パクチーくんとシナモンちゃん ep4
昼飯はパクチーくんが希望したハンバーガーだった。美味しかった。
そして、世界遺産にもなっている観光地へ行くことにした。
何組かと一緒にグループになり、ガイドさんがついて、解説してくれた。
2人とも知的好奇心は強いらしく、積極的に質問するし、真剣にガイドさんの話を聞いていた。一緒のグループの人たちもそういうタイプらしく、皆ガイドさんの話をほおほお聞くので、ガイドさんはすごく楽しそうだった。
さあ、この時点で14時くらいにはなっていたんじゃないだろうか。
朝9時半から一緒に行動し、私もそろそろ疲れて来ていた。
もう温泉はいいから帰ろうよ、と思い、疲れをにじませつつ、これからどうする?と聞いた。
パクチーくんは、「俺は運転で疲れた。温泉にも行きたいし、お前らも行きたいだろ?」と言った。言葉遣いはこんなにストレートではないけれど。やんわりとした言葉で。無表情で。
シナモンちゃんも賛成し、あとは同じパターンである。
こちとらペーパードライバー、立場は弱い。そう言われたらなんも言えない。運転は疲れるだろうし、わざわざ連れて来てくれたのだからと、温泉にも寄ることになった。(昼食も世界遺産も温泉も彼の行きたい場所だったのだが)
私も疲れていたから温泉に行きたくないわけではなかったし。帰りたいという気持ちの方が強かったが。
そして、ひなびた温泉街についた。大きな温泉施設ではなく、小さな脱衣所と小さな温泉しかないところだった。男女分かれて脱衣所に入り、風呂に入る。
そこには小さな浴槽があり、その両脇にシャワーと椅子が1つずつしかなかった。
私は右側、シナモンちゃんは左側のシャワーを使った。備え付けの石鹸がなくて、私が持ってきたトラベル用のを貸すよ、と言った。
髪と体を洗い終わり、お風呂に入ろうと振り返った時、すでに風呂に入っていたシナモンちゃんと、バチっと目があった。
えっ、もう入ってたの?という驚き。
(彼女は髪を洗わなかったようだ。結局シャンプー類も私から借りなかった。体は水で流したのか?)
それと、ガッツリ目が合ったことの驚き。私は思った。
えっ。いつから入ってた?えっ。シャワー浴びてるとき、後ろ姿見られてた??
げええええ。
まあ、自意識過剰かもしれない。不愉快ではあるが。
「もう入ってたんだ。」と私は言ったが、「うん。」とだけ返された。
裸で目が合ったってのに、気まずそうな表情一つしない。
まあシナモンちゃん、あなたは浴槽にはいってますけどね!
他にも利用者の人がいたので、2人とも口数は少なかった。
熱い風呂が、さっさとあがれ!この気まずい空間を脱出しろ!と言っているかのよう。
いや、私の考えすぎかもしれない。たまたま私がシャワーを浴び終わって振り返った時に、目がばちこん合っただけ。そうだそうだ。
でも。まだ打ち解けてないのに。シャワーを浴びている私が見える側に入るかなあ。背中合わせになって、私が見えないようにとかしないか?
風呂場は狭かったけれど、シャワーの水がお風呂に入ってしまうほどではなかったから、シャワーと背中合わせになっても、水はかからなかっただろう。
この人に「私だったらこうするのに」は当てはまらない。
それを痛感させられた出来事だった。
そういえば女2人だというのに、温泉の話が出た時も、当日も、生理が来てないか聞かれることはなかった。また「私だったら」論になってしまうが、私だったら、温泉の話が出た時に、生理予定日じゃないかどこかで聞くけどなあ。男性から聞きにくくてパクチーくんは言わなかったとしても(もしかしたらそんなことは全く気にしてなかったかも)、シナモンちゃんは気にするそぶりもなかった。そんで、私も気にはなっていたが聞かないまま来たが。
旅行前に温泉の話が出た時点で、「大丈夫?」などと匂わせてみたが案の定伝わっていなさそうで、「うん。」と無表情で言われた。
私の生理なんて知らないし、きてたら勝手に入らないなり言うなりするだろう、ということなんだろう。
他人のことにまで気を回してしまう性分な私には羨ましいほど、自分と他人の課題を線引きできている。
そして、今まで私がそういう性分だということを理解してくれていた、そして感謝すらしてくれる人が周りにいたから、ストレスなくやってこられたんだなと思う。友達に改めて感謝した。
別に彼女がそういうタイプなのは構わないし、気を遣うのはあくまでもサービスのようなもの、私が勝手にやっていることだとは自覚していた。
でもなにより応えたのは、パクチーくんもシナモンちゃんも、「どマイペース」であること。
相性最悪の2人との旅はまだ続く。
次回予告「もう帰りたいよ~!!!でも夕飯も食べて帰ることに。そこで生差別主義者のROUGAIに出会ってしまう。」の巻。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?