて達成感を少し感じています。
読んでくださった方、本当にありがとうございます。感想もまだまだお待ちしております。
それでは、また。
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